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消費税“減税”解散に騙されるな。年金破綻+増税の倍返しに注意せよ=原彰宏

いよいよ政局との報道もあります。消費税減税で選挙は戦うのでしょうが、政治家が口には出さない「消費減税とセットで増税がある」という点を覚悟しておいたほうが良いでしょう。(『らぽーる・マガジン』原彰宏)

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※本記事は、『らぽーる・マガジン』 2020年8月24日号の一部抜粋です。ご興味を持たれた方はぜひこの機会に今月すべて無料のお試し購読をどうぞ。

ここからさらに消費は落ち込んでいく

内閣府が8月17日に発表した2020年4〜6月期GDP(国内総生産)速報値は、7.8%のマイナスと発表されました。同じペースが1年続くと仮定した年率換算では前期比27.8%減となり、戦後最悪のマイナス幅を記録。新型コロナウイルスの感染拡大による外出自粛などで消費が大幅に落ち込んだことなどが理由としています。

マイナス成長となるのは、消費税率が10%に引き上げられた2019年10〜12月期から数えて3四半期連続のこと。マイナス幅は、世界的な金融危機をもたらしたリーマン・ショックが発生した直後の2009年1〜3月期の年率17.8%減を上回り、戦後最悪となりました。

2020年4〜6月期GDP速報値の内訳を見ますと、

個人消費:▲8.2%
設備投資:▲1.5%
住宅投資:▲0.2%
公共投資: 1.2%

輸出  :▲18.5%
輸入  :▲0.5%

国内消費最悪、輸出最悪、訪日需要(いわゆるインバウンド)最悪……という結果になっています。

緊急事態宣言による自粛要請で経済が止まれば、そりゃ国内消費が落ち込むでしょうし、一旦止まった客足は、世の中から新型コロナウイルスが無くならない限り戻ることはないでしょう。そして、飲食店や小売店の倒産は、非正規およびパート労働者の雇用機会を大きく奪うことになります。

ますます消費が落ち込んでいくことは必至です。

インバウンド消費は絶望的

海外では「都市封鎖(ロックダウン)」や入国規制で、とにかく地球規模で人やモノの動きが止められれば、日本においても輸出が激減するのは当然ですね。

日本は感染拡大を止めることができない状況で、国内ではなんと言おうと世界中からはPCR検査数が極端に少ないことが問題とされていて、感染者数自体の少なさに対しても疑問視されています。

このような状況で訪日客数が増えるわけもなく、インバウンド需要に過剰に頼っている日本経済の構造から、先行き不透明感は増すばかりです。自動車などの輸出は大きく減り、訪日客による消費もほぼなくなりました。

さらに恐いのは、複数のエコノミストが、感染の再燃で年内に景気の「二番底」が来るかもしれないと予想していることです。

不動産投資家は、企業業績の悪化が入居者の家賃滞納や退去などにつながりかねないと警戒しているそうです。

Next: 景気悪化はコロナ以前から。インバウンド頼みの日本は沈んでいく



もともと景気は下降局面にあった

日本景気悪化は、コロナのせいではありません。もともと昨年から景気は悪化傾向にありました。

マイナス成長となるのは、消費税率が10%に引き上げられた2019年10〜12月期から3四半期連続となっています。とっくに日本景気はリセッション(景気後退)となっているのです。

それをコロナが加速したということで、それだけ世界経済に比べて日本経済は深刻だということです。

アベノミクスは、金融政策で株価を引き上げただけで、それ以外はなんの効果もなかったと言えます。企業の内部留保金は増えました。それは株価が上がったことによる評価増によるものです。

一般国民も、株価上昇に浮かれての消費増は見られましたが、足腰の強い消費とはなっていません。消費はもっぱらインバウンドに頼り、公共投資も東京五輪に向けての物がありました。

「人手不足経済にも関わらず、賃金が上がらない…」これがアベノミクス経済の実態でした。これでは足腰の強い消費は持続されません。

そんな中での消費税増税でした。まさに「政策不況」と言えるでしょう。

この景気に対しての下圧力が強くなっているところにコロナショックがあり、しかもそのコロナ対策初動の失敗が先行き不透明感を増しました。

日本の先行き不透明感は、かなり深刻だと言わざるを得ません。

倒産拡大の危険性

先行き不透明感の表れが、倒産件数の増加だと思われます。

保障(補償)のない経済活動停止強制は、企業倒産を加速する結果となりかねません。自粛要請に強制力をつけることを国民自体が望んでいる現状。それを政府が「恐ろしい」と思わないでいることが恐ろしいです。異常を通り越して、恐怖を感じます。

