かんぽ生命・日本郵便による保険の不正販売問題で、金融庁は3ヶ月の業務停止処分を検討しています。しかし完全に組織犯罪の域で、これは廃業にすべき状況です。(『今市太郎の戦略的FX投資』今市太郎)
※本記事は有料メルマガ『今市太郎の戦略的FX投資』2019年12月23日号の抜粋です。興味を持たれた方は、ぜひこの機会にバッグナンバー含め初月分無料のお試し購読をどうぞ。
そもそも高齢者は医療保険だけで十分。利益優先の組織的犯罪か
ほぼ組織詐欺的なセールス
ゆうちょ銀行やかんぽ生命といえば、金融市場ではかなりの一翼を担う「機関投資家」というイメージが強いです。
しかし、昨年から繰り広げられている顧客向けのほぼ組織詐欺的なセールスを見ていますと、もはや民間として存続すべき内容ではないことを強く感じさせられます。
今年7月にこのメルマガでも取り上げましたが、現状は業務停止の域を超えて、完全に民間企業として生き残れない、極めてクリティカルな状況に陥っていることがわかります。
簡易保険の実績を悪用し、日本政府・日本郵政公社時代のイメージを利用した悪徳商法
もともと郵政公社というのは、長く「簡易保険」と呼ばれる生命保険事業を実に1916年10月から行っており、医師の診断や職業上の制約がないという極めて特殊な保険の販売を延々と続けてきた実績があります。
もちろん加入制約がないことから、契約可能な保険金額は民間の保険に比べるとかなり過少なものであったことは事実です。
それこそ夜の仕事をしていても、スタントマンでも、暴力団でも、皆が加入できるのが大きな妙味です。
黒い鞄をもった郵便局の人間が毎月掛け金を徴収するといった行為が長く続いたことから、高齢な国民にとっては非常に安心感のある存在として定着してきた実績があります。
しかし実際は、郵政民営化後は、それ以前に契約されたものは独立行政法人郵便貯金・簡易生命保険管理機構が管理しており、かんぽ生命とはなんの関係もない存在となっているのです。
それにもかかわらず、かんぽ生命は、これまでのこうした無形のブランドイメージをうまいこと使いながら、高齢者を相手にして悪どいビジネスを続けてきたことがここへきて一気にバレてしまったというのが現状です。
Next: そもそも高齢者は医療保険だけで十分。かんぽ生命は何をしでかしたのか…
そもそも高齢者が積極的に入るべき保険は医療保険ぐらいしかない
もともと日本は、世界的に見ても生命保険に加入する個人が極めて多いことでも知られています。
年齢の変化とともに加入すべき保険は、健常者だけが加入できる保険との乖離が徐々に広がりを見えているのが現状です。
しかも、高齢者が加入すべき保険は、死亡保険ではなく、医療保険など非常に限られたものしか効力を発揮しないのが実情となっています。
しかし、今回のかんぽ生命の無茶苦茶セールスでは、新規契約者の7割以上が60歳以上という、ある意味常軌を逸した内容になっています。
不必要な契約を特定の高齢者が数十件も加入するという、典型的な詐欺状態が横行していたことがわかりはじめています。
「桜を見る会」にマルチ商法の親玉を招待していた云々の話が問題になっていますが、このかんぽ生命の商売はあきらかに違法行為であり、およそ公社が民営化してまでやるようなものではないことが明確になってきています。
被害者は40万人以上? 自前の調査委員会では1万2,800件としているが…
かんぽ生命の保険の不適切な販売問題を調査してきた外部の弁護士による特別調査委員会は、12月18日に調査報告書を公表。
法令や社内ルールに違反する疑いのある販売が、これまでに1万2,800件あまり確認されたことを明らかにしています。
その一方で、12月中旬の時点で保険料の返還や契約復元など何らかの対応が必要な苦情は40万件に及んでいるとされ、泥棒が自分で開いている調査委員会などでは本当のことがさっぱりわからない状況に陥っています。
クリントン元米大統領がモニカ・ルインスキーさんとホワイトハウスで不貞行為に耽っていたことが露見してから、「不適切」などという中途半端な言い方が社会的にすっかり定着しました。
しかし、これは早い話、不法・脱法・コンプライアンス違反の重大な事案であり、「適切ではない」などと社会的影響力の低い言い方をすべきものではまったくありません。
3,000万件、1,900万人におよぶ全契約者から考えれば結構少ない数字に見えますが、そもそも生命保険なるものはそんなに苦情の出るような商品ではなく、民間の生保が受ける苦情件数をはるかに上回るかなり大きな規模であることがわかります。
Next: ペナルティは3ヶ月の業務停止だけ? 民間生保なら廃業レベルか…
3ヶ月の業務停止だけ?
