米国よ、本気か? 現実味を帯びてきたトランプ次期大統領

 

そして現在、トランプ旋風と呼ばれていることの本質は、大統領選をリアリティショー化させることに成功したテレビの復権です。

改めて言うまでもなく、米国はテレビ産業がインターネットに駆逐されてきました。しかし、失われた中間層同様、インスタにウキウキしない人たちが実は社会のほとんどで、その人たちに大統領選を現代テレビ的メソッド=リアリティショー化することで、「リアル」を演出しています。これは、まさに「サバイバー」のプロデューサー、マーク・バネットの手法そのもので、結果、インターネットにとって代わられた(情報時代についていけない)人に、強くアプローチして人気を博しているのです。

全米で空前の人気だと言われた「アプレンティス」をほとんど他国の人たちが知らないように、テレビ産業は、米国でもグローバル化できない典型的なドメスティックな産業です。それゆえ、強いアメリカを復権させることは、グローバル化の否定であり、同時にモンロー主義の肯定で、ドメスティックなテレビ産業的アプローチであるリアリティショーと相性が良いのです。

多くの政治のプロフェッショナルが見誤っていたのは、残念ながら現代社会において投票率と視聴率はほぼ同じ意味になってしまっていることで、ここまで「テレビ的」である人物が、国民の評価を得られるとは思わなかった点にあります。同じ異端者と呼ばれるサンダースが「インターネット的」だとするなら、トランプは「テレビ的」であり、現在、米国で起きていることは、インターネットとテレビの覇権争いにも置き換えられます。

どちらにしろ、インターネットによって「リアル」を多くの人が知ることになり、それによって生まれたテレビの「リアリティショー」によって、偽善者があぶり出されるようになりました。一見良い人や素晴らしい人では、社会は変わらないことが誰にもわかり(サバイバル番組で生き残れない)、毀誉褒貶ある人しか世界を変えることは無理だと多くの人々が知っているのです。

米国を制するのは、インターネットなのか? それともテレビの復権なのか? その回答まで、あと数ヶ月となります。

 

 

高城未来研究所「Future Report」』より一部抜粋

著者/高城剛(作家/クリエイティブ・ディレクター)
1964年生まれ。現在、コミュニケーション戦略と次世代テクノロジーを専門に、創造産業全般にわたって活躍。毎週2通に渡るメルマガは、注目ガジェットや海外移住のヒント、マクロビの始め方や読者の質問に懇切丁寧に答えるQ&Aコーナーなど「今知りたいこと」を網羅する。
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