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億り人は株価暴落でほくそ笑む。いつでも買いに動ける「元手」を貯める秘策とは?=栫井駿介

長期投資で「億り人」になった人は、どのような経緯で実現できたのでしょう。今回は、億の資産をつくるために必要な準備について解説。つばめ投資顧問代表・証券アナリストとして活躍し、マネーボイスの人気著者でもある栫井駿介氏の連載『誰でもバフェット投資術 ~ バイ・アンド・ホールドで人生100年時代の資産を築く』第6回をお届けします。

プロフィール:栫井駿介(かこいしゅんすけ)
株式投資アドバイザー、証券アナリスト。1986年、鹿児島県生まれ。県立鶴丸高校、東京大学経済学部卒業。大手証券会社にて投資銀行業務に従事した後、2016年に独立しつばめ投資顧問設立。2011年、証券アナリスト第2次レベル試験合格。2015年、大前研一氏が主宰するBOND-BBTプログラムにてMBA取得。

できるだけたくさん投資するために、とにかく元手を確保せよ!

元手もなしに億り人を目指すのは、勉強せずに東大を目指すのと同じ

投資で成功する秘訣とは何でしょうか。投資に関する本を眺めてみても書かれていることは千差万別であり、いまだ完璧な方法は見つかっていないようです。

ただし、少なくとも長期投資において成功するための必要条件があるとすれば、それは元手がなければ資産を大きくすることはできないということです。株式投資はいくらからでも始められますが、10万円をいきなり1億円にするのは限りなく不可能に近いと言えるでしょう。

投資で一億円以上の資産を築いた「億り人」と呼ばれる人たちも、すべからくかなりの元手を準備して投資を行っています。元手もなしに「資産が増えない」と嘆くことは、勉強せずに東大に受かりたいと言っているようなものです。

「四分の一投資法」で元手を貯める

そんなことを言ったら自分はお金持ちとは縁がないと諦めてしまう人もいるかもしれませんが、それは違います。あなたに平均程度の収入があれば、今からでも努力次第で億万長者を目指すことはできます。

明治から昭和を生きた本多静六という大学教授がいました。彼は一介の勤め人である大学教授という立場でありながら、現在の価値にして数百億円の資産を築いたことで有名です。決して裕福な家庭で育ったわけではなく、むしろ多くの家族・親戚を養わなければならなかったことから貧乏生活を送っていました。

貧乏な生活を抜け出すために彼は一念発起し、収入の四分の一を投資のための元手に貯めることを決心しました。これを務めはじめから行っていますから、大卒初任給を基準にすると、月収20万円のうち5万円を貯蓄し、残りの15万円で生活していたということです。

現代の平均的な年収を400万円とすると、四分の一投資法を実践すれば毎年100万円を投資に回すことができます。逆に考えると、残りの300万円で1年間をすごせればそれなりの元手を貯めることができると言えるでしょう。

Next: 実際に投資をはじめる前に、まず確認しておくべきこととは



自分の「損益計算書」と「貸借対照表」を整理する

あなたは年間いくらの支出で生活しているでしょうか。それを計算することからあなたの億万長者への道のりは始まります。全く貯蓄ができていないのであれば、年収と支出がほぼイコールの状態です。もちろんそのままで資産を増やすことはできません。

どの支出を減らせるかを考えてみましょう。スーパーで特売品を探すことも必要ですが、それよりもまず考えるべきは毎月決まって出ていく固定費です。

例えば、不要な生命保険に入ってはいないでしょうか。日本は社会保障が充実している国ですから、医療保険はあまり必要でない場合が少なくありません。

固定費は毎月出て行くお金だけではありません。大きな買い物である家や自動車も、月にならして考えてみる必要があります。

例えば300万円の自動車を買ったとして、それを10年乗れば1か月の固定費は単純に2万5,000円です。税金やガソリン代、駐車場代を考えると、3万円は下らないでしょう。特に都会に住んでいる人は、車の必要性について改めて考えるべきです。

ちなみに私は車は一人一台が当たり前の田舎に住んでいますが、夫婦で一台で済ませています。私は自宅を事務所としているから毎日外出する必要はなく、もし車が必要になった場合でもタクシーを使った方が支出を抑えられるからです。タクシーに週1回5,000円を使ったとしても、月4回なら2万円であり、車を買うより支出を抑えられます。このように、それぞれの状況に応じて固定費の削減を考えることが必要なのです。

自分の資産も見直して、不要なものは処分を

固定費の削減を積み上げていくと年収の四分の一を投資に回すことは決して不可能ではないはずです。収入のある人が投資で成功するには、まず支出を減らすことを考えなければなりません

収入以外から元手が生まれる場合もあります。例えば、あちこちに分散した銀行口座を一つにまとめるだけでも、自分がどれだけの資金を持っていて、どのくらいは投資に回せそうか改めて考える機会になります。支出と同様に、資産をいくら持っているか把握することも不可欠な一歩です。