金融庁は、保険業法違反で3か月の業務停止を考えているようです。
その内容を、現職の総務事務次官が、元の総務事務次官で現在日本郵政の副社長でNHKに対して「暴力団のような取材である」とクレームをつけた人物に情報漏洩したというのですから、役人の負のスパイラルも止まるところを知らない状況になってしまっていることがわかります。
※参考:日本郵政のドン 漏えい先の鈴木上級副社長―総務事務次官更迭 – 時事ドットコム(2019年12月20日配信)
政府主導・掟破りの親子上場だが、ぜんぜん復興財源確保にはつながらない
政府は、郵政株の持ち株比率を、現状の57%から郵政民営化法の規定する3分の1超に下げることを2019年4月には発表し、本来であれば、今年の8月から遅くとも10月までには売却することを考えていたようです。
しかし、この問題が明るみに出てからは、ほとんど売却できる状況ではなくなっており、株式市場では掟破りの「親子上場」の株のゆうちょ銀行とかんぽ生命の全株売買を目指すとした姿勢もどこかへ消え失せている状況です。
もともとは、この株売却で1.2兆円あまりの復興財源を確保する予定だったのでしょうが、足元の株価ではまったく実現不可能で、逆に今株を放出しても、株価はさらに下落しかねないところに陥っています。
問題が起きるとすべてのデータをねつ造・隠蔽・廃棄する世界的にも稀有なシュレッダー内閣は、恐らくトップだけ首切りをして、言うことを聞く役人をトップに据えてほとぼりがさめるのを待つつもりなのでしょう。
こんな企業の株の売却に固執しても、すでにまったく市場価値のない事業の株を市場に出すこと自体がきわめて不誠実な姿勢になると考えられ、即刻中止すべき状況です。
もちろん、今の状態では中止せざるをえない訳ですが…。
組織犯罪レベルから言えば、民間生保なら廃業が正しい措置
通常、保険に関しては募集人と呼ばれる、いわゆるセールスとともに保険を引き受けるかどうかを判断するアンダーライターと呼ばれる職種もあり、高齢者が複数、しかもひとりで数十件も保険に加入するというのは明らかにおかしいものとして、詳細のチェックをすることが求められています。
確かにどの民間生保でも、問題のある募集人が発生してクビになるようなケースはないわけではありません。
しかし、今回のかんぽ・ゆうちょの店頭販売における問題は、そんな生易しいものではなく、完全に組織犯罪の域に達しているものと言えます。
過去2005年頃、不払い問題で金融庁から厳しい指摘を受けた民間の生損保(生命保険会社と損害保険会社)では、いわゆる「POS」と呼ばれる引き受け後の支払いを担当する責任部門の人間は、社内コンプライアンス違反を理由に、金融庁からの厳しい圧力で相当数が辞職に追い込まれています。
ですが、今回のケースでは個別の問題人材の募集人資格はく奪どころではなく、企業として廃業にすべき状況にあることは間違いありません。
Next: 同じ問題がまた起きる? 日本はどこまで腐りきってしまったのか…
同じ問題がまた起きる?
3か月の業務停止命令だけでやり過ごせば、また同じ問題が起きることは間違いなく、国の姿勢もまったくもって腐りきっていると言わざるを得ない状況です。
いったいこの国は、どうしてここまで腐りきってしまったのでしょうか。
開いた口がふさがらないとは、まさにこのことを言うような状態に陥っています。
事業実態がこのありさまでは、ゆうちょやかんぽなどが機関投資家としてまともに機能するなどとはおよそ思えない酷いところにあることを、我々個人投資家もしっかり認識しなくてはなりません。
民営化から、まもなく13年の月日が経過します。こんな日本を代表するブラック企業になることが民営化の目的だったのでしょうか。
一定期間の業務停止ではなく、事業とりつぶしが、本来の国民に対する真摯な対応になるのではないかと強く思う次第です。
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- ブラック企業になるために民営化したのか?かんぽ生命は廃業すべきレベルの犯罪企業(12/23)
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『今市太郎の戦略的FX投資』(2019年12月23日号)より抜粋
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