奇跡の7分間。新幹線の清掃員が世界中から賞賛される理由

2016-04-27 19.34.18
 

東京駅から出る新幹線に深々と頭を下げる人たち。彼らは新幹線の車内を1両あたりに1人、わずか7分で完璧に整える「新幹線清掃員」です。自らを「お客様の旅を盛り上げるキャスト」だと言い切る彼らの姿から見える日本人の職業観とは? 無料メルマガ『Japan on the Globe-国際派日本人養成講座』に詳しく描かれています。

新幹線清掃員のプライド

2014年サッカーワールドカップブラジル大会で、日本チームは初戦コートジボワール戦で惜しくも逆転負けを喫したが、試合後、日本のサポーターが世界を驚かせた

応援するチームが負けると、サポーターが怒りをあらわにしてイスを蹴ったり、物を投げたりする事が少なくない中で、日本サポーターたちは自ら持参したビニール袋を広げて、ゴミ拾いを始めたのだった。

アメリカのあるテレビ放送局が自社サイトで、2枚の写真と共に「その作業は徹底されていて、負けたチームのサポーターなのにもかかわらず非常に上品な行動だ」と報じた。この写真がネット上に数多くアップされ、コメント欄に英語やスペイン語などで次のような書き込みがあった。

「彼らの文化と教育。ブラボー!」
「日本は最高だ!」
「彼らはとても礼儀正しい。私たちは彼らから多くのことを学ぶことができる」

掃除を通じて姿勢を正し心を整えるのは日本の文化と教育の神髄の1つである。弊誌でも、トイレ掃除で問題校の建て直しや暴動族の更正を果たしたり、礼儀作法や掃除を取り入れて、学力日本一となった福井県の教育事例を紹介した。

新幹線1両を1人、7分間で清掃

掃除で注目を集めている企業がある。JR東日本の子会社で、新幹線の掃除を担当している鉄道整備会社通称テッセイである。

東京駅などで新幹線に乗ると、一列に並んでお辞儀をする女性たちの姿を見かける。列車がホームに入る3分前に、1チーム22人が5~6人ほどのグループに分かれて、ホーム際に整列する。列車が入ってくると、深々とお辞儀をして出迎える。降りてくるお客様には、1人1人「お疲れさまでした」と声を掛ける。

お客の降車が終わると、7分間の清掃に入る座席数約100ある1両の清掃を1人で担当する。約25mの車両を突っ切り、座席の下や物入れにあるゴミを集める。次にボタンを押して、座席の向きを進行方向に変えると、今度は100のテーブルすべてを拭き、窓のブラインドを上げたり、窓枠を拭く。座席カバーが汚れていれば交換する。

トイレ掃除の担当者もいる。どんなにトイレが汚れていても7分以内に完璧に作業を終える。チームのリーダーは、仕事が遅れていたり、不慣れな新人がいる場合には、ただちに応援し、最後の確認作業を行う。

7分間で清掃を終えると、チームは再び整列し、ホームで待っているお客様に「お待たせしました」と声を掛け、再度一礼して、次の持ち場へ移動していく。

始発の朝6時から最終の23時まで、早組と遅組の2交代制でこの作業を行い、1チームが1シフトで、多いときには約20本の車両清掃を行う。JR東日本で運行する新幹線は1日約110本、車両数にして1,300両。これを正社員、パート含めて約820人平均年齢52歳の従業員で清掃する。

30人くらいの海外のお客様全員から拍手

日本人の乗客でも、そのきびきびした動作に感心してしまうが、外国のお客さんにとっては、その動きは信じられないほどのようだ。こんなレポートがある。

21番線で社内清掃作業中、ホームから熱心に作業を見ている海外からのお客様がいらっしゃいました。作業終了後、整列、退場の一礼をすると、ホームで待っていた30人くらいの海外のお客様全員から大きな拍手と歓声をいただきました。

 

見えているから、がんばるわけではありませんが、見えているから、もっともっとがんばらなくてはとも思います。

平成20(2008)年度に国際鉄道連合(UIC)の会合が日本で開かれた際、その分科会がテッセイを視察に訪れた。同年、ドイツ国営テレビが取材にやってきた。さらには米国のラフォード運輸長官も視察に訪れた。

視察だけではなく、米国のスタンフォード大学、フランスのエセックス大学の学生たちが、研修にやってきて、制服を着て、掃除の実習をしている。日本の「礼」の文化に触れ驚いていたそうだ。

海外からの注目を集めると、日本のメディアもテッセイを取り上げ始めた。テレビ朝日やTBS、『週刊ダイヤモンド』『週刊東洋経済』『日経ビジネス』など多くのビジネス誌でも紹介された。

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