なぜ中国は対プーチン露の経済制裁に同調しないのか?理由は「友好国」に非ず

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ウクライナへの侵略を続けるロシアに、西側諸国が科している厳しい経済制裁。この動きに対して否定的な立場を取る中国ですが、習近平国家主席が主張したその根拠はまさに正鵠を射るものでした。今回のメルマガ『富坂聰の「目からうろこの中国解説」』では、著者で多くの中国関連書籍を執筆している拓殖大学教授の富坂聰さんが、習主席がEUとの首脳会談で語った制裁に反対する理由を紹介。さらにその席でEUサイドに対して発した、「決して的外れとは言えない」習主席の呼びかけの内容を記しています。

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対ロ制裁が効かないと考える中国の視点の現実性

西側メディアの偏りは相変わらずだ。

4月1日、欧州連合(EU)のミシェル大統領とフォンデアライエン欧州委員長がオンライン形式で習近平国家主席と会談した。報道によれば会談の目的はEUの中国への警告だったという。確かに会談後に会見したフォンデアライエン委員長は「ロシアへの協力が中国の信用失墜を招き経済的な打撃につながる」と語っている。

だが、この見立ても中国側の報道とは大きく異なる。例えば、中国が公表した習主席の発言だ。

文章を読む限り、ウクライナ問題で中国がEUから警告を受けいう印象は受けない。それどころか、アメリカやEUが主導する対ロ制裁が世界経済に及ぼす悪影響についてきっちり注文を付けていることが分る。

まず制裁について、「全世界をこの問題に縛り付けることはできず、各国の一般の人々にその重い代価を負わせることもあってはならない」と拒絶。続けて「世界経済を政治化、ツール化、武器化することで、世界の金融や貿易、エネルギー、科学技術、食糧、産業チェーン、サプライチェーンなどの分野に深刻な危機を引き起こすようなことがあってはならない。こうした局面が国際経済協力の数十年の努力の成果をあっという間に破壊してしまう可能性があることを、多くの人々が憂慮している」と逆に批判しているのだ。

少なくとも西側メディアで描く、制裁するべきか否か逡巡する国の態度ではない。

ただ中国の本意は怒りではない。むしろ懸念だ。現在の経済構造を中国は「世界各国が長期にわたり努力して形成された枠組み」と認識し、もし「既存の世界経済システムに打撃を与えるようなことがあって(中略)局面が悪化し続けると、その後の回復には数年から十数年さらには数十年もかかる可能性がある」と警告しているのだ。

さらに中国は、ウクライナ紛争の原因についてもEUに苦言を呈している。

習主席がEU首脳との会談で言及したウクライナ問題は4つのパートから成る。1では「平和交渉の促進」を。2では「大規模な人道主義の危機の防止」に触れ、続く3で「紛争解決の提言」を示し、4で「制裁に対する反発」を述べている。

ちなみに3の紛争解決の提言では、中国がこの問題を「欧州で長期にわたり蓄積されてきた地域の安全における矛盾」だととらえ、その根本的な対策として「関係各方面の合理的な安全保障上の懸念に配慮すること」だとしている。

西側メディアや欧米・日本の世論とは明らかに異なる認識だ。これは先のアメリカ・バイデン大統領との会談でも披露された中国の考え方で、一貫している。

当然、問題解決のためには制裁より「欧州とロシア、米国、NATOが対話を展開すること」が重要だと考えている。

つまり中国は、事態の鎮静化を優先すべきだという立場だ。ロシアと対決姿勢で向き合っても火に油を注ぐだけというのが中国の考え方で、ゆえに制裁には同調できないということだ。

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