台湾人少女に謝罪を強要。中国が致命的な墓穴を掘った台湾総統選

 

これに対して、中国の人民日報系である環球時報は、「これは台湾独立に反対する大陸のネット民の勝利だ」と評しました。

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しかし、これに対して台湾では「なぜ台湾人が自らの国旗を振ってはいけないのか」という怒りの声が上がり、黄安はもとより、中国に対する嫌悪感が高まりました。要するに、台湾人の「台湾意識に火をつけてしまったのです。

この台湾世論の反発には、昨年11月に習近平主席と会談を行い、「1つの中国」を確認した馬英九も、「彼女は謝る必要はない」と言わざるをえませんでした。

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しかし、その甲斐も虚しく、国民党は大敗を喫しました。この事件は台湾国民にとって、中国接近路線だった馬英九政権への拒否感を高める、最後のダメ押しとなりました。

この事件が台湾で頻繁に報じられたことで、蔡英文や民進党の支持率を1~2%程度押し上げたとも言われています。実際、国民党幹部は選挙後、騒動が敗因のひとつとなったと言っています。

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中国、習近平政権にとっては、ここまでの国民党の大敗は、悪夢のような事態でしょう。しかし、これも自業自得です。

環球時報が「中国のネットユーザーの勝利」と述べていた勢いはどこへやら、慌てた中国共産党中央台湾弁公室は16日、「一部の政治勢力が国民感情を挑発している。台湾大陸委員会と解決案を議論中」と責任を他に転嫁

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また、同日には人民日報も「ツゥイの謝罪は所属事務所が大陸市場のためにやむを得ずした妥協」と、韓国の芸能事務所に責任を押し付け、さらに中国文化省の関係者は18日、「中央政府レベルで特定国、特定所属事務所の芸能人の中国内の活動を一括的に防ぐことができる規定はない」と語り、公演活動に圧力をかけたことはないと弁明火消しに追われました

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しかし、中国側は「台独」とのレッテルを貼られた人物を起用するような危険は犯したくないという理由で、彼女とその周囲のタレントを排除しようとしたことは事実でしょう。

中国のネットユーザーを煽り、そのような世論を形成しようとしたことは間違いないでしょう。直接しむけたわけでなくとも、日頃から台湾独立派を「分裂分子」として敵視し、中国人民を啓蒙してきたのですから、黄安が告発したツゥイに対して人民が憤激するのは当然の成り行きです。先の環球時報の勝ち誇ったような「勝利宣言」が、その証拠です。しかし、それが結果的に逆効果になってしまったのだから皮肉なことです。

今後、中国が台湾に圧力をかけるようなことがあれば、この「周子瑜事件」と「民進党大勝」という歴史的シンボルが引き合いに出され、つねに台湾人の「台湾意識」が喚起されるということが繰り返されるでしょう。

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