「萎縮効果」か。中国が疑うアメリカ側の「本当の」狙い
さて、こうした米中の攻防で思い出されるのは、かつて米政権が繰り出した華為技術(ファーウェイ)に対する攻撃だ。
ファーウェイ製の通信機器に対し「アメリカから不正に情報を抜き取っている」との疑惑が米政界で持ち上がり、最終的には最先端半導体の輸出が止められ、ファーウェイはスマートフォン(スマホ)製造を断念せざるを得なくなった。いわゆる「バック・ドア疑惑」だが、現在に至っても「ある」とされたバック・ドアの証拠は示されないままだ。
窮地に陥ったファーウェイは自ら半導体を開発し再びスマホ製造に漕ぎつけたが、ファーウェイ製スマホはすっかり西側先進国から敬遠されることになった。
こうした苦い記憶が蘇ったのか、『人民日報』系国際情報紙の『環球時報』は、今回のAIをめぐる米中の攻防を「中国のAIモデルを、アメリカはどうやって『寒蝉効果(萎縮)』を狙っているのか」というタイトルを付けて報じ、米政権をけん制した。
記事で言及されたのは、〈中国との人工知能をめぐる競争において、アメリカは『萎縮効果』を生み出すことで、アメリカや世界の企業が中国のオープンソースモデルを『使うことを恐れ、使いたがらず、公に使えない』といった状況を作り出そうとしている〉ということだ。これこそ中国が疑うアメリカ側の「本当の」狙いだ。
背景には今、アメリカの多くの企業が、すでに中国のAIモデルを抵抗なく使い始めていることがある。アメリカの企業がそうした選択をするのは、圧倒的にコストが低いからである。
前述したDeepSeekショックも、今回のKimi K3の衝撃も、コストという利点によって引き起こされた現象だ。
米企業が中国製AIを使う流れがさらに本格化する前に、米企業と政権が手を組んで大々的に警鐘を鳴らしておこうと考えたとしても、不思議ではない。
ただ過去の事例を見る限り、中国の勢いが規制だけで簡単に止まるとは考えにくい。
米政権がもし、徒労と分かっていても対中攻勢をやめないとすれば、米中首脳会談には暗雲が忍び寄り、世界はまた新たな不可測性を抱え込むことになる。そういう無駄なコストこそ、AIで事前に調べて取り除いてほしいものである。
(『富坂聰の「目からうろこの中国解説」』2026年9月13日号より。ご興味をお持ちの方はこの機会に初月無料のお試し購読をご登録下さい)
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