【買収劇の裏側】結局、シャープは何を得て、何を失ったのか?

shima20160428
 

台湾の鴻海精密工業に買収されることが決まったシャープ。しかし決定後に鴻海側は出資金の減額など、次々とシャープ側に不利な条件を提示し関係者たちを困惑させました。無料メルマガ『ジャーナリスト嶌信彦「時代を読む」』では今回の買収劇を振り返り、海外資本の下で再建する難しさについて論じています。

手玉にとられた? シャープ

3月末、シャープが台湾の鴻海精密工業に正式に買収されるとわかったとき、救済にかかわってきた日本側関係者は肩を落とした。シャープが鴻海に手玉をとられるようにして買いたたかれる結果となったからだ。「鴻海は全く信用できない」と怨嗟の声があがったものだ。

シャープ再建を巡っては、国が9割超を出資しトヨタ自動車など民間26社が設立した投資ファンド「産業革新機構台湾の鴻海精密工業との間で激しい綱引きがあった。日本の産業界としては東芝の白物家電事業と統合するなど、民族資本の下で再建したい思惑があった。これに対し、鴻海は当初シャープには得するようにみえる再建案を呈示し気を引いたのである。この両者の綱引きにシャープ経営陣は揺れに揺れ、結局鴻海案に乗ったのだ。

しかし鴻海側は、革新機構が手を引くと当初の提案から次々と条件を変更し、シャープ取締役会でもかなり異論が出たという。経営者がぶれない「哲学」をもち、腹を決めて対処しないと後味の悪い買収劇になってしまう典型にもみえた。

革新機構側の提案ははっきりしていた。目的は弱体化した日本電機産業をシャープや東芝の白物家電などと統合再編し再生することだった。その代わりシャープ現経営陣は退任し、得意の液晶事業や他の事業も事業毎に他社との提携を考える。一方、資金面では3,000億円規模の出資と2,000億円の融資枠を設定するというものだった。

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