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寄付よ、被災地へ確実に届け! ブロックチェーンがもたらした5つの革新=高島康司

ブロックチェーン技術で「寄付」が進化している。中間組織を排除し、送金コストを抑えることに成功しているのだ。そして多くのプロジェクトは投資対象にもなる。(『ヤスの第四次産業革命とブロックチェーン』高島康司)

※本記事は有料メルマガ『ヤスの第四次産業革命とブロックチェーン』2018年7月10日号の一部抜粋です。ご興味をお持ちの方はぜひこの機会にバックナンバー含め今月分すべて無料のお試し購読をどうぞ。6月19日配信された続編「ゴールドとリンクした仮想通貨のプロジェクトを一挙に紹介」もすぐ読めます。

送金コストと透明性に大きなメリット。さらに投資対象にもなる

非営利の分野でも投資対象になる

慈善事業の分野におけるブロックチェーンの適用と聞くと、チャリティーは営利目的ではないので、なぜこの分野がICOや仮想通貨の投資につながるのかイメージできないかもしれない。たしかに寄付や献金を中心とした慈善事業そのものは、利益を目的としたビジネスではない。

しかし、この分野にブロックチェーンが適用されると、必然的に仮想通貨を生成し、それが市場に上場して取引の対象になる。そうした仮想通貨は、エコシステムと呼ばれる独自な極小経済圏を生み出し、そのなかで経済が循環する可能性も出てくる。

また、ブロックチェーンを適用するプロジェクトであれば、慈善事業の分野でも資金調達の方法はやはりICOとなる。となれば、販売されたトークンが将来市場に上場したとき、大きな値上がりが期待できることがある。

このような意味では、慈善事業の分野におけるブロックチェーンの適用は、他の分野とさして異なることはない。一般の株式市場では、慈善事業のような営利目的ではない組織やプロジェクトが上場の対象になることはないが、そうした非営利の分野でも投資の対象になるのがブロックチェーンの特徴だ。

ブロックチェーンを適用するメリット

慈善事業におけるブロックチェーンの適用には、次のようなメリットがあると見られている。

<その1:クラウドファンディングによる仮想通貨の資金調達>

ブロックチェーンそのものの適用とは少し異なっているが、ビットコインのような仮想通貨で寄付ができれば、寄付のハードルはぐっと下がるに違いない。現金による寄付の場合、指定された口座に、振り込み手数料を支払って送金するか、または郵便為替のような方法を使い現金を物理的に送る方法になる。どちらの方法も繁雑である。

これに対し、ビットコインのような仮想通貨による寄付が可能であれば、取引所からそれこそワンクリックで送金できる。かなり手軽に寄付ができるようになる。

<その2:送金コストの大幅な削減>

寄付をする場合、やはり気になるのは送金のコストである。個人が寄付をするときもそれなりの振り込み手数料はかかるが、慈善事業を実施している機関が、集めた資金を支援先の国や地域に送金するときの送金コストはばかにならない。ブロックチェーンのプラットフォームを使うと、送金にかかかるコストは大幅に削減できる。

Next: 「本当に支援先に届いているのか?」という不安はもうない



<その3:透明度と信頼性の確保>

慈善事業の大きな問題のひとつは、透明度の欠如である。

集めた資金が支援先に届いたかどうか分からないプロジェクトがある。金融システムが十分に整備されていない地域に支援金を届ける場合、多くの中間組織に依存せざるを得ない状況がある。そうした中間組織のすべてが信頼できるとは限らない。その結果、支援金を必要としている人々に届く前に、掠め取られてしまうことも多い。特にこれは、支援先が内戦で荒廃した地域や、大災害の被害を受けた辺境であるときはそうである。

また、慈善事業には資金の不正使用を意図的に行う財団もある。一見するとこれらの組織は正当な慈善事業を行っているように見えるものの、実際に集めた資金がどのように使われたのかはっきりしない。

日本では報道されていないようだが、クリントン財団の資金にも使途不明金が多いとされ、海外ではスキャンダルにもなっている。特に、2010年のハイチ地震のとき、クリントン財団はかなりの額の寄付を集めることに成功したが、それが実際にハイチに送られ、支援・復興事業に使われたのか疑問が多いとされている。トランプ大統領もこの件を激しく非難している。

