グーグル日本法人元社長が「“竹の香り”のするLEXUS」から感じた、モノづくり大国ニッポンの衰退と迷走

Krasnoyarsk,,Russia,-,June,19,,2022:,Lexus,Brand,Logo,On
 

日本が世界に誇る自動車メーカー、トヨタ。そのトヨタが展開する高級車ブランドLEXUSも世界中で多くのユーザーに愛されていますが、メルマガ『グーグル日本法人元社長 辻野晃一郎のアタマの中』の著者である辻野さんは、LEXUSに関する記事を読んで「日本の衰退を象徴する」と感じたそうです。その記事には、“竹の香り”のするLEXUSの話が綴られていたそうなのですが、辻野さんはなぜこの記事から「日本の衰退」を感じたのでしょうか?
※本記事のタイトルはMAG2NEWS編集部によるものです/原題:日本の衰退を象徴すると感じた記事について

日本の衰退を象徴すると感じた記事について

今日は、賛否両論、非難轟々、トヨタ社やトヨタファンからのお叱りなどを覚悟の上で、日本の衰退を象徴すると感じた記事を見かけたので、その話です。くだんの記事は以下ですので、まずはご一読ください。

関連記事: LEXUSの五感のオーケストラ、あるいは竹の香りのする電気自動車について

竹の香りがするというLEXUSの話です。 2023年のジャパン・モビリティ・ショーのレポート で、このコンセプトカーについて批判したことがありますが、その後も商品化に向けて動いていたようで、来年から市場に投入する予定だそうです。

失礼ながら、このような浮世離れしたプロジェクトにうつつを抜かしている余裕が果たして今のトヨタにあるのでしょうか。「移動する茶室」だそうですが、なんだか完全に道を踏み外しているのではないかと感じました。

いよいよ巨人トヨタもやるべきことをやり尽くして、ついに何もすることが無くなったので、道楽として贅を尽くした趣味人の世界を車にも展開する、ということならまだわかりますが、どうひいき目にみても、今のトヨタが置かれている状況は決して安泰ではありません。それどころか、米テスラは言うに及ばず、BYDを始めとした中国勢にも足元を脅かされ続けています。

なんだか、主戦場での大勝負から逃げ出して、ニッチな世界でひたすら自己満足に浸っているような印象を受けます。ついでに、さらに気持ちが悪いのは、このようなアプローチを礼賛するこうした提灯記事です。この記事はペイドではないようですが、一般記事の体を装うのは止めて、はっきりと「レクサスの広告宣伝記事」「トヨタの広報記事」と位置付けるべきだと思います。

かつてソニーでも、出井伸之氏がトップの時代に、出井氏発案の下、「 クオリア(QUALIA) 」というブランド名でニッチな贅沢家電をいくつも商品化しようとする試みがありました。巨額の赤字決算が続き、市場にソニーショックと呼ばれる事態を引き起こした頃の話です。欧州の高級家電ブランド「Bang & Olufsen」を意識していたのだと思いますが、大失敗プロジェクトに終わりました。

竹のコンセプトのレクサスには、それと似たような匂いを感じてしまいます。主戦場での勝負を避け、侘び寂びの世界を自動車に持ち込んだところで、それこそまるで重火器に「竹槍」で勝負を挑むようなものではないでしょうか。(本記事は『グーグル日本法人元社長 辻野晃一郎のアタマの中 』2025年12月19日号の一部抜粋です。このほか、「今週のメインコラム 日中問題について中国が国際社会に働きかけている<物語>とは」「今週のオススメ!」「読者の質問に答えます!」など、レギュラーコーナーも充実。この機会にぜひご登録をご検討ください)

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辻野 晃一郎(つじの・こういちろう):福岡県生まれ新潟県育ち。84年に慶応義塾大学大学院工学研究科を修了しソニーに入社。88年にカリフォルニア工科大学大学院電気工学科を修了。VAIO、デジタルTV、ホームビデオ、パーソナルオーディオ等の事業責任者やカンパニープレジデントを歴任した後、2006年3月にソニーを退社。翌年、グーグルに入社し、グーグル日本法人代表取締役社長を務める。2010年4月にグーグルを退社しアレックス株式会社を創業。現在、同社代表取締役社長。また、2022年6月よりSMBC日興証券社外取締役。

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【著者】 辻野晃一郎 【月額】 ¥880/月(税込) 【発行周期】 毎週 金曜日 発行

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