中国はもう「落ち目」だという事実が認識され、グローバルな資金が抜けていく可能性が非常に高まっている。とすれば、中国から引き抜かれた資金は長期的に「どこに流れていくのか」が次の課題となる。リスクがあったとしても高い成長率を誇る国に投資したらリターンも大きい。(『 鈴木傾城の「ダークネス」メルマガ編 鈴木傾城の「ダークネス」メルマガ編 』)
プロフィール:鈴木傾城(すずき けいせい)
作家、アルファブロガー。政治・経済分野に精通し、様々な事件や事象を取りあげるブログ「ダークネス」、アジアの闇をテーマにしたブログ「ブラックアジア」を運営している。
中国の実際の若者の失業率は46.5%ではないか?
これまで中国は昇り竜であり、一部の識者は「アメリカをも凌駕して中国が世界を制覇するのではないか?」と、能天気なバラ色の未来を語っていた。
もちろん、共産主義政党が一党独裁で国家運営をしている中国みたいな国が世界制覇することなど1ミリもありえないのだが、それを信じ込んでしまう人がいるくらい、ここ30年ほどの中国経済の発展は凄まじかった。
しかし、その中国もコロナの発生でつまづき、習近平の失策や独裁と相まって、中国経済は「長期的な危機にさらされているのではないか」との見方が強まってきている。それを象徴しているのが若者の失業問題だ。
中国政府(国家統計局)が発表している若者失業率は19.6%である。約20%の若者が職を得られない。それでも非常に非常に悪い数字なのだが、実は北京大学の教授によると、実際の失業率は46.5%ではないかというのである。
46.5%と言えば、それこそ2人に1人の若者が仕事が見つからない衝撃的な状況だ。
もともと中国当局が発表する公式データの数字などアテにならず、「自分たちの都合の良い数字は誇大化し、自分たちの都合の悪い数字は矮小化する」と馬鹿にされているくらいだった。
そのため、数字を改竄するインセンティブの低い北京大学の教授のデータのほうが信憑性が高いと思われるが、そうだとしたら46.5%という数字になるのだから、今の中国ではとんでもないことが起こっていることがわかる。
どうしてこんなことになってしまったのか?
中国が経済的に転がり落ちていくいくつもの要因
中国政府は武漢から発生したコロナをとにかく徹底的に抑えるために「ゼロコロナ政策」を長らく取ってきたのだが、これが中国全体の雇用を著しく悪化させた。そして、コロナ禍の流行が収まって来た中でも製造業は回復せず雇用は回復しなかった。
製造業を担うのは若者の雇用である。ここがダメージを受けたので若者の雇用先も消えた。
さらに中国政府は知的財産の強奪が西側諸国に警戒されるようになり、アメリカを中心に「中国企業排除」が進むようになっている。
欧米は半導体を中心として軍事に転用できる製品も禁輸し、アメリカに上場した中国企業も上場廃止させ、中国人の研究者も最先端技術を研究する大学から排除していった。中国は今、欧米から制裁されているような状況となっているのだった。
これによって、当然のことながら中国のハイテク企業の売上や影響力は落ちる。そして、それがそのまま若者の雇用にダメージを与える。
そこにきて習近平は国民の経済格差の是正がもはや容赦できない状況にあることを問題視して、共同富裕の概念を押しつけて中国ハイテク企業などの経営にブレーキをかけるようにしていった。これも若者の雇用にダメージを与えた。
これと同時に、中国政府は子供たちの教育のプレッシャーを軽減するためにオンライン家庭教師を禁止したりしている。
折しも、中国では人口ボーナスの時代が終わって、今後は高齢者が増えていく社会に入っていく。中国の爆発的な経済成長や内需はこれから細っていく可能性が指摘されている。中国のGDP成長率も衰えていくだろう。
そうした諸々の要因がすべて折り重なるように中国を襲いかかっていて中国経済は深刻な危機に直面しようとしている。構造的に中国経済は下り坂に落ちていく局面に入ったとも言えるかもしれない。
Next: Appleも中国から足抜け。著名投資家たちも資金を引き上げた
著名投資家たちも中国から資金を引き上げた
中国政府も自分たちの経済が悪化していることくらいは誰よりもわかっているわけで、とにかく経済浮上の手を打つために西側諸国では考えられないようなことをしてくるかもしれない。
しかし、国際社会から信用を失った中国は、もうかつてのように手放しで歓迎されるような国ではなくなっている。これまでのようにグローバル経済の中で経済発展ができるとは思えない。
中国の経済発展は1990年代からはじまったが、2010年代初頭まで欧米は「中国が経済発展したら民主主義国家になる」と思い込んでいたし、「欧米のパートナー国家になれる」とも信じていた。
しかし、中国は民主主義国家にならなかったし、欧米のパートナーになるほど誠実でもなかった。欧米の目が覚めたのが2010年のなかばあたりからであり、かつては親中で中国べったりだったオバマ大統領も中国に見切りをつけた。