ブロックチェーンのプラットフォームを導入すると、送金を仲介していた中間組織は排除できる。ブロックチェーンは、高度に暗号化した送金のデータをブロック化し、それをチェーンで結んで分散台帳に管理する技術である。第三者が、どれかひとつのブロックを改ざんしたりコピーしたりすると、分散台帳すべてがだめになる仕組みだ。そのため、送金された資金が途中で奪われる可能性は非常に低い。資金はほぼ確実に送信先へと送られる。

昨今は取引所がハッキングされ、仮想通貨が盗まれる事件が多数起こっている。これは送金過程で起こったことではなく、取引所が保管している仮想通貨が盗難された事件だ。したがって、いまでも送金の安全性は確保されているとの認識が強い。

こうした透明性が、多くの中間組織が送金を媒介している慈善事業の分野では信頼性の源泉になる。

<その4:慈善活動の自動化>

プログラムの実行機能を実装したスマートコントラクトのブロックチェーンを活用すると、企業収益の一部が自動的に慈善事業へと寄付するシステムが構築可能になる。

さらにこうしたスマートコントラクトのブロックチェーンにAIを内蔵させた場合、AIがもっとも効果的な慈善事業のプロジェクトを自動的に評価し、寄付をすることができる。

<その5:IoTの活用とトラッキング>

もちろん、慈善事業の寄付の対象となるのは資金だけではない。あらゆる物資が支援の対象となる。しかしそうした物品の援助でも多くの中間組織が介入しており、信頼性のない組織によってせっかくの支援物資が目的地に届く前に盗まれてしまうこともある。

これを防止するのは、IoTのセンサーを援助物資に組み込み、ブロックチェーンでトラッキングする方法だ。この方法を活用すると、たとえ援助物資が輸送途中で盗まれたとしても、どの経路でいつ盗まれたのか明確に把握できる。

このIoTのトラッキングシステムによる透明性が、援助物資盗難の防止になるはずだ。

Next: うまく機能しなかった例も。投資対象となる有力なプロジェクトは?



うまく行かなかった早期の例

このように、ブロックチェーンの慈善事業分野への適用には無視できないメリットがある。そのため、ブロックチェーンがテクノロジーとして注目されはじめた当初から、この分野への応用は始まっている。しかしながら、そうした早期の応用はあまりうまく行かなかった

失敗したわけではないが、予想したほど注目を集めなかったプロジェクトにイギリスの「王立救命艇協会(RNLI)」がある。ここは、イギリスとアイルランド周辺の沿岸や海における救命活動を行っている組織だ。

早くも2014年からビットコインによる寄付を受け付けたものの、思うように寄付は集まらなかった。「王立救命艇協会」の管理者によると、その理由は、2014年当時ではビットコインにはダークなイメージが付きまとい、チャリティーに集まる多くの人々が警戒したからだという。そうした残念な状況にもかかわらず、「王立救命艇協会」はいまでもビットコインによる寄付は受け付けている。

一方、2016年前後からの相場の急上昇によるビットコインの認知度の高まりから、ビットコインによる寄付は拡大している。現在は「赤十字社」や「セーブ・ザ・チルドレン」のような最大手の慈善団体もビットコインの寄付を受け付けている。慈善団体、「フィデリティー・チャリタブル」は、2017年にはビットコインで6,900万ドルを集めた。2015年度と2016年度を合わせた金額は700万ドルだったので、これは予想を越えた増加だ。

注目されているプロジェクト

このような慈善事業における仮想通貨とブロックチェーンの適用だが、すでに先進的なプロジェクトがいくつかスタートしている。それら、既存のプロジェクトを紹介しよう。

最初は、「クラウドファンディング」で慈善事業のために資金調達するプラットフォームだ。一般的に寄付はビットコインで行われている。

様々な団体にビットコインで寄付:ビットホープ(BitHope)

公式サイト:https://bithope.org/
ホープコインの相場:https://www.coinexchange.io/market/HOPE/BTC

ビットホープはさまざまな慈善事業にビットコインで寄付をするためのクラウドファンディングのプラットフォームだ。ここにアクセスするだけで、多くの慈善事業に同時に寄付ができる。

寄付をするとホープコイン(Hopecoin)というトークンが配布される。これは、複数の慈善団体が作るマーケットプレイスでサービスや物品を購入するために使うことも可能だし、また将来は仮想通貨市場に上場するかもしれない。すると、投資の対象になる。

Next: まだまだある。慈善事業分野で有望なICO・プロジェクトたち



寄付金の追跡が可能:ビットギブ(BitGive)

