日本のサラリーマンがグローバル化を意識するようになったのは、日本の企業がことごとくグローバル化によって叩きのめされ、自分たちの首が絞まるようになっていったからである。そんな中で、2020年にはコロナショックが襲いかかっている。企業は生き残るためにより利益重視となる。同時に、雇用はますます厳しい世界へと突き進んでいくことになる。(『鈴木傾城の「ダークネス」メルマガ編』)
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プロフィール:鈴木傾城(すずき けいせい)
作家、アルファブロガー。政治・経済分野に精通し、様々な事件や事象を取りあげるブログ「ダークネス」、アジアの闇をテーマにしたブログ「ブラックアジア」、主にアメリカ株式を中心に投資全般を扱ったブログ「フルインベスト」を運営している。
グローバル化によって首が絞まった企業
中国発コロナウイルスによって最悪の景気悪化に見舞われ、企業は非正規雇用者を雇わなくなっているのだが、景気が悪化すれば終身雇用で雇っていたはずの社員もまたリストラされることになる。
コロナ禍の前からすでに日本企業は終身雇用を否定するようになっていた。それは、日本もまたグローバル化の波に巻き込まれていったからだ。
では、会社はどのようにグローバル化の波に巻き込まれていったのか。まず、世界中が安い製品を欲しがるようになり、日本企業も否応なしに海外の「安価な製品」と戦わなければならないようになった。
安価な製品を作るためには、人件費の安い海外の労働者を使う必要が出てきて、生産拠点を「海外」に作るようになった。
さらにグローバル化が加速していくと、日本人の社員を高賃金で雇っておくことも難しくなった。そこで、日本人を非正規労働に置き換えたり、雇わなくなったりし始めた。
それでも、グローバル競争は止まらず、やがて高コスト体質の日本企業は世界と戦えなくなって、どんどんリストラが始まるようになった。
日本のサラリーマンがグローバル化を意識するようになったのは、日本の企業がことごとくグローバル化によって叩きのめされ、自分たちの首が絞まるようになっていったからである。
そんな中で、2020年にはコロナショックが襲いかかっている。企業は生き残るためにより利益重視となる。同時に、雇用はますます厳しい世界へと突き進んでいくことになる。
高コストの正社員を抱えすぎという日本企業の実態
今、日本企業はROE(株主資本利益率)を目指すようになっている。
日本企業は今でも高コスト体質であるのは、企業のROE(株主資本利益率)を見れば、異様に低い水準であることからも分かる。
日本の株式市場がいつも取り残されるのは、別に世界が日本を嫌っているわけではなく、日本企業に投資しようと思っても、あまりにROE(株主資本利益率)が低すぎて、話にならないからでもある。
日本企業はもっと利益率を上げろと言われ続けてきて、それができなかった。コスト改善をしなければならないという命題を株主に突きつけられて、まだ、それに応えられていない。
そんな企業ばかりだから、日本の株式市場は見捨てられており、いまだに株式市場もバブル期の3万8,957円を超えることができない状態になっている。
なぜ日本の会社の利益率が低いのかというと、それが「高コストの正社員を抱えすぎだ」という話につながっていく。
途上国で6万円程度で働いている一流大学卒の人間と、日本で24万円で働いている普通の人間とでは、それだけで4倍の差になる。
日本企業が生き残るためには超特大ヒット製品を出すか、社員の給料をもっと劇的に下げるか、社員を極限まで削るかしかない。
ROE経営は株主優先であり社員はコストとなる。そのため、最終的に行き着くのは社員の給料下げかリストラである。
東芝がROE経営を重視するというのは、つまるところリストラが容赦なく行われて社員というコストが減らされるところに向かうのは必然だ。サラリーマンを切り捨てる経営が明確に始まっている。
Next: 今後、ROE経営が普通になることによって、サラリーマンの多くは使い捨て――
「会社は社員のものだ」と言う無邪気な人
今後、ROE経営が普通になることによって、今のサラリーマンの多くは使い捨ての「労働者」になる。労働者だから、出世もなく、年功序列もなく、福利厚生も、生活保障も削減されていく。
いまだにサラリーマンでいることにこだわる人もいるようだが、もう無駄だ。
サラリーマンという働き方に、未来を託すような要素はどこにもない。正社員も勝ち組ではない。給料も減らされる。使い物にならなくなると、リストラの対象になる。
「会社は社員のものか、株主のものか」という議論があったとき、日本では「会社は社員のもの」だと言う無邪気な人が多かった。
しかし、それが完全に間違いであることは、やっと誰もが気付いたようだ。サラリーマンが単なる使い捨ての労働者になりつつある今、誰が「会社は社員のもの」と言えるのだろう。
会社は明確に「株主のもの」
現実を見ると、会社は明確に「株主のもの」である。
株主が資金を出して会社を存続させている。株主が経営者に投資のリターン(利益)を生むように依頼し、経営者はそれに応えるために社員を雇い、社員は言われた通りに働く。
この一連の流れの中で、なぜ「会社は社員のもの」という発想が出てくるのか分からない。今まで日本人は終身雇用が保障されていたので、勘違いしてしまった部分もあったのだろう。
しかし、終身雇用どころか、リストラが当たり前になった時代では、もう長く働いた正社員でさえ「会社は社員のもの」と無邪気に思わなくなっている。
やっと、サラリーマンは自分の立場に目が覚めたと言うことができる。
能力主義はリストラのツールとして使われる?
ROE経営がこれからも進んで行くということは、ますます日本人の労働環境は不安定化していく。コロナ禍はそれを加速させていく。かろうじて維持されている終身雇用、年功序列というシステムは死ぬ。
労働者は使い捨てになり、正社員は年功序列ではなく能力主義で評価されることになる。
ところでこの能力主義だが、年功序列が残っている企業でこれが取り入れられると悲惨なツールになることが知られている。能力主義は、能力をある人間を抜擢するという目的ではなく、リストラのツールとして使われるようになるのである。
会社はコストを削減するために、要らない人間からクビにしたいと思っている。
そこで能力主義を利用する。要するに要らない人間を「能力が足りない」という理由付けで排除にするのだ。
会社が本人の適正でないところに無理やり回して「能力が足りない」と言ってクビにすることもできるようになる。死ぬほど働いても、売上に結びつかないとやはり「能力ゼロ」とみなされる。
成果が出たらどうなのか。それでも、他にもっと成果を出した人間がいると、やはり「能力ゼロ」と言われる。
つまり、会社がその気になったら、誰が何をやっても能力ゼロになる。それが能力主義の使われ方となる。
Next: サラリーマンで生きるべき時代は、もうとっくの昔に終わっている。資格を――
サラリーマンは身の振り方を考える時期に来ている
サラリーマンで生きるべき時代は、もうとっくの昔に終わっている。資格を取ろうが、残業しようが、ゴマをすろうが、そんなものは何の慰めにもならない。
生き残れるかどうかは会社の財務状況で決まるのだ。
日本人の8割はサラリーマンなのだから、日本人の8割は今後の身の振り方を考える必要がある。自分はどのように生きるのか、必死で模索しなければならない。
人それぞれ何が向いているのかは自分で捜さなければならないのだから、それを他人に聞いても無駄だ。自分の人生を、自分で切り拓く時が来ている。
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本記事は『マネーボイス』のための書き下ろしです(2020年7月9日)
※タイトル・見出しはMONEY VOICE編集部による
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