今月11日に行われた楽天グループの決算説明会で、「第4のキャリア」として参入した携帯電話事業が大きく足を引っ張っていることが明らかになりました。その原因を分析するのは、ケータイ/スマートフォンジャーナリストの石川温さん。石川さんは今回のメルマガ『石川温の「スマホ業界新聞」』で、赤字体質から脱却できない大きな要因としてKDDIとの「1GB500円」のローミング契約を挙げるとともに、今後の楽天モバイルの課題について考察しています。
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楽天、ネット通販と金融は堅調も携帯電話事業が足を引っ張る――KDDIとの「1GB500円」ローミング契約がドツボ
8月11日、楽天グループの決算説明会が開催された。メディアやアナリストの関心は携帯電話事業が中心であった。
金融やネット通販が堅調に成長する中、やはり携帯電話事業が全体の足を引っ張っている。基地局整備などの初期投資が重くのしかかっているのだ。説明会では、三木谷浩史CEOが何度も「ローミング費用が高すぎる」とボヤいていたのが印象的であった。新規契約者を獲得しても、高すぎるローミング費用により、赤字体質から脱却できないでいるのだ。
KDDIへのローミング費用は1GBあたり500円と言われている。
楽天モバイルの料金プランは1GBまでゼロ円で、1~3GBは1,078円、3GB~20GBは2,178円、20GB以上で3,278円という設定だ。
仮にユーザーが楽天モバイルの自前ネットワークではなく、KDDIローミングエリアで5GBを使った場合、ユーザーは楽天モバイルに2,178円しか支払わないが、楽天モバイルはKDDIに約2,500円、支払う計算となる。
そもそも楽天モバイルとしては、1GB500円という条件を飲んだのが失敗だった。さらに、当初は、ローミングは2GBまでという設定であったが、本格サービス開始時には5GBまで引き上げた。これが結果として、赤字体質を生んでしまった。さらに、本来であれば月額2,980円だけの使い放題プランであれば、それでもなんとか500円が残ったが、階段制を導入したことで、利益が出ない設計になってしまった。
1GB500円を設定した当時は、ここまで料金競争が進むとは思ってもみなかったが、1GB500円を見直す条項を盛り込んでおけば、ここまで厳しい状態には追い込まれなかったのではないか。
今回の決算説明会でもうひとつ注目しておきたいのが実際の契約者数が判明したと言うことだ。これまで楽天モバイルは「累計契約申込数」を全面的にアピールしてきた。今回も6月までで累計契約申込数が442万という数字を訴求していたのだが、「楽天カードの顧客獲得スピードより4倍、楽天モバイルの方が早い」というスライドの中で、うっかりなのか、実際の契約者数を開示してしまっていた。今年3月現在で289万という数字だったのだが、同じ3月時点での累計契約申込数は351万なので、60万近い差が出ていることになる。
楽天モバイルではこの誤差を手続きなどで遅れているとしているが、やはり、それなりに契約したものの解約したというユーザーが多いのだろう。決算説明会でも、当初は電話番号の新規発行申し込みが多かったが、最近ではMNPによりメイン回線を移行してきたユーザーが増え、解約率の改善が見られるとしている。
楽天モバイルとしては早期に全国ネットワークを完成させつつ、MNPで移行してきたユーザーの満足度を上げ、解約されないようにいかに囲い込んでいくかが課題となってきそうだ。
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