全国大学生活協同組合連合会が毎年実施している「学生生活実態調査」の2019年度版によれば、読書時間が1日0分と答えた大学生は48.1%となっており、5割を超えた2017年調査ほどではないものの「読書離れ」の傾向は続いています。「読書法」「速読法」の研究をする大学院生がそうした現状に不安を感じ、メルマガ『永江一石の「何でも質問&何でも回答」メルマガ』著者で人気コンサルの永江一石さんにマーケティング法を相談。永江さんのアドバイスは、読書0分の多数ではなく、読書をする少数の検索能力が高い人たちをターゲットにすることでした。
読書法・速読法の効果的なマーケティング方法
Question
私は大学院(博士課程)で読書教育(読書法)と速読スキル開発の研究をしつつ、読書法講座・速読法講座を開講しています(大学の授業としても採用されています。今は休講中ですが)。今はまだ需要があり、特にビジネス上の心配などはないのですが、最近の日本の状況を見ると、将来にやや不安がよぎります。
まず、日本人はちゃんと本を読まない。というか読解力が非常に低く、骨のある本を読める人が少ないという事実。Twitterのような短い文章、論理もエビデンスもない文章に慣れきってしまい、感覚でしか本を読めない人が多いのも事実。
そして、最近はスマホの影響もあり、動画・音声の方に需要がシフトしつつある事実。今後ますます「書籍離れ」が進むのではないか?読書教育研究という世界に身を置く者として、そら寒い未来が浮かび上がります。
このような状況で、どの層に対して、どのようなコンセプトでマーケティング活動をすることが研究とビジネスの未来を創ってくれるのか…何かよいアイディアがあればご教授ください。
永江さんからの回答
Twitterの短文ですら理解できない人が多い今、おっしゃる通り読解力のある人はどんどん減っていると思いますが、逆に言うとターゲットを絞りやすくなったと思います。具体的には知的レベルが高い高学歴層か、学歴に関係なく向上心の高い層には読書法・速読法の需要は確実にあります。
「動画・音声の方に需要がシフトしつつある」というのはこれらが典型的なプッシュ型で楽だからでしょう。以前ブログに詳しく書きましたが、You Tubeやテレビをただぼーっと観ていたりラジオで流れてきたものを聴くだけの情報リソースをプッシュ型、新聞や本、ネットサーフで自ら取りに行く情報をプル型と定義しました。
● どうしてここ20年で情報格差(知的格差)が広がったのかを永江理論で解説します – More Access! More Fun
上記ブログに書いたとおり、ただでさえ大学生の半数は1日の読書時間がゼロというデータもあり、読書の習慣がある人とそうでない人の差はますます広がっています。特にコロナ禍の休校中、家でゲームや漫画ばかり読んでいた子と自主的に勉強していた子の差は圧倒的に広がっていますし、今後さらに拡大するでしょう。
大学も早慶上智レベルとFランでは全く違うのですが、前者に向けて読書法や速読法のマーケットは確実にあると思います。現にわたしのメルマガにも定期的に速読法についての質問が来ますし、その層の人たちは昔と違ってソーシャルやネットで必死に情報を探してるので、これこそネットを活用すべきです。
検索もまともに出来ない人が読書法や速読法に興味を持つわけがないので、ネットを活用して情報をどんどん発信すればリテラシーの高い何十万人かのニーズは必ずあると思います。
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