【年利5000%の金貸し】イギリスの46%の人は借金でクリスマスプレゼントを買う

英ポンド© mkos83 - Fotolia.com
 

すっかり寒くなり、気がついたらクリスマスが近くなっていました。クリスマスといえば楽しい休暇ではありますが、同時に頭の痛くなるイベントでもあります。

イギリスを含め、西欧州や北米ではクリスマスというのは日本の盆正月と同じ行事であり、親戚家族が集まって大喧嘩になったり、嫁や婿と姑舅、気の合わない親戚同士がいがみ合う日なのです。日本にはお年玉がありますが、ここではプレゼントという行事が待っています。気の合わない親戚や家族にも何かをやらないといけないという風になっているため、この時期は金策に困る人が少なくないのです。

インディペンデント紙によりますと、今年イギリスではクリスマス前に大人一人平均で£530(約10万円)を使い、46%がクレジットカードのローンや、overdraft(オーバードラフト)などの「借金」でクリスマスのごちそうやらプレゼントを買うのです。

オーバードラフトというのはイギリスやアメリカの銀行にある仕組みで、普通預金や当座預金(一般の人でも当座預金を持つことが可能です)の残高が不足していて、引き落としや小切手の振り出し(一般の人手も小切手を使います)ができない場合、銀行が一時的にお金を貸してくれる制度です。金利は高く、なるべくならお世話になりたくない仕組みでありますが、給料日前に残高が足りなかったという人は結構多く、使っている人は少なくないようであります。ただし、足りなくなった残高をさっさと返済しないと、住宅ローンやその他のお金を借りる場合や、他行で口座を開く場合にクレジットスコアに影響があるので気をつけなければなりません。

しかし、ここには、クレジットカードも銀行の普通講座も持てない人々がおります。借金しすぎて返せなかったり、破産していたり、定職がないためにどちらも作れないという人がいるわけです。

そういう人がこの時期に手を出すのが「Loan Shark」であります。「LoanShark」というのは日本で言う所の闇金やトイチ金融業者であり、簡単に金を貸し付けては、法外な利息をむしり取る金貸しです。

こういう業者から借りますと、10万円借りて返済総額が1200万円、利息が年利で719,000%なんて例が普通にあります。ミラー紙によりますと、元々軍人だった人が、障害のある奥さんと子供を抱え、生活費に困って£20を借り始めたら、年利50%で毎週の様にお金を借りる様になり、£7,000になっていた、とう例もあります。また借金取りが金を回収する方法というのはまあ日本と似ていて、借りた人間に毎日電話、恐ろしい連中と家に来る、殴る、などでありまして、最終的には自殺に追い込まれる人もおります。

ここで金貸しをやるにはThe Financial Conduct Authority (FCA) という所に業者として登録しなければならないわけですが、そういう「Loan Shark」というのは往々にして登録していなかったりします。違法な「Loan Shark」は役所に通報して何とかしてもらう方法というのもあるわけですが、多くの場合は恐ろしいので泣き寝入りです。

もう少し賢い人々は「Loan Shark」の代わりに「Pawn Broking」(質屋)や「合法なLoan Shark」呼ばれている「Payday Loan」(給料日ローン)に手を出します。どちらも、クレジットスコアが芳しくないため、銀行やカード会社からお金を借りることができないとか、不法滞在中なので銀行口座やカードを持てないという人々が使う業者であります。こういう人々向けに金を貸す市場のことをHigh-credit marketと呼びます。

最近イギリスは景気が悪く、給料は増えない上、社会保障費も削減されているので、「Pawn Broking」や「Payday Loan」が大流行りであります。特に「Payday loan」は大人気であり、その人気たるや、一時期に日本における消費者金融をしのぐ勢いです。イギリスの公正取引委員会の調査によれば、2012年の時点で約200の業者がおり、100社はネットで営業しています。顧客数は約100万人程度であると考えられてます。

