【食の安全】クレームはお客様からの最高の贈り物だと思う対応

© Anthony Leopold - Fotolia© Anthony Leopold - Fotolia
 

声を上げてくれる方を大切に

『食品工場の工場長の仕事』より

「クレームは仕方ないんだよ。きちんと対応さえしておけばいいんだ」と食品工場でのクレームは必要悪と考えている方も多いと思います。クレーム専用の対応者を営業と称して雇用している工場もあると思います。

しかし、私はクレームは最高のお客様からの贈り物と考えています。

あなたの誕生日に大好きな方から贈り物を贈られたとしたらあなたはなんと言う言葉が口から出てきますか。私は「ありがとう」この言葉しか思いつきません。お客様からのクレームを頂いたときも、お客様からの最高の贈り物を頂いたと思って「ありがとう」と心から思うべきだと思います。

クレーム対応を親身に行う事で「クレームをつけて良かった」とお客様に思って頂きさらなる工場のファンになって頂くことも可能です。お客様と話すことにより新商品のヒントになる場合もあります。

クレーム品に声を出さずに黙って去って行く方がほとんどであることを考えれば、クレームを付けて頂いた方に対して心からお礼を言いたくなると思うのです。

私が製造工場で経験したクレームでも、必ずクレーム品と判る事例が何度もありました。一つ目は包装を開けた時点で異臭がする商品を出荷してしまったクレーム。もう一つは色が通常の出荷している商品と全く異なる商品を出荷してしまった事例です。

どちらの事例も、お客様からクレームを頂き、保管検体、原料などを調査すると、出荷してしまったロットがすべてクレームになりうる商品でした。しかし、3000パック以上出荷していたにも関わらずクレームを頂いたお客様はどちらの場合もたった一人の方でした。

私の経験からは、異常のある商品を購入し、食べられたお客様が電話を掛けてこられたり、クレームを付けていただけるのは、3000人に一人の割合ではないかと思っています。3000人にたった一人の方が会社の事、工場の事、商品の事を考えてわざわざクレームというプレゼントを贈ってくれるのです。

あなたは大切な方から贈られた贈り物を、もらったら直ぐに捨ててしまう事は無いと思います。花を贈られたのなら大切に花瓶に生けて楽しみ、ドライフラワーにして大切に保管するかもしれません。写真に撮って毎年写真を見て楽しむのかもしれません。あなたの頭の中でいつも思い出して大切な思い出にしているのかもしれません。

贈られたプレゼントはあなたの記憶に何時までも残る事になると思うのです。食品工場に贈られたプレゼントも、何時までも何時までも従業員の心の中に残すことが必要なことだと思います。

社員教育に盛り込むこと

2000年に食中毒事故を起こした雪印乳業は、実は1955年にもエンテロトキシンによる食中毒事件を起こしていました。

当時の社長は全社員の前で「信用を獲得するには長い年月を要し、これを失墜するのは一瞬である。そして信用は金銭では買うことは出来ない。」と訓示しました。訓辞の内容は毎年毎年新入社員にも配られたそうです。

しかし、1986年以降の新入社員に訓辞の内容を配布することは無くなったそうです。そして、2000年にまた同じ原因で食中毒事件を起こしてしまったのです。

食品期限の偽装報道は毎日の様に報道されています。期限を過ぎた食品を使用してしまうなどと言った、食品事故の多くは過去に同じような事故を必ず起こしている企業があるのです。

市場回収などを行った場合は、必ず社員教育に盛り込み、同じ過ちを繰り返さないことが大切です。雪印乳業も、教育を毎年毎年繰り返していれば、停電で温められた牛乳が放置されたときに、「エンテロトキシンが発生するかも」と思う従業員の方が必ずいたと思うのです。

自分たちの起こした食品事故を忘れないようにすることも大切ですが、他の企業が起こした食品事故を学ぶことで、私達は常に市場から追放されないように常に「他山の石」から学ぶ必要があるのです。決して、他の企業が起こした事故を「対岸の火事」としてみていてはいけないのです。

information:
『食品工場の工場長の仕事』
≪最新記事を読む≫

KIRIN「まぐまぐニュース!」の最新更新情報を毎日お届け!
まぐまぐ!の2万誌のメルマガ記事から厳選した情報を毎日お届け!!マスメディアには載らない裏情報から、とってもニッチな専門情報まで、まぐまぐ!でしか読めない最新情報が無料で手に入ります!規約に同意してご登録ください!

print
いま読まれてます

  • 【食の安全】クレームはお客様からの最高の贈り物だと思う対応
    この記事が気に入ったら
    いいね!しよう
    MAG2 NEWSの最新情報をお届け