死ぬ権利の決定権は「自分」にある。オランダの安楽死事情

shutterstock_293035895
 

2014年、末期の脳腫瘍を患う米国人女性が「安楽死」したというニュースが世界を駆け巡り、多くの人々に衝撃を与えました。自らの生死を自らが決める安楽死、合法化となっているオランダではどのように受け取られ、そして行われているのでしょうか。無料メルマガ『出たっきり邦人【欧州編】』で当地の情報を発信し続けるあめでおさんがレポートしてくださいました。

ミナミも、ええよ。オランダ安楽死事情

オランダと聞いて思い浮かべるのは?とたずねたら、定番の答えは、風車、チューリップ、木靴、チーズ、ミッフィーといったところでしょうか。また、日本では違法なものが合法な国としても知られています。例えば、売春、マリファナ、そして安楽死。

今日はその中から、安楽死にまつわるお話です。

本誌でも2年ほど前に、オランダで起こった自殺ほう助事件をご紹介し、昨夏にはその二審判決の結果もお伝えしましたが、この事例を通じて見えてくるのは、安楽死の合法化と実施普及には大きな隔たりがあるということです。

どれほど本人の強い要望があろうと、まず認定基準や実施規定をクリアしなくては安楽死の実施は認められず、仮に条件を満たしていたとしても、家庭医が自ら手を下すことを敬遠して「協力が得られない場合もあります。つまり合法化されていても、そうそう簡単に安楽死ができるわけではないのです。

では、具体的にどれだけの数のオランダ人が安楽死でこの世を去るのでしょうか? オランダ中央統計局のウェブサイトには、最新で2010年のデータしか見当たりませんでしたが、3,800人余りで、この年の全死亡者数の2.8%相当でした。

安楽死法案が制定された2001年は2.5%、2005年は1.7%ですので、この10年間に関して見ると、特に増加傾向にあるとは言えないようです。変な比較ではありますが、2010年に自殺した日本人は少なくとも3万1,690人で、全死亡者数119万7,012人の2.65%に相当します(ちなみに日本の人口はオランダの約7.5倍)。

なお、上記データの「安楽死」とは「患者の死期を早めることを明確な目的とした薬剤の処方や提供、投与」のうち、自殺ほう助、ならびに本人の明確な要望なく実施された事例を除いたものです。また、以下の場合も含まれません。

・患者の死期が早まる可能性を認識した上での、治療の見送り/中止
・患者の死期が早まる可能性を認識した上での、疼痛緩和や対症療法の強化
・患者の死期を早めることが目的のひとつである、疼痛緩和や対症療法の強化
・患者の死期を早めることを明確な目的とした、治療の見送り/中止

しかしオランダの安楽死問題は、実施件数の多寡ではなく、より人間らしく尊厳を持って人生を終えたいと望む人たちが、必ずしもその願いをかなえられないところにあります。

print
いま読まれてます

  • 死ぬ権利の決定権は「自分」にある。オランダの安楽死事情
    この記事が気に入ったら
    いいね!しよう
    MAG2 NEWSの最新情報をお届け