政府は人手不足を理由に外国人労働者の受け入れを拡大し、その数は257万人を超えました。しかし、文化や言語の異なる人々が移り住むとき、そこには思わぬ軋轢が生まれます。今回のメルマガ『池田清彦のやせ我慢日記』では、生物学者でCX系「ホンマでっか!?TV」でもおなじみの池田教授さんが、身近な田舎移住の話から川口市のクルド人問題までを語り、外国人労働者問題の本質に迫ります。
外国人労働者問題について
少子高齢化と人手不足を理由に、政府は外国人労働者の受け入れを拡大しており、外国人労働者数は2025年末現在で257万人を超えたようだ。さらに2028年度末までに、最大123万人の受け入れを提示しているという。人手不足は潜在労働力が足りないというよりむしろ、日本人が安い賃金では働かなくなったことの方がより大きな原因なので、賃金を引き上げれば、かなり解消されると思うが、労働者を低賃金でこき使って、目先の利益を追求したい経済界の意を受けた政府は、安い外国人労働者の受け入れ拡大という姑息な手段に走っている。
過去のEUやイギリスを見ればわかるように、外国人の単純労働者の受け入れは、将来に禍根を残す元凶になりかねないので、やめた方が無難だと思うが、短期利益の追求のためには、背に腹は代えられないのかしら。もっとも、ここまで国力が衰退して円が安くなった日本は、外国人労働者にとっても、もはや魅力的ではなくなっているので、外国人労働者がそれほど来るとは思えないけれどね。
まずは身近な田舎移住の話から
ところで、文化や言語が異なる人が移住してくることはよくあることだが、その結末は一意には決まらない。最近流行りの、都会の人が定年になって田舎に移住するといった、単純な話でも、結構な軋轢が生じることもあり、まずはその辺りの話から始めたい。
都会に長いこと住んでいる人が、自然が豊かな田舎に憧れて移住をしたけれども、数年経ってやっぱり田舎は住み難いと言って都会に戻ってくるという話はよく聞く。一方で、田舎の人と仲良くなって、楽しくやっている人も結構いる。これは移住する人のキャラ(個性や性格)の問題が大きいと思う。また、田舎は生活のためのインフラが都会ほど整備されていないので、そこを考えないで移住した人は戸惑うかもしれない。
田舎の古民家を買って移住したところ、近所の人が自宅で採れた野菜などを持ってきてくれて、田舎の人はなんて親切なんだろうと思ったという話をする人は多い。しかしその後、月に一回の大掃除に出てくださいとか、秋祭りの準備に参加してくださいとか、寄り合いに出てください、といった話が次々に来て、もう勘弁してくれと思ったという人も多い。
例外はあると思うが、田舎は一般に人間関係が濃密で、プライバシーを大切にするという感性が都会の人から見ると希薄で、隣人の勤め先も知らない都会人からすると、ちょっと鬱陶しい感は否めない。だから、隣近所との人間関係が都会人風になっている人は、田舎に移住するとストレスが溜まって、数年で引き揚げることになりかねない。一方、都会に長く住んでいても、人間関係が田舎風の方が楽しいという人は、田舎に移住しても大丈夫だろう。田舎に移住する前に、自分(と家族)のキャラをよく考えてから行動に移した方がいいと思う。田舎に移住したら周りの人とすぐ打ち解けて、お祭りがとても楽しかったという人も知人の中にはいるが、都会に長く住んでいた人のマジョリティは、田舎の濃密な人間関係は鬱陶しいと思うのが普通だ。
これは大げさに言えば文化の違いで、変えるのは容易でない。自然に恵まれた田舎に住むのは好ましいが、田舎のウエットな人間関係は煩わしいという人は、都会から来た人がまとまって住んでいる住宅街の戸建てや、別荘に移り住むことも多いようだ。それで、昔から住んでいる人と軋轢を起こさなければ問題はないが、生活習慣があまりにも違うと、トラブルの元になりかねない。
多くの都会人が田舎に住んで戸惑うのは、生活のためのインフラが都会に比べ劣っていることだ。スーパーも病院も役場も徒歩圏にないことも多く、そうなると車がないと生活できない。老人になって眼が悪くなったり、認知症になったりして、運転免許の更新ができないと、生活するのが不可能になってしまう。だからそういうリスクを考えると高齢者になってから田舎に移住するのはお勧めできない。お金があれば、気候のいい時だけ別荘暮らしをするという選択肢もあるが、それは移住とは言えないな。
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