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2018年のビットコインはどうなる? 高値更新のための3つの条件=吉田繁治

日本が取引額で世界一になるなど熱狂が続く「ビットコイン」。果たして今後は上がるのか、下がるのか。仮想通貨の未来を考えてみましょう。(『ビジネス知識源:経営の成功原理と実践原則』吉田繁治)

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来たる「銀行系仮想通貨」がビットコインブームにとどめを刺す?

世界一になった日本人のビットコイン取引額

2017年11月中の日本でのビットコイン(BTC)取引額は、10兆7562億円(1日平均3580億円)と大きくなっています。

主な取引所はビットフライヤーです。1000種も開発されている仮想通貨のうち、時価総額はトヨタよりも大きい30兆円に膨らみ、全部の仮想通貨の価値の50%を占めるのがBTCです。2位はイーサリアムで15%、3位がリップルで6%です。ビットフライヤーには、三菱UFJやSMBC、みずほ等の大手銀行が出資しています。

今日の買いはBTCの1単位で202.6万円、売りは187万円でした(編注:原稿執筆時点12月11日)。比較のために示すと、わが国の株式の売買額は1日約3兆円、月間60兆円です。日本ではBTCだけで、東証の株の1/6の売買高になっています。

9月以降のわが国の個人投資家(700万人)は、株は売り越して、ビットコインを買っています

買う人が増えたのは、仮想通貨法で通貨として認めたこともありますが、アマゾンのような取引所のサイトでウォレット(ビットコインの財布のソフト)をダウンロードするだけで、クレジットカードで買うことができるからでしょう。およそ10分もあれば、終わります。手軽さは、リアルマネーに対する仮想通貨の利点です。

ブームの中心は「日本」と「米国」

現在、世界で強い関心を示しているのは、日本と、17年12月10日にシカゴ市場に先物が上場された米国です。ユーロ圏(19か国)では注目されてはいません。統一通貨のユーロ自体、自国では発行していないため(中央銀行のECBはどの国にも帰属していない汎欧州です)、感覚的には仮想通貨のようなものだからかもしれません。

さて、10月からの日本での熱狂には、どんな理由があるのでしょうか。

日本人が熱狂する「2つの理由」

日本で買いが増えた原因は、外貨のFX(外為証拠金取引)で、個人の売買額が世界一という素地があったからでしょう。海外メディアからは「ミセスワタナベ」と呼ばれるFXの個人投資家が、株価が上がっていた10月頃から、成長する外貨の新種や金と同じと見なしてBTCを買ったからです。50万円を超えてからは、金の代替物と見なす人も増えてきました。

また、FRBが2017年10月からは出口政策(増発したマネー量の縮小)に向かっているのに、日銀は今後も、いつまで行うかわからない量的緩和(通貨の増刷)を続け、ベースマネーの量が増え続ける円は、いずれ下がるのではないかという予想も絡んでいるようです。FXを行っている人が、ビットコインを多く買っていることが、この不安を示しています。

Next: 意外にも「通貨として片手落ち」状態のビットコイン



「通貨として片手落ち」状態のビットコイン

通貨には、3つの機能があります。

  1. 商品購買力の価値の保存機能
  2. 価値の尺度となる(商品の価格を計れる)機能
  3. 商品との一般交換性(どの店舗のどの商品でも購買できる)

価格変動の大きなBTCは、上記3つの機能を満たしているとは言えません。使うことのできる店舗、レストランもまだ少数で金額も少ない。ビックカメラや、中華街の聘珍楼(へいちんろう)では、1か月にわずか数回です。中国人が多いということでもない。17年5月で、ビットコインが使える店舗は全国1700店でしかありません。

総店舗数は100万店ですから、使用できる店舗は少ないです。ただし、リクルートが展開する「モバイル決済 For Air レジ」では、店舗が希望すればビットコインを使えるようにする予定であり、そうなると一挙に全国26万店に増えます。

といっても、話題づくりの目的で店舗側が実際に希望し、使用可能になるのはまだ5000店くらいと見込まれます(2017年)。しかし、2018年、2019年になれば、急速に増えるとみています。オリンピックの頃は、仮想通貨を使うのも、一種のクレジットカードのように普通の風景になるかもしれません。

1単位200万円の時価のビットコインで1万円の商品を買うときは、0.005ビットが店舗に移り、ウォレットの残りが0.995ビットになります。受け取る商店も、取引所ですぐに円に交換せず、保存すれば「値下がりのリスク」を抱えます。ただし同じ確率で、値上がり益も見込めるでしょう。

BTCには、通貨の3つの機能がまだ十分ではない。このため、通貨ではなく、投機的商品と見ている人が多い。買う人も、店舗で使うためではなく、転売の利益を目的にしているからです。投資銀行のゴールドマンサックスやJPモルガンは、「詐欺的な通貨」と批難しています。

また、中央銀行のように価値(購買力)を安定させて維持する機関はなく、価格は取引所での日々の売買で決まります。何らかの原因で売りが増えると、数か月の短期でその価値が数十分の1に下がるリスクもあります。

Next: 上昇か下落か。ビットコインの今後を占う3つのポイント



ビットコインは今後どうなるか

読者の関心は、日本人の買いで一時200万円に高騰したBTCが、今後、上がるのか下がるのかでしょう。上がるには3つの条件が必要です。

<BTCが上がる3条件>

  1. 使える店舗が増え、通貨の条件である一般交換性を確保すること
  2. マネーロンダリングや資本規制(外貨交換の制限)の障害として、政府が禁止しないこと
  3. 個人投資家の買いが増えること

使える店舗数は増加傾向にあります。

中国のように元の外貨交換を規制する国では、禁止されることはあるでしょう。日本・米国・欧州では、政府は禁止しないとみています。長期的には、現在の通貨を、価値が目減りするマイナスの金利をつけることもできる仮想通貨に変える考えをもっているからです。

残る問題は、投資家による買いが増えるかどうかの予想です。

「銀行系仮想通貨」の出現でビットコインは終わる?

