今のところ、「アベノミクスが失敗した」という批判は当たならない。
そういうことを言って冷静ぶるのは一種の知的ファッションなら、それが悪いとは筆者は言わない。または野党が「反対のための反対」で論陣を張るならいいだろう。「論」にはなっていないが。
本気で言うなら、何を見ているのかと問いたい。GDPの悪さから増税延期する、これは条文にもあることだから、第一義たるデフレ脱却が危うくなる状態なら延期が正しい。4半期GDPが二期連続でマイナスなら景気後退だと旧経企庁は定義づけたから、こんな時に増税したら日本経済を破壊する。それを破壊させないように手を打つのだから「アベノミクス失敗」とは違う。
アベノミクス効果を今の状態で見ると、
○デフレ脱却は道半ばだがその方向に進んではいる
○株高で国富は組閣以来、正確に250兆円増えた
○国民年金の基金も20兆円くらい増えた
○日本国の外貨資産と保有ドルは円安で200兆円くらい増えた、国富が増加したことはよいことだ。ミクロ面で見ても次のようになっている。
○失業率は減少した
○有効求人倍率が22年ぶり(★1)に増えた
○高卒内定者はこの2年で14%上がった
○倒産件数は22年間(★2)で最低になった
○企業収益は過去最高になった
○よって税収も増える
○賃金も大企業から先に上がった
○タイムラグを持って中小企業にも波及する
○旅行収支も2年間で▼3兆円がプラス3兆円になった(これは1970年「万博」いらいの入国人数である)
等々である。
(★1)「22年ぶり」と言うが、22年前と言えば平成バブルの余韻が残るころで、日経平均は2万円台、商業土地は今の3倍、ゴルフ会員権はバブルが残っていて何千万円もし、俗に言った「億カン」(会員権価格が1億円以上のカントリー倶楽部)が沢山あった時代だ。今は全国に1つもない。(★2)も同前だ。
何より重要なことは20年間も日本を蝕んできたデフレを脱却できそうになったことである。これらを「失敗」と決め付けるのは日本共産党のような確固たる信念がなければ単なるファッションであってソラゾラしい。
市場経済は当然、格差を生む。それを政府が再分配するように税金を取る、それでも不平等が嫌だと言うなら万人平等の共産主義しかない。故に前回の選挙で共産党の票が伸びたのは、票田の一部の見識を示していると筆者は見る。それはそれで正しい。一昨年の選挙結果を筆者はそう評した。
『山崎和邦の投機の流儀』第129号(2014年11月23日号)
著者:山崎和邦
野村證券、三井ホームエンジニアリング社長を経て、武蔵野学院大学名誉教授に就任。大学院教授は世を忍ぶ仮の姿。実態は投資歴51年の現職の投資家。著書に「投機学入門ー不滅の相場常勝哲学」(講談社文庫)、「投資詐欺」(同)、「株で4倍儲ける本」(中経出版)等。山崎和邦 週報『投機の流儀』では経済動向を解説。
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