死ぬ権利の決定権は「自分」にある。オランダの安楽死事情

 

認められないのであれば自分たちでなんとかするしかない、ということで、自殺ほう助という選択肢を余儀なくされる人たちがいつの時代も存在しますが、オランダでは安楽死法が制定される30年近く前の1973年に、自殺ほう助支援団体が設立され、その活動は現在も続いています。自殺ほう助支持者は「最も重要なのは、自分の最期について、医師でも他の誰でもなく、自分が決定権を持つこと」だと言います。

また、オランダのヒューマニスト協会(人道主義者、自由思想家、無神論者、不可知論者、リベラル派といった人たちで構成される団体)も、医師の医学的専門知識が重要になるのは、自殺ほう助を実施するときだけであり、人生の幕引きそのものは医学的な問題ではないと主張します。

しかし、安楽死を実施する大前提として、本人が明確に希望していることはもちろん、本人が絶望的かつ耐えがたい身体的苦痛に苛まれていることを、独立した立場の医師2名が認定しなくてはいけません。つまり現行の法制下では、本人が自ら選ぶ死でありながら、真の主役を演じるのは医師であり医療なのです。

日本ほどではないにせよ高齢化の進むオランダで、認知症は、重要な死因として注目されるようになっています。2015年に認知症(の影響や合併症)で死亡したのは、肺がんや心臓発作での死亡よりも数千人多い1万2,500人で、1996年から3倍に増えています。増加原因の半分が人口の高齢化によるため(いずれも中央統計局調べ)、今後もしばらくは増加することが予想されます。

そしてこれまで、認知症に安楽死は認定できないという考えが一般的でした。2012年にオランダ医師会が作成した手引書に「患者本人が安楽死の希望を表明できなくてはいけない」と書かれており、これが医師たちの 「足かせ」になっていたからです。

そこで、保健省と法務省が安楽死に関する手引書を改定しました。「重度の認知症患者は、自分で意思表明ができなくても安楽死の対象になるべきである。ただし本人の意識が鮮明であるうちに、安楽死要望書を作成しておかなくてはいけない」という文言が盛り込まれ、安楽死要望書の作成の仕方についても書かれています。

print
いま読まれてます

  • 死ぬ権利の決定権は「自分」にある。オランダの安楽死事情
    この記事が気に入ったら
    いいね!しよう
    MAG2 NEWSの最新情報をお届け