全人代(全国人民代表大会)の最終日となる28日、中国は香港への国家安全法を可決した。これに対し、香港では激しい抵抗運動が発生。多くの逮捕者が出る事態となっている。強硬な姿勢を示す中国に、アメリカが制裁措置を発動する構えを見せるなど対立。米中の関係悪化が叫ばれる中、その間で苦悩しているのが韓国だ。
アメリカ側にも中国側にも転べない韓国
中央日報によると、この国家安全法とは、香港に情報機関を設置して反政府活動を監視し、外国勢力の内政干渉を禁止することが骨子。これに違反すると最大で懲役30年に処すとの条項も含んでいる。しかし、この法律は一国二制度を根本から揺るがしかねないとして、香港の民主派が大反発しているのだ。
これに異を唱えているのがアメリカで、トランプ大統領は不快感をあらわにし、今週中にも何らかの措置を明らかにする考えを示し、中国をけん制している。
聯合ニュースによると、アメリカ国務省が先ごろ、韓国を含む主な同盟国や友好国の駐米外交団を対象に、中国による香港への国家安全法導入の動きに対する立場を説明したといい、事実上アメリカへの支持要請をしたものと思われる。
これに困っているのが韓国。中国も自国の立場を韓国に説明しているとみられ、米中の板挟みにあっている状態だ。
韓国政府は同法を巡る米中の動きに対し、公の場で反応を示しておらず、「香港はわれわれと密接な人的・経済的交流関係を持ったところ」という原則的な立場だけを明らかにしている。
しかし、テレビインタビューの中で駐韓の中国大使からは、「韓国は伝統的に核心事案に対して立場を尊重してきた友好国。香港問題に対しても韓国が理解と支持を送ると信じている」など、遠回しながら圧迫的な発言をされたと中央日報は伝えている。
過去には、中国の反対を押し切り、THAAD(終末高高度防衛ミサイル)の韓国配備を認めたことで、中国から激しい報復を受けた韓国。今回も慎重にならざるをえず、まさに綱渡り状態にある。
同盟国であるアメリカか、経済的な結びつきが強い中国か。どちら側にも転べない韓国は板挟みにならざるを得ず、対応に苦慮している。