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香港人権法成立でも米中関係は悪化せず? 2020年、世界景気に追い風が吹く=近藤駿介

香港人権・民主主義法案はトランプの署名で成立した。中国は即時に報復の意向を示したが、裏では米国とディールしている可能性が高い。市場はどう動くだろうか。(『元ファンドマネージャー近藤駿介の現場感覚』近藤駿介)

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プロフィール:近藤駿介(こんどうしゅんすけ)
ファンドマネージャー、ストラテジストとして金融市場で20年以上の実戦経験。評論活動の傍ら国会議員政策顧問などを歴任。教科書的な評論・解説ではなく、市場参加者の肌感覚を伝える無料メルマガに加え、有料版『元ファンドマネージャー近藤駿介の現場感覚』を好評配信中。著書に、平成バブル崩壊のメカニズムを分析した『1989年12月29日、日経平均3万8915円』(河出書房新社)など。

米中貿易協議「部分合意」は近い?考えられる今後のシナリオとは

「香港人権・民主主義法案」は成立へ

注目されていた「香港人権・民主主義法案」は、感謝祭前日の27日にトランプ大統領が署名して成立した。

20日にトランプ大統領に送付されたこの法案は、10日以内に大統領が拒否権を発動するか、署名するかのどちらかであった。

トランプ大統領には拒否権を発動するという選択肢もあったが、上院で全会一致、下院でも反対票が1票と党派を超えて圧倒的多数で成立した法案に拒否権を発動しても、上下両院でそれぞれ3分の2以上の賛成で法案が成立してしまい、議会に屈した格好になることから無用な戦いを避けて法案に署名するという選択をしたと思われる。

問題は、この法案にトランプ大統領が署名すれば、中国政府が反発し、「部分合意」間近と思われていた米中貿易交渉が先送りになる可能性があったことだ。

株式市場を闊歩する「バッドニュース」

実際に歯切れは悪かったものの、中国政府は法案が成立した直後に報復措置を取る意思を示した

法案に署名すれば中国が報復措置に出ることは、トランプ大統領は当然想定していたはずである。こうした事態は「部分合意」に向かっている米中間の対立構造を再び作り出すものであり、最高値を更新している株式市場にはGood Newsではない

大統領選挙前に株価を高い水準に保っておきたいトランプ大統領にとってこのタイミングで「香港人権・民主主義法案」の署名を迫られるのは避けたかったはずである。

署名する以外の選択肢がないとしたら、このBad Newsの株式市場への悪影響を打消すためには、「部分合意」といったGood Newsとセットにするのが自然である。

このところ「部分合意」を匂わせるような動きが報じられてきたのも、こうした流れによるものだったのかもしれない。

しかし、結果としてトランプ大統領が「香港人権・民主主義法案」に署名をする前に「部分合意」に達することは出来なかった。これを受けて週末の米国株式市場は利食い売りに押される結果となった。

Next: 株式市場に波乱を起こす2つの要因とは? 株高を維持できるかは12月次第



株高を維持できるかは12月次第

11月まではヘッジファンドの解約に基づく買い戻しなど需給要因が株価の追い風となった。そして、年明けからは年金資金を中心としたポートフォリオ運用をする投資家によるインデックス需要が期待されるため、株式市場が堅調さを維持できるかは12月次第といえる状況である。

12月の株式市場に波乱を起こすとしたら、その要因となりそうなのは長期金利米中貿易交渉の行方である。

「予防的利下げ」に終止符を打ったFRBはバランスシート再拡大に踏み出したが、FRBはあくまでこれは短期金融市場の混乱を抑えるためのテクニカルな措置であり金融緩和政策ではないという立場をとっている。TB(短期国債)を使ったバランスシート再拡大政策はこれまでのQEと異なりFRBが長期金利の低下に直接働きかけるものではなく、長期金利には上昇圧力が掛かりやすくなっている。

ここに来て世界的に景気悪化に歯止めがかかり始めている兆候があるうえ、金融政策が限界に来ている欧州が財政政策に向かう可能性が高くなってくるなど、まだ先のこととはいえ政策的な変化によって今後は長期金利に上昇圧力が掛かりやすくなることが想像される。

また、12月は金融機関の決算期にもあたりドル需要が強まる時期でもある。こうした季節要因も加わってか、為替市場ではFRBがバランスシート再拡大政策を採用してからもドル指数は高止まりしている。幸い経済指標が堅調さを見せる中でもインフレは依然として目標水準を下回っており長期金利上昇を招くには至っていない。

長期金利上昇の火種は出始めているものの、暫くの間長期金利上昇の危険性が高くないとしたら、市場の波乱要因となるのは米中貿易交渉の動向ということになる。

米中貿易交渉が市場の命運を握る

大統領選挙は、2020年2月3日のアイオワ州党員集会でスタートする。

アイオワ州がスイングステートといわれトランプ大統領誕生の原動力となったラストベルトの一角でもあることを考えれば、トランプ大統領はアイオワ州の党員集会までは米中貿易交渉での成果をアピールし株価を高く保っておきたいはずである。

こうしたことを考えると、中国とのネゴシエーションなしに「香港人権・民主主義法案」に署名したとは考えにくい

記者会見で米国への報復措置を明言した中国外務省の報道官が、「いつ・どのような報復するのか」という記者からの問いに約5秒間沈黙したのも、中国側が有効な報復手段を持っていないことを露呈するとともに、米国側と何かしらのディールがなされていることを感じさせるものでもある。

Next: 米中貿易協議「部分合意」は近い? 考えられる今後のシナリオとは



年明け、株式市場に追い風が吹く?

可能性のあるシナリオとして考えられるのは、「部分合意」が近いという理由で、12月15日に発動される予定になっている制裁関税第4弾を先送りされることである。

金融市場、特に株式市場にとって、相手が誰であろうと、トランプ大統領の敗北は足元での最大のリスクである。

米中貿易交渉の「部分合意」や制裁関税の先送りなどを駆使して12月を乗り切れば、1月は株式市場には季節的需給要因という追い風が吹く可能性が高い。

しかし、この季節風はアイオワ州の党員集会で敗北するようなことがあれば冷たい逆風に転じる可能性があることには注意が必要そうだ。

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2019年12月配信分
  • 香港人権・民主主義法案署名の影響(12/2)

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image by:Evan El-Amin / Shutterstock.com

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元ファンドマネージャー近藤駿介の現場感覚』(2019年12月2日号)より一部抜粋
※記事タイトル、本文見出し、太字はMONEY VOICE編集部による

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