AI活用の新たな形を模索するハーバードとスタンフォード
2)ハーバードの場合「推進と反発」
ハーバードでは大学執行部が、相当な積極姿勢を打ち出しています。例えば、2026年の夏季休暇の間に、授業を「AI適応型」に設計するための新しい教員向け指針を出し、学生が使いたがるツールと自分の授業での可否をシラバスに明記するよう促しました。カレッジ(学部のこと)の教育局は、AI方針を授業の「カンバス・サイト」に掲示することを教員に義務づけています。カレッジは今春、一年次必修の論述科目にAIの単元を加え、関係者にはClaudeを提供としています。
学部(アンダーグラッド)のデミング学部長は新学期初日の学生宛て書簡で、学びを深められる場面ではAI利用を積極的に勧める立場を示しています。そこで学部長は、持ち帰り試験からの転換や、論述中心の授業でAIを受け入れ、さらには奨励するとしています。
また「検出ツール」によるAI利用の摘発は、教員と学生の信頼を損なうので、もう「手を引くべき」だとも述べています。また、教員の研究・教育を支える仕組みとして、「AI研究・教育フェロー」として学生を雇用しています。フェローは、Claude CodeやCodexのようなエージェント型コーディングツールを中心に、教員が生成AIを高度に活用できるよう支援するそうです。
ただし反発も強まっています。学生新聞の年次調査に回答した教員463人の3分の2が、AIは授業に悪影響を与えたと答えたそうです。前年の42%から見ると、急増しています。歴史学者のジル・ルポア教授は、生成AIへの依存が批判的思考を弱めるという研究を引用して、学生研究者の指導こそ教員の仕事だと論じました。推奨される新手法については、現場では賛否両論があるようです。
これはリベラルなイデオロギーからの批判ですが、このような公式の推進論とは別に、各学部ではAI批判の立場が学部方針としてまだ掲げられています。ハーバードという学校は、非常に保守的な側面を持っており、例えば外国語教育において、他のアイビー校が「コミュニカティブ・アプローチ」を採用した後も、「文法+翻訳メソッド」を維持していたことがあります。
AIに関しては、「とにかくAI時代なのだから、人間の最高レベルの脳を維持しなくてはならない」という強い思い込みと使命感を今でも持っているようです。
3)スタンフォードの場合「実例の共有と『より多くを求める』」
スタンフォードは、統一方針よりも実践例の共有を重視しているそうです。例えば、「AIMES」というプロジェクトは、各分野の授業が生成AIをどう活用し、深い学びのためにどんな制約を課しているかを公開する取り組みです。事例集は、AI利用を課す例、限定する例、禁止する例に分類され、大学としてAIに賛成も反対もしない立場を明示しています。例えば、入門プログラミング科目の終盤の課題では、学生が冒険ゲームを一から書き、それをChatGPTにつないで終わりのない物語にするといった課題があります。
経営大学院ではさらに踏み込んでいます。MBA課程などでは、教員が持ち帰り課題でのAI利用を禁じることはできません。教員向け手引きは、AIの特性を活かして調査や試作などの量と質をこれまで以上に求めること、職場で実際に出会う形でAIを使う課題を入れること、毎学期自分の課題を複数のAIツールで試すことを勧めています。
利用したツールや使い方について、対話履歴や説明の提出を学生に求めることも推奨されています。資金面では、60件を超える応募から12件の授業・カリキュラム計画に助成が行われました。副学長は教授会で、学科単位でAI利用を議論するよう呼びかけています。それどころか、学内と卒業生を含めた大学コミュニティの全体に対して「AI利用へのアイディア」を募集し続けていたりします。
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