【京都】白砂と石の小宇宙。観る側の心を映す「枯山水」を観に行こう

shutterstock_391984936
 

静寂の中にある控えめな美しさ。枯山水庭園は、まるで古き良き「日本人の心」をあらわしているようですね。歳とともに興味をそそられるようになってきたという方も多いのではないでしょうか。無料メルマガ『おもしろい京都案内』では、知れば知るほど奥深い「枯山水庭園」の魅力をじっくりと紹介しています。

枯山水庭園の魅力

今回は京都の禅寺で多く見られる枯山水庭園がテーマです。前半では枯山水庭園がどのような経緯で造営されるようになったかをご紹介します。その後、枯山水庭園を構成する代表的なものを一つずつ見ていきたいと思います。石組や燈籠(とうろう)などは枯山水庭園以外の庭にも見られるものなので、日本庭園の鑑賞全般にも役立つ内容となっています。

そもそも庭とは本来どのようなものだったのでしょうか? その昔、日本の庭は朝廷が儀式を行う神聖な場所だったと言われています。平安時代には寝殿造りと呼ばれる貴族邸宅に浄土式庭園が造営されるようになりました。浄土式庭園は極楽浄土あの世の世界をこの世に再現した庭園です。代表的なものは十円玉にも描かれている世界文化遺産・宇治平等院鳳凰堂です。

鎌倉時代になると禅などの仏教的な思想と結びつき枯山水庭園が多くの禅寺で造営されました。枯山水庭園は水を使わず石や砂で風景を表現する日本独自の庭園形式です。今日京都などで多く見られる枯山水庭園の様式は、室町時代の禅宗寺院の庭を中心に発展を遂げてきました。

かつて禅宗寺院の方丈の南側は儀式をとり行うための場所でした。その場所に清浄を意味する白砂を敷き詰めた「無塵の庭」を造りました。横広の台形型の盛砂を見たことがある方もいらっしゃるのではないでしょうか?

時代と共に儀式の場が室内になったことで、南側の庭は儀式に用いられなくなりました。冥想や座禅の場にふさわしい造景として枯山水が造られるようになったのはそのような時代の流れからでした。

枯山水は、歩き回れるような「回遊式庭園」や草庵茶室に隣接して設けられる「露地」などの庭園とは違います。そこには散策などの実用的要素はありません。方丈などの室内から静かに眺めて鑑賞するように構成されています(龍安寺などでよく縁側から石庭を眺めている観光客が多いですが、本来は部屋の中から鑑賞するものなのです)。

禅は深山幽谷の大自然の中で座禅を組み悟りに至り、自らを変革するという仏教の宗派です。なので、花を生けるといった遊興的な要素は不要なのです。

白砂の上に大小の自然石を立て組み合わせることで、観念的世界を創造します。山の峰や、渓谷、大河やせせらぎ、静まりかえった海やそこに浮かぶ島々などを表現しています。またそれらの景色は仏教の世界観や宇宙観であったりします。自らの存在を自然と一体化させることで無の境地に立とうとするために造営されているのです。何も見えないものの中に何かを発見するといったところに枯山水の本質があります。

このように枯山水庭園は、高い精神性と抽象性によって表現されています。そのため見る人の心境によってその様々な感じ方や解釈が生まれるところに魅力があります。

print
いま読まれてます

  • 【京都】白砂と石の小宇宙。観る側の心を映す「枯山水」を観に行こう
    この記事が気に入ったら
    いいね!しよう
    MAG2 NEWSの最新情報をお届け