年末が近づいてきましたので、今年の読書を振り返ってみたいと思います。
でも、どうやって?
■読書の足跡
今年は、三つのツールで読書の履歴を残しました。
一つは、MDノート(A5)に読書日記の形で書き留めてあります。重点的にゆっくり読みたい本の日ごとの記録と、読了ごとの簡単なメモ。
もう一つは、Cosenseに月ごとにページを作ってあります。たとえば11月分は以下のページです。
◇2024年11月の読了履歴 | 倉下忠憲の発想工房
https://scrapbox.io/rashitamemo/2024%E5%B9%B411%E6%9C%88%E3%81%AE%E8%AA%AD%E4%BA%86%E5%B1%A5%E6%AD%B4
最後の一つは、Textboxの「ライブラリー」です。
https://i.gyazo.com/6c8652042e3565d35de5a6a71ce441e0.jpg
仕組みを説明するとそれだけで一コンテンツになるので割愛しますが、自分が買った本のデータがJSONにまとめられていて、そこにタグや読了日などの情報が入っており、それによってソート順を変えられるようになっています。
実はもう一つ、読了した本はだいたいツイートとしており、その読了ツイートだけをピックアップしたページがあるのですが、それはKnowledge Walkersのサポーター向けページなのでここではURLは明示しません。こんな感じのページです。
https://i.gyazo.com/7b824bf487ffbfdee0c3983aac5878a8.png
こんな感じでいくつかのルートがあるわけですが、網羅範囲に違いがあります。特にMDノートとツイートは、すべての書籍について言及しているわけではないので「完全な振り返り」には向きません(逆にエッセンスだけの振り返りには向いています)。
今回はできるだけ網羅的に振り返りたいので、CosenseかTextboxになるわけですが、Cosenseでは月ごとに分断されているおかげで一年を通した振り返りがやりにくく、Textboxではすべてが一連になっているので一年の切れ目がわかりにくいという問題があります。
一長一短ですね。
Textboxは自作ツールなので、年ごとの切れ目を入れるように書き換えればいいわけですが、師走真っ盛りなのでそういう「脱線」は避けて、今回はCosenseのページを振り返っていきましょう。
■2024年1月
◇2024年1月読書ログ | 倉下忠憲の発想工房
https://scrapbox.io/rashitamemo/2024%E5%B9%B41%E6%9C%88%E8%AA%AD%E6%9B%B8%E3%83%AD%E3%82%B0
まず今年の目標が設定されていました。
・ 「研究的に読む」を進める
・ 「進んで、戻る」型読書
ちなみに2月の時点でこの目標はすっかり忘れ去られていたわけですが、案外近いことはできたのかなと思います。前者は環読プロジェクトが、後者は手書きの読書日記がサポートしているように感じます。来年も似た感じを続けていきたいところ。
ちなみに、この時点では「引っ越し」というビッグイベントを予期していなかったので、本棚の再構築というより大きな「戻る」が実践されるとは思いも寄らぬ事柄でした。
で、1月に読んだ本でピックアップするとしたら、次の四冊。
・『余生の文学』
・『社会学の新地平──ウェーバーからルーマンへ (岩波新書 新赤版 1994)』
・『1分間マネジャー─何を示し、どう褒め、どう叱るか!』
・『言語の力 「思考・価値観・感情」なぜ新しい言語を持つと世界が変わるのか?』
『余生の文学』で吉田健一は「余生」というややネガティブに使われる言葉に新たな意味を吹き込んでいます。若い頃は時間と体力はあっても「自分に何ができて、何ができないのか」がわからないから空回りしてしまう。でも、ある程度年を取ってくるとその辺の案配がわかってきて、肩の力も抜けてくる。そういう状態で行為に望むことができるのが「余生」なのだ、と。
その視点は、ごりゅごさんが「大人の趣味理論」として考えられていることと通じるものがあると感じます。現代は若い人の「成功法」と、老人の「隠居生活」に関する情報はいっぱいありますが、中年の「趣味的な生きかた」に関する情報は案外薄いのです。
しかし中年こそ足下がぐらつきはじめる年代でもあるわけで、何かしら地に足のついた考え方が必要でしょう。
『社会学の新地平』では、マックス・ウェーバーの意義が検討されて、そこからルーマンへの接続が試みられていました。で、よくよく考えたらルーマンのカード法についてはずいぶん詳しくなったのですが、彼の学術的な貢献についてはほとんど無知なのです。せっかくなので、どこかでルーマンが何をどう語っていたのかも学んでみたいと考えています。
『1分間マネジャー』は、ビジネスノウハウ書としてはかなり古い作品です。理論書ではなく、学びを必要としている人間がメンターにお伺いを立てるという現代でもよく使われている──そして一定の人気を博している──構造で書かれています。
『言語の力』は、言語を学ぶことで認識が変わることを前提として、他言語を習得することの価値を論じています。私はここに二つの要素を見ました。「言語」と「学ぶこと」です。そして、その二つは同じ平面に載せられるのではないかと考えています。
何かを学ぶこととは、対象領域の「言語」を習得することとイコールなのではないか、と。
ウィトゲンシュタインははるか昔にその構図を「言語ゲーム」として言い表しているわけですが(まさしく天才です)、その視点をより実用的な、もっと言えばノウハウ的な側面で考えていきたいです。
■2024年2月
◇2024年2月読書ログ | 倉下忠憲の発想工房
https://scrapbox.io/rashitamemo/2024%E5%B9%B42%E6%9C%88%E8%AA%AD%E6%9B%B8%E3%83%AD%E3%82%B0
2月に読んだ本をピックアップするならば、――(この記事は約35分で読めます ※13,643文字)
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