イギリスの昼間のテレビや無料新聞にはこういう業者の広告が溢れておりますが、その広告手法はなかなか洗練されており、一時期のアコムを思い出すのです。動物やアニメを多用し、「スマイル」「クイッククイッド」などのカジュアルなイメージの商品名でサービスを売りこんできます。ウェブサイトはクラウドファンディングやソーシャルメディアと見分けがつかない気軽な感じなデザインで、「サラ金」のイメージとはかけ離れています。Wongaは2010 年にはロンドン市の年末年始のスポンサーになり、大晦日に地下鉄を無料で提供したこともありました。Wongaはサッカーチームのスポンサーにもなっています。

「Payday Loan」を借りる理由は給料日前の生活費や光熱費の不足を補う、車やボイラー故障の急な出費、冠婚葬祭、クリスマスなど様々であります。イギリスの公正取引委員会の調査によれば、典型的な借り主は1ヵ月に18万円以上稼ぎ、賃貸に住んでいる独身男性であるとのことです。各業者がライトで親しみやすい宣伝を流しまくるのも納得ですね。

「Payday Loan」業者の多くは、ネットや携帯で金を貸してくれます。ユーザーが申し込むと最短で10分程度で審査が終わり、お金が振り込まれるという仕組みです。業者の殆どは、借り手は18歳以上でイギリス在住という縛りを儲けているものの、借りるのに必要なのは銀行口座と携帯やタブレットで、1年365日、いつでも申し込めると言う手軽さで大人気です。ところで、こういう業者は年利3000%から4000%という法外な金利を請求します

例えば業界最大手の1つであるWonga(https://www.wonga.com )で借りた場合、年利は5853%であります。£150 (約27,000円)を18日借りた場合、固定利子は一日1%なので総額£27.99です。送金手数料が£5.50で総返済額は£183.49となります。ところが返済期日に遅れた場合は、£20がチャージされるので、例えば18日借りる予定で返済が12日遅れ、30日借りることになった場合、£221.49(約39,800円)返済することになるわけです。

消費者が「Payday Loan」から借りるお金は最高で10万円程度で、1~2週間から1ヵ月程度という短期間なので、高金利でも問題がないという人がいたりするのですが、借り手の多くは、多重債務者で、一社の借金が返せなくなると他社から借り、それも返せなくなると「Loan Shark」から借りるという状況に陥ることが多く、最終的には破産します。

さて、ここで「はあ?」と疑問を持つ方がいると思われます。日本の場合は消費者金融、いわゆるサラ金地獄で自殺やら一家離散などの悲惨な状況が発生したために、利息制限法というものがあり、15~20%の上限金利があるわけですが、イギリスにはなんとこの上限金利がなかったからです。

=====================
@hakusai13さんからの質問:
イギリス違法な金利ってどのくらいなのですか?
=====================

つまり、読者の方から頂いたこの質問に対する回答は、「利息制限法で上限金利を定めてなかったのでなかった」であります。

ただし、イギリスでも「Payday Loan」の借り手が多重債務者になることが増えて来たので、さすがに政府もこれは何とかしないということで、2015年1月からは、利息は最高で1日0.8%つまり、年利292%に制限され、返済遅延手数料は£15が上限ということになりました。

業者に対する制裁も厳しくなっており、先日は、Wongaの貸し付け審査がいい加減過ぎたとのことで、政府は同社に33万人の顧客の借金を帳消しにした上、4万5千人の手数料と利息を帳消しにする様に命令しています

 

谷本真由美(@May_Roma)の「週刊めいろま」第29号(2014年12月5日)
著者/谷本真由美
@May_RomaとしてTwitterで舌鋒をふるメイロマが、世界中の時事問題に突っ込む!ヤンキー英語やクスっと笑える英語、欧州を中心にした食事情もレポート!メルマガならではの特典として、読者のQ&Aにも答えます!
≪サンプルはこちら≫

print
いま読まれてます

  • 【年利5000%の金貸し】イギリスの46%の人は借金でクリスマスプレゼントを買う
    この記事が気に入ったら
    いいね!しよう
    MAG2 NEWSの最新情報をお届け