公式サイト:https://www.bitgivefoundation.org/

ここも、多くの慈善事業にビットコインで寄付ができるプラットフォーム。2013年というもっとも早い時期にスタートしたいわば老舗のプロジェクト。寄付の追跡が可能なトラッキングのプラットフォーム、「ギブトラック(GiveTrack)」を運営している。

自分の貢献度がわかる:アリス(Alice)

公式サイト:https://alicecharity.com/

プログラムの自動実行機能を実装するイーサリアムのブロックチェーンをベースにしたプラットフォーム。クラウドファンディングのプラットフォームなので、ここに登録してある複数のプロジェクトに寄付ができる。寄付がどのように使われたのか、トラッキングすることができる。

また、アリスのブロックチェーンにはAIが内蔵されているようで、自分の行った寄付がどのくらい慈善事業に貢献したのかを評価するシステムを持っている。その結果、透明度と信頼性がいっそう高い寄付が可能となる。また、寄付をした慈善事業が目標の達成ができなかった場合、寄付の払い戻しを請求することもできる。

いまのところ、独自のトークンの発行は行っていないが、将来期待できるかもしれない。

寄付専用の独自トークンを発行:チャリティートークン(Charity Token)

公式サイト:https://charitytokenonline.com/
チャリティートークンの相場:https://www.livecoinwatch.com/price/CharityToken-CHT

慈善事業には寄付専用の独自のトークンを発行し、少額からの寄付を促進するためのプロジェクトもある。

チャリティートークンはその典型的なものである。これは、スマートコントラクトのイーサリアムのブロックチェーンに準拠したERC2.0の仕様に準拠したトークンだ。さまざまな慈善事業がこれを受け付けている。

チャリティートークンは上場しており、市場で購入することができる。一般の仮想通貨と同じように、日々相場は変動している。

Next: 中間組織はもう要らない。寄付金を必要な地域と人々に確実に届けられる



安全な水を届ける:クリーン・ウォーターコイン

公式サイト:http://www.cleanwatercoin.org/
WATERの相場:https://coinmarketcap.com/currencies/cleanwatercoin/

低開発諸国に安全な水の供給を行うために特化したプロジェクト。安全な井戸の掘削や、浄水器の提供を行っている。

ここは、クリーン・ウォーター(WATER)を市場に上場している。購入したトークンのWATERは、ユーザーの専用ウォーレットに保管される。すると、決められた一定の割合のWATERが自動的に慈善事業に寄付される仕組みだ。そのようにして得られた資金をもとにして、水の浄化プロジェクトが実施されている。

日本でも人気。取引額に応じて自動的に寄付:●●●

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ブロックチェーンと仮想通貨の力を発揮

これが慈善事業におけるブロックチェーンと仮想通貨適用の概要である。

いま世界的なネットワークを持つ大規模な慈善事業も多いようだが、やはり支援金や援助物資を必要とする人々に確実に届けるためには、多くの中間組織を経由しなければならないのが現状だ。

そうした組織のなかには、信頼度が低く、せっかくの支援金や援助物資を横流しするか、掠め取る団体も多くあるようだ。こうした怪しい中間組織を排除して、どうやって確実に目的地に届けるかが、これまではどの慈善事業でも大きな課題になっていた。

一方、ブロックチェーンと仮想通貨の特徴は、中間組織を経由することなく、ピアツーピアで人々を結ぶネットワークの構築が可能になることである。その結果、慈善事業でも怪しい中間組織を排除し、必要な地域と人々に確実に届けることができる。

次回は慈善事業におけるICOを一挙に紹介する。注目度の高いものも多い。

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※本記事は有料メルマガ『ヤスの第四次産業革命とブロックチェーン』2018年7月10日号の一部抜粋です。ご興味をお持ちの方はぜひこの機会にバックナンバー含め今月分すべて無料のお試し購読をどうぞ。

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ヤスの第四次産業革命とブロックチェーン』(2018年7月10日号)より一部抜粋
※太字はMONEY VOICE編集部による

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ヤスの第四次産業革命とブロックチェーン

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昨年から今年にかけて仮想通貨の高騰に私たちは熱狂しました。しかしいま、各国の規制の強化が背景となり、仮想通貨の相場は下落しています。仮想通貨の将来性に否定的な意見が多くなっています。しかしいま、ブロックチェーンのテクノロジーを基礎にした第四次産業革命が起こりつつあります。こうした支店から仮想通貨を見ると、これから有望なコインが見えてきます。毎月、ブロックチェーンが適用される分野を毎回紹介します。

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