お駄賃の渡し方を間違えると、子供から「人助けの喜び」を奪う

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お子さんにお手伝いを頼もうとした際、「いくらくれる?」なんて言われた経験、ありませんか? そんな時、お駄賃を渡していいものなのでしょうか。無料メルマガ『子どもが育つ「父親術」』では、学者が行った実験や保育園で実際に起きたある事例を挙げ、お駄賃を渡すべき時と渡すべきではない時の「線引き」について解説しています。これで無駄に頭を悩ます必要もなくなりますね。

お駄賃の是非

お手伝いをして、お駄賃をもらう。自分自身が子どもの頃に経験したこともある方が多いと思います。そして現在は、自分が親になって子どもに同じようにしている場面も、出てきているかもしれませんね。

「お駄賃」は、子どもにお手伝いを促すうえで、効果的な方法の1つです。「働いてお金を稼ぐ」ということを学ぶうえでの最初のステップとしても、重要な体験です。就学前は必要ないと思いますが、子どもの成長・発達に応じて、徐々に取り入れていきたいものです。

ですが、その一方で、懸念もあります。お手伝いを頼んだ時に、子どもの方から「お駄賃くれる?」「100円くれるなら、やるー」などの反応が返ってくるようになる場合があるのです。こういった現象については、学者が実験して論文も発表しているんですよ。

何らかの作業・労働について、「手伝ってほしいのですが、お願いできますか?」と頼むのと、「100円お出しするので、やってもらえますか?」と頼むのでは、前者の方が了承してくれる人が多い──という結果が出たりします。

理屈で考えて、前者が「人助けができる」という喜びがあるから手伝うとしたら、後者は、同様に「人助けができる」喜びに加えて、100円ももらえるのだから、了承する人が多くなるはずです。

ですが、実際にはそうなりません。多くの人は「100円しかもらえないなら、やらない」と考えるのです。つまり「人助け」の気持ちがあるところに、「報酬」を持ち込んでしまうと、「人助け」の気持ちを失わせて、単純に金額の多寡で考えるようにさせてしまう、ということ。

もうひとつ、別の研究をご紹介します。ある保育園で、お迎えの遅刻が多くて困っていました。そこで、園は罰金制度を導入します。

「お迎えの時間に10分以上遅れた場合、罰金を取ります」

すると、遅刻者は増え続け、以前の2~3倍の水準になってしまったのです。以前は「約束の時間を守らなきゃ」「遅れたら、先生に悪い」などの気持ちで、保護者はお迎えに来ていたのが、「罰金を払えば、遅れてもいい」さらには、「この金額で、延長保育してもらえるなら」といった感覚に保護者の意識を変えてしまったため、遅刻は逆に増加してしまいました。

この実験には続きがあります。遅刻の増加を受けて、罰金制度を廃止して、元に戻しました。そうしたら、遅刻は…、まったく、減りませんでした。相変わらず、昔の2~3倍の水準のままだったとのこと。

つまり、一度「人助け」などの気持ちを失わせてしまうと、簡単には元には戻せない、ということなのです。

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