BTC風の仮想通貨を世界の銀行が開発した場合、BTCの希少性は薄れます。そうすると価値変動のリスクが高いBTCへの投資は、次第に減って行く可能性があります。BTCの高値は、それまでの命のようにも思えます。

2018年、2019年は大丈夫でしょうか。銀行系の仮想通貨が出ると予想される2020年頃は危ないです。価格が下がっても、老舗のBTCがなくなるという意味ではありません。価格のボラティテリティ(価格変動率)が低い通貨に変わって行くことです。

株式市場でも、上場会社が増えると、投資資金の集中は減ります。これと同じことが、銀行系の仮想通貨の登場で起こるでしょう。

銀行系の仮想通貨は、1つの銀行が始めると、ごく短期間で、クレジットカード会社のように増えていきます。BTC風の仮想通貨は、ゼロ金利が経営を圧迫している銀行が、競って開発するからです。

Next: 将来の仮想通貨はクレジットカードのような役割を果たす



金融の世界をがらりと変えたビットコイン

仮想通貨は、近い将来、リアルマネーのクレジットカードのような機能を果たすことになるでしょう。店舗は、クレジットカードのように、使える仮想通貨の看板を表示する風景が浮かびます。

【関連】暴騰するビットコイン相場の未来はなぜ「誰にも予測不可能」なのか?=吉田繁治

IMFのラガルド専務理事は、IMFの通貨(SDR:政府と中央銀行のみが使う通貨バスケット:1SDR=166円)をブロックチェーンにし、仮想通貨にするという構想も述べています。

リアルマネーが多く仮想通貨に代わったとき、預金という概念も変わるので、中央銀行と銀行そして金融業がどう変化するかは、別のテーマです。

今も所在は不明で、開発者とされるサトシ・ナカモトはノーベル賞を超える発明で、金融の世界を変えました。ビットコイン風の仮想通貨の時代を拓(ひら)いたからです。


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3. 企業と世帯の預金マネーが増えなかった原因
4. 金融商品の価格は、売りと買いの金額の一致点で決まる
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6. 上げや下げが連続する日もある
7. アベノミクスの中の日本の株の買いは、特殊である
8. 不可能な錬金術を求めている罫線派
9. 誰がいついくら売買するかの予測ができないければ、株価の予測はできない
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・中央銀行は、国民のためには必要がない(5)(12/21)
1. マネーの役割と、銀行のマネー創造ついての学説のなさ
2. マネーは経済主体間を流れる。流れるだけでは、総量は増えない
3. リーマン危機についての定説はまだない:その理由
4. 米国が植民地通貨だった時代(米国中央銀行の前史)
5. 宗主国との独立戦争の勝利のあと(1783年~)
6. 第一、第二合衆国銀行の消滅
7. 中央銀行が設立され、不換紙幣の通貨を増発したあとの金価格
8. FRBの設立と、議会での承認(1913年)

・中央銀行は、国民のためには必要がない(4)(12/19)
1. マネーの役割と、銀行のマネー創造ついての学説のなさ
2. マネーは経済主体間を流れる。流れるだけでは、総量は増えない
3. リーマン危機についての定説はまだない:その理由
4. 米国が植民地通貨だった時代(米国中央銀行の前史)
5. 宗主国との独立戦争の勝利のあと(1783年~)
6. 第一、第二合衆国銀行の消滅
7. 中央銀行が設立され、不換紙幣の通貨を増発したあとの金価格
8. FRBの設立と、議会での承認(1913年)

・中央銀行は、国民のためには必要がない(3)(12/13)
1. 日銀の異次元緩和の現在
2. 異次元緩和の目的と結果
3. 日銀が増発した360兆円のマネーの、行き先

・中央銀行は、国民のためには必要がない(2)(12/6)
1. 政府・日銀が敷いたゼロ金利の、国民にとっての意味
2. 1998年から、預金金利はほぼ0%を続けている
3. 日銀はどんな目的で設立され、政府は何に使ったか
4. 日露戦争では賠償金がなく、政府は国債の償還ができなかった
5. 第二次世界大戦のときの日本

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11月配信分
・中央銀行は、国民のためには必要がない(1)(11/30)
・大きくなったマネーの国際移動と、異次元緩和の臨界点(11/22)
・8年のゼロ金利負債が生んだ、世界の資産バブル(3)(11/15)
・8年のゼロ金利負債が生んだ、世界の資産バブル(2)(11/9)
・8年のゼロ金利負債が生んだ、世界の資産バブル(1)(11/1)

10月配信分
・この5年、日本経済は成長したのか(10/25)
・総選挙の結果分析と提案(10/23)
・選挙での最大関心になった社会保障の近い将来(10/18)
・国政選挙の、後半の情勢(10/16)
・失敗した異次元緩和が、問われないまま続く(10/12)
・奇しくも、政権選択の政治になった秋(10/4)

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ビジネス知識源:経営の成功原理と実践原則』(2017年12月11日号)より一部抜粋
※太字はMONEY VOICE編集部による

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