取引先や顧客の新規開拓に使われるダイレクトメール。多くの企業で未だ人気のツールですが、「発信側の自己満足で作るダイレクトメールはまったくの無駄」とするのは、人気コンサルタントの中久保浩平さん。中久保さんは今回、自身の無料メルマガ『ビジネス真実践』で、とある企業の「失敗例」を紹介しています。
費用対マイナス効果のDM
とある製造業のB社では、新規取引先の獲得に力を入れたいということでした。その為に社長は、ネットではなく敢えて郵送でのダイレクトメールを考えていて、送付先リストも数百以上集めていました。さらに、DM内容についても考えがあったようです。
社長 「この新商品の写真をデカデカと載っているチラシをこの透明の封筒に入れて、パッと、目立つようにしようと思ってるんですよ」
と得意気に話していました。
私 「……」
社長 「でね、このロゴデザイン。かっこいいでしょ。ン十万かけてデザイナーに作ってもらったんですよ。このロゴも気に入ってるのでこれも、透明の封筒から見えるようにしようと思ってるんですよ。これでバッチリ新規開拓しますよぉ~!ワッ八ッハッハッ…」
私 「そうですか(汗)。でもね、社長。確かにロゴもデザイン的にはカッコイイでしょうし、透明の封筒にして見やすくする、というのも良いのでしょうがそれはあくまで、社長の満足であって、受取手の満足とは違うと思いますよ。つまり、ダイレクトメールを受け取る側が果たして、それを見て問合せや資料請求、見積もり依頼をしてくれるか?ってことですよ」
社長 「……」(明らかに機嫌が悪くなっていく)
私 「写真やロゴを入れるのは、別に悪くはないですよ。でも相手はB社のことを全く知らない相手。ですから、写真とかロゴもいいですが、なぜあなたの会社にこのダイレクトメールを送ったのか?という説明をきちんと分かるようにしてあげましょうよ。そんな一文もちゃんと入れましょうよ。そして、既存取引先にはこのような会社があって、こんなに喜んでもらっている。さらには、実際に製造しているスタッフはこのように頑張ってます!とかも入れて、商品の製造過程を写真を入れて説明するとか…。とにかく、相手が読んで『この会社面白いなぁ~』とか『この会社と取引してみたいなぁ~』とか『この製品はこんな風にして製造されているのか…』など、どんなことでもいいので、何かをピンッと感じてもらえるようにもっと工夫を考えてみましょうよ」
社長 「だったら、まず何をすれば良いんですかぁ」
私 「まずは、既存取引先に入って、取材して下さい。なぜB社と取引するようになったのか?B社を選んで感じるメリット。あとは、B社と取引したことによってどんな満足を感じているのか?を具体的に聞いてみましょう。あっ、それと取材する理由も『ダイレクトメールで使わせてもらう』ということをちゃんと説明して下さいね。取材協力のお礼も何か簡単なものを用意しておくと良いでしょうね。例えば、新製品のサンプルとか…」
社長 「えっ、そこまでしないとダメですか?」
私 「サンプルなどは予算の問題もあるでしょうからいいですが、できる限りのことはした方がいいですよ」
社長 「分かりました。」
それから2週間後…。
私 「社長、取材の方はどうですか?」
社長 「あっ、あれね、ちょっとバタバタしててね…」
案の定、B社では、透明封筒に商品写真とカッコイイロゴが目立つチラシにあいさつ文と説明書きを添えただけのダイレクトメールを郵送していたのでした。
結果は…案の定、新規顧客獲得数ゼロ。お金を無駄にしてしまう典型的なパターンとなりました。
郵送でのDM、eメール、チラシに広告など、媒体は決して自己満足に陥らないように注意しましょう。でないと、費用対マイナス効果です。
■今日のまとめ
「自己満足なDMは費用対マイナス効果で無駄」
- 顧客へ送るDMが自己満足なものにならないようにするためにはどのような内容・構成にしなければならないか?考えノートに書く
- 上記で書き出したことを基にしてDMを作成する
- DM以外の媒体についても上記の点を踏まえ見直してみる
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