それもそうだ。自国の機密情報や最先端技術や知的財産やノウハウをことごとく盗み取られて「信頼できる国」など思えるはずもない。「オバマは中国に甘すぎる」という批判が飛び交う中で、親中だったオバマ大統領ですらも中国を持ち上げることができなくなってしまっていたのだ。
トランプ政権になってから、もはやアメリカは中国排除を隠さなくなったが、バイデン政権も中国の排除に関しては着々と進めている。
アメリカの経済界は今も中国の市場に未練があって、アメリカ政府の中国排除を批判していたのだが、コロナ禍で「中国は思ったほど民主的ではない」と思い知って、投資を引き上げるようになっている。
Appleも中国から足抜けしようと努力しているし、投資家で言えばウォーレン・バフェット率いるバークシャー・ハサウェイも中国BYD株をほぼ売却した。キャシー・ウッドもテンセントやピンドウドウなどの中国企業の株式を全部売り払っている。
高い成長率を誇る国に投資していたらリターンも大きい
中国はもう「落ち目」だという事実が認識され、グローバルな資金が抜けていく可能性が非常に高まっている。とすれば、中国から引き抜かれた資金は長期的に「どこに流れていくのか」が次の課題となる。
もちろん、多くのマネーはアメリカに回帰していくだろう。なぜなら、アメリカには世界最強の株式市場があり、現代の資本主義の総本山となっているからだ。アメリカに敵う資本主義国家は「ない」のだ。
しかし、グローバル経済の中では「次の成長国」を狙ってそこに資金が流れ込む動きも同時に起こる。なぜなら、たとえリスクがあったとしても高い成長率を誇る国に投資していたら、リターンも大きいからである。
では、「次の成長国」とはどこなのか。
Next: 次に投資すべきは?巨大なバブルが発生する可能性
インドが「次の成長国」
間違いなくインドだろう。インドは今年になって中国の人口を超えて世界最大の人口を抱える国となったのだが、まさに今この瞬間に人口ボーナス期が到来したわけで、これから「高い経済成長率」が予測される国となっているのである。
当然、高い経済成長率を享受する国には経済的なチャンスが広がっていくので、貪欲に成長とリターンを求めるリスクマネーが莫大に流れ込んでいく。すでにインドには莫大な投資資金が流れ込んでいる。
これからインドの株式市場には巨大なバブルが発生する可能性もある。
もちろん、日本人の中には「インドみたいな国が本当に経済発展できるのか?」と懐疑的になる人の方が多いと思うが、私自身はインドにはそれなりのチャンスがあるのではないかと考えている。
少なくとも「これから中国かインドか、どちらにチャンスが転がっているか」と言われたら「インド」と即答するだろう。中国みたいな国には1円も投資したくないが、インドなら投資してもいいと個人的には思っている。
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- 人生も壮大な賭け。投資から人生まで「賭け方」で知っておくべき4つのタイプ(10/20)
- 投資の前に貯金や収入を何とかしなければならないのであれば、どうすべきか?(10/13)
- 「一生現役」は、政府が日本国民を死ぬまで働かせるためのキーワードである(10/6)
- 圧倒的な弱者であっても、絶滅するどころかしたたかに生き残っている事実(9/29)
- 資本主義では資本が生み出す不労所得を手に入れることが最も大きな「旨み」だ(9/22)
- 今までの資本主義は「株式保有」が生き残るための武器だったが次はなにか?(9/15)
- 重い借金を抱えて地獄を見て生きている人は、借金のない人が幸せに見える(9/8)
- 消費税10%を乗り切れ。ダメージを受ける人は、その分をサイドジョブで吸収せよ(9/1)
- 下らないマウントが横行するネットの世界で自分のスタイルを守るには?(8/25)
- 最先端のバイオ・ゲノム企業に投資するのが難しい理由と乗り越える方法(8/18)
- 中国発の株式市場への巨大な悪影響は、いつか必ず私たちに襲いかかってくる(8/11)
- 8月1日に巨大損失を被ったのであれば、それは健全な投資をしていない証拠(8/4)
- アメリカに投資していないのであれば、本当の意味の恩恵を受けていない(7/28)
- カネのあるところから無理やり自分にトリクルダウンさせる仕組みがある?(7/21)
- アメリカの株式市場が史上最高値更新。しかし、有頂天になる局面なのか?(7/14)
- アーリーリタイアは「夢のまた夢」なのか「何とかできる」ものなのか?(7/7)
- 定期定額積立投資しながら暴落待ち。私が次の暴落に投資したいのはこれだ(6/30)
- 率直に言うと、日本の株式市場に長期投資するというのは人生最悪の選択(6/23)
- 米中新冷戦は長引くが、これによってアメリカに賭ける戦略は終わるのか?(6/16)
- 第一線を離れてからも要領良く資産を増や続けるビル・ゲイツを観察せよ(6/9)
- 起業して10年後に生き残れるのは6%。起業に人生を賭けない生き方も悪くない(6/2)
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