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【6月米雇用統計】雇用者数は上振れ必至か。上目線で99.00~103.50円を想定=ゆきママ

前回の雇用者数の大幅な下振れは単なるノイズに過ぎないのか?はたまたアメリカ経済が停滞し始めている兆候なのか?今日(7/8)21:30発表の6月米雇用統計は非常に重要な意味を持ちます。前回のショックを思い出すと怖いですが、実はゆきママは楽観視しています。その理由について、しっかり解説させていただきますので、ぜひお読みいただければ幸いです。(『ゆきママのブログでは書けないFXレポート(無料板)』『お値段以上!?ゆきママの「週刊為替予測レポート」(有料板)』FXトレーダー/ブロガー・ゆきママ)

ショックは再来せず? 6月アメリカ雇用統計のポイント

前回からの反動と好調な先行指標に期待感、上振れは必至か

まず、今回の6月米雇用統計を考える上で重要なポイントの1つとして挙げられるのが、前回(5月分)からの反動です。

振り返るまでもなく、5月雇用統計は非農業部門雇用者数が3.8万人増と、予想の16.4万人増を大きく下回るという衝撃的な弱さとなったことをほとんどの方が覚えていることでしょう。この時、ドル円相場は2円を超える下落を記録しました。

この背景には、アメリカの通信最大手ベライゾン・コミュニケーションズを中心に4万人を超える労働者がストライキを起こし、給与が支払われなかったため失業者と見なされ、少なくとも雇用者数が3.4万人分も押し下げられたことがあるとされています。

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そして、ストライキを行っていた従業員は6月1日付で職場に復帰していますから、今回(6月分)の雇用者数は最低でも3.4万人程度は底上げされることになると考えられます。

それから、もう1つは先行指標が非常に好調ということがあります。5月分と6月分の先行指標を比較したものを一覧表にまとめてみました。

ご覧のとおり、6月はすべての項目で改善を示しています。ADP雇用報告はもちろんのこと、アメリカ供給管理協会(ISM)が発表した景況指数(総合指数)は、製造業部門が1年ぶり、非製造業部門が7カ月ぶりの高い水準を記録しています。

さらに、新規失業保険申請件数は4月につけた43年ぶりの低水準に近い数字を間近で記録していますから、6月はリストラが減少していると言えるでしょう。

前回からの反動と好調な先行指標という2つのポイントを踏まえると、少なくとも雇用者数に関しては比較的良好な数字が出てくることが期待できると考えています。

Next: 賃金上昇率次第で、急速な利上げ織り込み&ドル買い再開も



賃金上昇率次第で、急速な利上げ織り込み&ドル買い再開も

今年は残すところ7月、9月、11月、12月と計4回のFOMC(連邦公開市場委員会)が予定されていますが、なんと現在(7月7日時点)の金利先物市場が想定する利上げ確率は、7月、9月、11月はいずれも0%で、12月が14%に止まるのみとなっており、ほぼ全く織り込まれていないことが伺えます。

昨年末には4回、今年3月には2回とされていた利上げ回数ですが、ここに来てついに0回という予想が大勢になりつつあるわけです。

しかしながら、この見通しが正しいのかと言えばかなり疑問です。

6月米雇用統計における賃金上昇率(平均時給)の事前予想値は、前月比0.2%増、前年比2.7%増とされていますが、これは2%のインフレターゲットの達成に必要とされる前年比3.0~4.0%増という数字の下限にかなり近いです。

今週発表された6月14~15日分のFOMC議事録において、「何人かのメンバーは利上げの先送りがインフレの行き過ぎを招くリスクがある」と指摘していたことを考えると、もしも前月比0.4%増、前年比2.9~3.0%増という予想を上回る結果となった場合には、早期利上げ期待が急速に高まってドルが買われる展開も十分あり得るでしょう。

もっとも、ご存知のようにFRBの見解がコロコロ変わっていることから、市場も半信半疑でドルを買い進めていくことになりますから、賃金の上振れは少しずつジワジワという値動きで相場に反映されそうです。

Next: 想定レートは99.00~103.50円、一段高には大幅な上振れが必須!



想定レートは99.00~103.50円、一段高には大幅な上振れが必須!

今回の雇用統計におけるゆきママの想定レートは、1ドル=99.00~103.50円です。やはり少し強気な目線で、下落よりも上昇に重きを置いているといったところになります。

その理由としては、最初に書いた前月の反動好調な先行指標が最も大きい要素で、事前予想の非農業部門雇用者数の18.0万人増という数字を大幅に上回ることを期待しています。

加えて、失業率が完全雇用に近い水準まで低下していることも挙げられます。これは労働市場の逼迫を意味し、賃金の上昇は避けられない構図となっている可能性が高そうですから、仮に雇用者数が事前予想を下回る事態になったとしても、初動はともかく総じて底堅い値動きになるのではと考えています。

FRB(連邦準備制度理事会)の「労働市場のスラック(緩み)が解消されつつあり、毎月10万人弱の増加ペースを確保できれば新規参入者を吸収できる」という見解に従えば、10万人を超える程度の雇用増があれば労働市場は引き締まっていくことになります。

つまり、今回も雇用者数が10万人を下回るような悲惨な結果とならない限りは、賃金がしっかり上昇していくだろうという公算です。

実際に、前回は非農業部門雇用者数が3.8万人増という低水準にもかかわらず、賃金上昇率は前月比0.2%増とまずまずでしたから、雇用者数と賃金上昇率の両方が予想を下回るような最悪のケースとなる確率はかなり低いのではないでしょうか。

この他にも、Brexit前後の株価と為替を比較すると、NYダウは見事にV字回復してBrexit前の水準になっているのに対し、ドル円はまだまだ下がったままですから、現在の水準はやや下方向にオーバーシュート気味と見ていることもあります。

Brexit前の105円前後とはいかなくとも、本来ならもう少し戻してもおかしくありませんからね。

NYダウ


米ドル/円

というわけで、今回はドル高になる可能性が高いと予想しています。ただし、強い結果が出たからといってガンガン上値を追う展開になると考えているわけではありませんので、その点にはご注意下さい。

なんといっても102円前後の水準は2013年12月~2014年7月という長期に渡ってボックス相場を形成していたこともあり、テクニカル的に相当収まりどころの良いレート水準と言えます。

ここから抜け出すには、雇用統計という材料1つでは足りないと思われますので、予想通り上方向に相場が進んだからといって追いかけ過ぎないで、ほどほどのところで利益確定することを心がけましょう。

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本記事は『マネーボイス』のための書き下ろしです(2016年7月8日)
※太字はMONEY VOICE編集部による

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