資産は銀行預金だけではありません。例えば、昔買った高価な指輪も、今はつけないとしたら売却の対象となります。今はメルカリなどのサービスを使えばどんなものでも現金化できます。古い携帯電話でも、1万円以上の金額で売れることもあります。

こうして、自分の「損益計算書」と「貸借対照表」を整理することが、投資で成功するための第一歩になるのです。

Next: 資金作りがしっかりとできたら、次に取り組むべきことは…



年間の「投資予算」を決めて、下がった時にだけ投資する

自分の経済状況を把握したら年間の「投資予算」を決めることをおすすめします。毎年100万円の貯蓄が生まれるひとなら投資予算は100万円ですし、資産が1,000万円ある人は、それを5年に分割して200万円に設定すると良いでしょう。

予算を設定することで、生活に支障が出ない範囲で投資することができ、かつ投資のチャンスがあれば躊躇なく投資に踏み切ることができます。また、まとまった資金を分割して投資するのは、割高なタイミングで資金を使い果たしてしまうリスクを回避するためです。

予算を設定しても、いつでも投資していいというわけではありません。投資すべきタイミングは、株価が下がった時です。例えば2018年は2月や10月に大きく下がる局面が現れました。多くの人が下落を恐れて売ってしまいますが、賢明な投資家はそのような時こそしたたかに買いを入れるのです。

日経平均株価 日足(SBI証券提供)

【参考】長期投資は安くなった時だけ買えばいい!ミスター・マーケットの呼びかけには無視を=栫井駿介

逆に言えばそれ以外の時は特に何もする必要はありません。どんなタイミングでも無理に投資することは、長期投資では決して賢いこととは言えないのです。上昇局面で浮かれている投資家がいたとしても、下落局面で大きく損をしているのであまり気にする必要はありません。

まとまった資金のある人は、遊んでいるお金がもったいない気がして落ち着かないかもしれません。それでも私は、まとまったお金のある人こそ、時間分散・銘柄分散で資産を守るべきだと考えます。

どうしても投資したいと言うなら、株価が下がったタイミングでの高配当株への投資をお勧めします。毎年安定した配当を得ることができますし、配当そのものが株価の下支え効果を生みます。大切なのは減配しにくい銘柄を選ぶことで、これは過去の配当推移を見れば類推することができます。

例えば、同じ高配当利回り株でも日産自動車はリーマン・ショックでは無配に転落しましたが、NTTドコモは上場以降減配がありません。配当目的ではどちらに投資すべきかは明らかでしょう

Next: 長期投資をするにあたって一番大切なこと



長期投資では、買ってすぐは値下がりのことも

バイ・アンド・ホールドにおける長期投資は、ひたすら買い増していくものです。買ったり売ったりを繰り返す「トレード」ではなく、貯金のようにコツコツ積み上げる「貯株」の発想と言えるでしょう。予算の範囲内で、株価が下がったタイミングで最も良いと思える銘柄買い、あとは細かい株価の動きを気にせずに持ち続けるのみです。

もっとも、この方法は買ってすぐ大きな利益が出るというものではありません。むしろ、下がっている株に投資するため、どちらかと言えば買ってすぐは値下がりすることの方が多いとも言えます。それでもこの手法を勧めるのは、長い目で見たときにプラスになる可能性が高いからです。

割安な価格で良い株を買っていれば、その時市場から見放されていたとしても、きちんと利益が出ている企業にはやがて市場がその価値に気が付く時がやってきます。いつになるかは神のみぞ知りますが、それまでにできるだけ多く仕込んでいることが資産を増やすことにつながるのです。

最近で言えば、2013年からのアベノミクス相場が市場が価値に気づいたタイミングです。この相場で「億り人」となった人の大半は、2008年からのリーマン・ショック後の株価低迷期にも、コツコツと投資を続けてきた人たちなのです。

日経平均株価 月足(SBI証券提供)

相場の動きを気にせず、株価低迷期も予算通りに投資を進めていれば、相場の上昇局面で大きく資産を伸ばすことができます。逆に言えば、それまでは全く成果が出なくても問題ないのです。相場の上げ下げを予想することは困難を極めますから、私たちができることはコツコツと割安な株を買い続けることに尽きるのです。

投資をしても大して儲からないと思っている人は、十分な資金を投じていないことがほとんどです。まずは自らの家計を見直して、無駄な支出を省いて元手を確保することから始めましょう。

資産を作るための方程式は「(収入-支出)×投資×時間」です。収入を増やして支出を減らし、株価が下がったタイミングで良い銘柄に投資していれば、長い時間を経て必ず資産は膨れ上がっているでしょう。これを徹底すれば、将来の「億り人」も夢ではないのです。

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本記事は『マネーボイス』のための書き下ろしです(2018年12月19日)
※太字はMONEY VOICE編集部による

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