TPPが食を崩壊させる? 食品添加物に見る米国の暗部

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人気メルマガ『週刊 Life is beautiful』の著者・中島聡さんが、「海外企業の脱添加物の流れ」というニュースを取り上げています。消費者としては喜ばしい限りではありますが、中島さんが指摘する「日本が警戒すべきこと」を読むと…、ちょっとゾッとします。

海外企業の脱添加物の流れと日本がいちばん警戒すべきこと

脱添加物! 海外企業はここまでやっている

抗酸化剤などの食品添加物や、家畜に与える抗生物質などが複合的に人間に与える影響を懸念し、「脱添加物」や「有機食材の使用」に踏み切る米国の企業が増えており、この面では日本は遅れていると警告する記事です。

確かに良い指摘だとは思いますが、誰もがほぼ同じものを食べている日本と、所得によって行くレストランから買い物をするスーパーまでが大きく異なる米国とを直接比べることは難しいので注意が必要です。

このことは、以前にも「米国の暗部」として指摘したことがありますが、農業や畜産業で使われる農薬、抗生物質、ホルモン剤などが人間に与える影響は不明な部分も多く、警告を発する学者も大勢います。しかし、薬品メーカーの政治力が強いため、FDA(米国食品医薬品庁)としても「統計的に優位な数字」が出ない限りは使用禁止に出来ず、表示義務だけ課して後は消費者に任せる、という方針です。

その結果、その手の警告に敏感な教育水準の高い人、割高な自然食品スーパーで買い物をする余裕のある高所得者だけはその手のものを避けるという少し歪んだ状態が保たれているのが米国の事情です。

日本が今、一番警戒すべきなのは、TPP に含まれる ISD で、これが調印されると、モンサントのようなグローバル企業が「遺伝子組み換え食材の差別は不当」という訴訟を国際法廷で起こすことが出来るようになります。その場合、日本政府が「遺伝子組み換え食材が危険であること」を証明することが出来なければ、遺伝子組み換え食材の輸入の禁止措置も廃止しなければならなくなるし、禁止措置によってモンサントが被った被害までも保証しなければならなくなります(モンサントに関しては、遺伝子組み換え作物に待った! GMO最大手モンサント社の誤謬を暴くドキュメンタリー映画『モンサントの不自然な食べ物』を参照してください)。

米国内にもTPPに反対する人の懸念としては、職が海外に奪われるという懸念が一番ですが、ISD 条約がグローバル企業に米国政府や州を訴える権利を与えて、その結果、米国国内ですら、添加物の使用制限や表示義務などの法律を維持することが難しくなる可能性がある、という懸念もあるのです。

『週刊 Life is beautiful』2015年5月19日号より一部抜粋

著者/中島聡(ブロガー/起業家/ソフトウェア・エンジニア)

マイクロソフト本社勤務後、ソフトウェアベンチャーUIEvolution Inc.を米国シアトルで起業。IT業界から日本の原発問題まで、感情論を排した冷静な筆致で綴られるメルマガは必読。
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