11月13日に日本武道館で行われた自衛隊音楽祭へ赴いたという、軍事アナリストの小川和久さん。自身のメルマガ『NEWSを疑え!』で、米軍や韓国軍などの音楽隊、要人らが臨席したことで非常に政治色の濃い祭典だったと分析しています。さらに、韓国海軍軍楽隊の演出は、韓国の後進性が露呈したとみなされなねない、と強い違和感を感じたようです。
自衛隊音楽祭に込められたメッセージ
金曜日の夜、日本武道館で行われた自衛隊音楽祭りに行ってきました。
今年は、ジョージア(グルジア)のティナティン・ヒダシェリ国防大臣(女性)、キャロライン・ケネディ駐日米国大使、柳興洙駐日韓国大使が臨席し、少し勘ぐった見方をすれば政治的なメッセージ性の強い祭典となりました。
政治的なメッセージ性という点では、例年との違いは次の通りです。
1)米国の4軍の音楽隊がすべて参加したこと。
顔ぶれは、米空軍太平洋音楽隊、在日米陸軍軍楽隊、第3海兵機動展開部隊音楽隊、第7艦隊音楽隊です。
2)韓国からも2007年以来、8年ぶりに海軍軍楽隊が参加したこと。
3)防衛交流についての覚え書きを交わしたばかりのジョージアの国防大臣が臨席したこと。
これらの意味するところは明らかと言ってよいでしょう。
米4軍音楽隊の参加は日米同盟の結束が集団的自衛権の行使容認と平和安全法制の整備によっていちだんと強化されたことをアピールするものと言って構わないと思います。
もともとケネディ氏の駐日大使への指名は、日米同盟が他の同盟国とは比較にならないほど重要だということを世界、特に中国などに示すための「米国の象徴」としての性格を持っていたわけです。
そのケネディ大使が4軍の軍楽隊そろい踏みの中で音楽祭に参加することは、米国が日本をどれくらい重要に思っているかという現れでもあるのです。
さらに、日米に加えて韓国海軍の軍楽隊が参加したこともまた、中国に対する強いメッセージになっていると思います。
9月3日の中国の軍事パレードに朴槿恵大統領が出席するなど、ふらふらしているように見えた韓国ですが、やはり頼らなければならないのは米国であり、米国が最も重視している日本だということは、基本的に理解しています。海軍軍楽隊の派遣によって日米との協力関係を再確認するメッセージを、中国にばかりでなく韓国内の反日感情に対しても発信したという点で、大きな意味を持っていたと思います。
そこでジョージアですが、これはクリミアの併合などロシアとウクライナの間に存在する問題に対して、これ以上の領土拡大は許容しないというメッセージを発し、ロシア側にクギを刺す意味があったと思います。
ジョージアをはじめとするロシアの周りの国々が、日米韓の結束のように協力関係を強めてロシアと向き合い、米国やNATO(北大西洋条約機構)諸国との関係を強化する可能性を示すことは、様々な問題を抱えるプーチン大統領のロシアに抑制的な行動を求めるうえで、明確なメッセージとなるからです。
音楽祭の内容としては、どれをとっても素晴らしいものばかりでしたが、私としてはフィギュアスケートのキムヨナの演技を彷彿させる民間舞踊団の女性ダンサーの華麗な舞いで観客を魅了した韓国海軍軍楽隊に喝采したいと思います。
最後に韓国国旗を会場中央に展張するなど、駐日大使の前で韓国の威信をかけた演技だったということも、韓国国内の反日感情を意識したものだと強く感じましたが、あの国旗の場面はない方がよかった。素晴らしい演技をぶちこわしにしかねなかったばかりか、韓国の後進性を露呈したとみなされるからです。
image by: TK Kurikawa / Shutterstock.com
『NEWSを疑え!』第440号より一部抜粋
著者/小川和久
地方新聞記者、週刊誌記者などを経て、日本初の軍事アナリストとして独立。国家安全保障に関する官邸機能強化会議議員、、内閣官房危機管理研究会主査などを歴任。一流ビジネスマンとして世界を相手に勝とうとすれば、メルマガが扱っている分野は外せない。
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