ドル円は年明け早々に円安スタートダッシュで116円に達しましたが、その後は3円下の113.50円レベルを2回も探りに行く動きとなり、1月末になんとかもとに戻るという展開となりました。ここから一方的にドル円が「ドル高に向かう」と信じるのはかなり危険です。ここから「円高」に振れるシナリオは少なくとも5つあります。(『今市太郎の戦略的FX投資』今市太郎)
※本記事は有料メルマガ『今市太郎の戦略的FX投資』2022年2月2日号の一部抜粋です。興味を持たれた方は、ぜひこの機会に初月分無料のお試し購読をどうぞ。
ここから「円高」に振れる材料はいくつもある
1月相場のドル円はいきなり116円へとスタートダッシュしたことから、さらに上昇かと期待を持たせることになりましたが、その後はなんと3円下の113.50円レベルを2回も探りに行く動きとなり、月末になんとかもとに戻るという展開となりました。
これは、FOMCがなければもっと下値を探っていたのかもしれませんが、1か月のローテーションでほぼ月初のレベルに戻って2月の相場がスタートしています。
ただ、足もとでは急に上値は重くなり、1日遅れで114円台に押し戻される動きとなっています。
さて、ここから相場がどうなっていくのかは非常に予想がしづらくなっていますが、現状でも円高に振れる材料というのはいくつか考えられるものがあります。
まずドル円を考えるにあたっては、年間の値幅を意識しておく必要があります。
過去20年間ではほぼ13.5円程度が平均値ですから、ここから一方的にこの値幅が上昇することになるなら、128.5円までの上昇は十分にあり得ると言えます。
また逆に、一方的な下落がある場合は、昨年の年初の安値の102円レベルまで下がることも考えられるところです。
上下均等に上昇と下落とした場合には、上値は121.7円下値は108.3円近辺で推移することが想定されるところとなります。
もちろん相場の大暴落が起きればこうした想定値をいとも簡単に下抜けることは十分にありうる状況です。
ここでは5つのケースを考えておきたいと思います。
Next: 大暴落は突然に。ドル円相場「5つの下落要因」
ドル円相場の下落要因その1:地政学リスクによる円買い
まず直近の相場で円高リスクとなりやすいのは、何と言ってもウクライナと中国の地政学リスクの問題です。
リアルな戦争・戦闘もさることながら、英米が金融市場レベルで仕掛ける制限や規制と、それに対する報復措置が双方でエスカレートした場合、これまでの想定を超えるリスクが市場に放たれて、中央銀行バブルの崩壊ボタンまで押してしまう可能性がある点には注意すべきです。
この場合、ドル円がどれだけ円高になるかは、実際に起きてみないと誰もわからないというのが正直なところではないでしょうか。
ドル円相場の下落要因その2:米国民主党が円安に激怒する時
これはこのメルマガでは何度も触れていることですが、対円でドル高が一定以上進み、しかも米国の債務の問題が大きくクローズアップされますと、米国という国は必ず日本に対して円の為替水準に難癖をつけてくるのがお決まりのパターンとなっています。
年明け猛烈な円安が進んだ場合、サクラが咲く前に民主党政権から何かクレームが来るのではないかと想定しておりましたが、今のところはそんなことには構っていられないというのが現実の状況の様子。
問題が起きるとすれば、11月中間選挙の3か月前あたりで騒ぎになるかどうかをチェックしたいところです。
とくにドル円が130円などとなれば、実質実効レートは固定相場の360円を超えかねないものがあり、米国のみならず日本政府が制御に入る可能性すら高まることになります。
この場合、どこまで円高が進むかは米国さまの意向次第ということになるのではないでしょうか。
ドル円相場の下落要因その3:日銀が利上げを余儀なくされる時
もうひとつ市場があまり意識していないのが、日銀自身による利上げのリスクです。
すでにJGBの金利は、日銀が完全に制御できているはずなのに、すでにその金利は上昇を始めており、インフレが国内経済でも鮮明になり始めると、黒田総裁は来年3月まで何もしないで逃げ切るつもりでも、そうは問屋が卸さなくなる時が到来する可能性があります。
こうなると、米国の金利とのコントラストに変化が現れる可能性もあり、実質実効金利が実はかなり低い米ドルを売って円を買うという、まさかの光景を目の当たりにすることもありえそうな状況です。
ただ。これも年の前半に早々と示現するとは思えず、後半に向けてのリスクと考えるべきでしょう。
Next: もっとも可能性の高い「バイデンの中間選挙“ボロ負け”」リスク
ドル円相場の下落要因その4:バイデンが中間選挙でボロ負けした時
今回ご紹介するリスクシナリオでもっとも可能性が高そうなのが、バイデンが11月の中間選挙でボロ負けすることにより、ドルが対円で大きく売られるシナリオです。
恐らく米国FRBの利上げスケジュールにも深刻な影響を及ぼすことになるでしょうから、ドル円も年間の上昇幅をすべて剥落させる動きになるのかも知れません。
さすがに11月段階でドル円がどの価格水準にあるのかはまったくわかりませんが、トランプが大統領に勝利した時の逆さまの状況を思えば、短期間に5円やそこいらの下落があってもおかしくはないはずです。
ドル円相場の下落要因その5:中央銀行バブル崩壊
さて、最後に挙げるのが、中央銀行バブル完全崩壊による相場の大暴落シナリオです。
もちろん足もとではそこまで危機的な状況が示現しているわけではありません。しかし、下げ局面で果敢に買い向かっている個人投資家も、そのほとんどがレバレッジをかけて借金しながら投資を行っているのが実情ですし、プロのファンドでさえ驚くほどレバレッジをかけて買い向かっているのが現実です。
国内では「レバナス民」などという不思議な名前もかなり知名度をあげていますが、指数取引であれ、個別取引であれ、レバレッジをかけているのはもはや当たり前で、追証が必要となるほど相場が下落すれば、すべての資本市場がいきなり全部売りに豹変するのはもっともあり得る破滅的未来といえます。
中央銀行バブルの崩壊というのは、人類史上初のネガティブイベントですから、どれだけの焼け野原になるのかはなってみないとわかりませんが、ドル円がいきなり円高にシフトするのには、どれもこれも情けなくなるようなこんな要因があるということは、予め理解しておいてもいいのではないでしょうか。
想定外のリスクに耐えられる柔軟性が必要
本邦は我々が認識している以上にろくでもない道に突き進んでいますから、これ以外にもいきなりテールリスクが飛び出すこともありそう。
ここから一方的にドル円がドル高に向かうと信じるのはかなり危険です。あらゆる事態に耐えられるだけの柔軟性が必要な年になるのではないでしょうか。
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『今市太郎の戦略的FX投資』(2022年2月2日号)より抜粋
※タイトル・見出しはMONEY VOICE編集部による
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