経済を動かしながらコロナと共生するということは、まずは科学的判断を前面に出してから、政治的判断で調整するという運びが良いのですがね。

今の政府には、科学的判断が大きく欠けているようです。専門者会議も、かなり政府に忖度しているように思えます。

経済優先と科学優先は相反するもので、それを政治が調整するというガチンコの議論が、どうもなされていないようです。

とにかく政府は、もはや経済を止めることはできず、かと言って対策があるようではなく、どの局面でも、どの立場でも、「自助努力」が否応なしに求められる状況です。

表向きに倒産を宣言する数字以上に、自主廃業として静かにシャッターを下ろす店や中小零細企業は静かに増えていくでしょう。

Next: 潰れる企業を「自然淘汰」とみなす政府。日本企業の数は激減へ



潰れる企業を「自然淘汰」とみなす政府

表に現れる数字以上に、日本企業の数は激減すると思われます。「それを政府は『自然淘汰』と理解しているところが恐ろしい…」と、あるジャーナリストの話です。

もともと安倍政権は、発足時から、生産性のない企業は淘汰すべきだという説を唱えていました。確かに赤字存続企業はたくさんあり、法人税を納めない企業はたくさんあります。

もっとも企業淘汰の説には、古い企業が残っていると新しい芽が出てこれなくなるという理論もあるそうです。役員の若返りという意味ですかね。

安倍総理の真意はどこにあるのでしょうね。いずれにしても、企業淘汰は進みます。マスコミは取り上げない話題です。

求められる業態変化

ポストコロナ社会では、業態変化が求められます。

「8割経済」という言葉を覚えておいてください。7割かもしれませんが、経済規模が大きく縮小されることは間違いありません。8割という数字がどうなるかは不明で、業界によってもその数字は異なるでしょう。

逆に、ステイホーム関連企業、テクノロジー企業などはビジネスチャンスが拡大していると思われます。

ソーシャルディスタンシングで、例えば直接接触は避けられますので、営業スタイルは、人と接触しないECなどに限られますし、店頭販売でも顧客絶対数が減ることになります。

飲食店はもっと深刻で、顧客回転数で稼ぐしかない居酒屋はもう成り立たなくなります。いきなりステーキや鳥貴族などですね。飲食店業界は「5割経済」とまで言われています。

ホテル業などの宿泊業も深刻で、リゾート地では「ワーケーション」推進を唱え、リゾート地をリモートオフィスにする業態変革を試みているところもあります。都市部のおしゃれなホテルも、「空間売り」として、ホテルをレンタルオフィスに変える試みを行っているところもあります。

これらの流れは不動産投資にも影響があり、企業や零細事業者の経営が苦しくなることで、従業員が入居先の家賃を滞納したり減額を求めたり、入居先から退去したりといった事態が広がることが危惧されます。

大企業であっても業績が悪くなれば、社員に対する各種の手当やボーナスを減らさざるをえなくなります。そうなれば、その社員は、より家賃が安い物件へ転居したりするようになる可能性があります。中小企業や零細事業者なら倒産することもありえるので、家賃滞納などのリスクは、しっかり頭に入れておかなければなりません。

Next: コロナ倒産400件は序章。増税による「政策不況」が国民を苦しめる



コロナ倒産400件は序章

実際、東京商工リサーチの調査では、8月26日午後5時現在、新型コロナ関連の倒産は全国で433件に達したとのことです。

都道府県別の最多は東京都の111件、2番目が大阪府の42件、3番目が北海道の25件だったようです。ちなみに高知県のみが唯一、倒産0件となっているとあります。

この調査は負債1,000万円以上が対象なので、もっと規模の小さいケースを含めれば、件数は非常に多くなるでしょう。

減税の裏には増税がある

コロナ対策で、財政はかなり逼迫(ひっぱく)してきました。国債発行量は増え、国家の歳出が増え、どこかでこの改善は図られなければならず、財務省中心に、増税議論は必ず出てくると思われます。

いまは消費税率を5%にまで引き下げることが求められています。ただ、消費税率を引き下げると、次に引き上げるのは大変でしょう。

そうなるとほかの増税手段が取られそうで、今ある所得控除を廃止することが予想されます。

また、ずっと廃止の話が出ている「生命保険料控除」「配偶者控除」か、税率が低い退職所得そのものがなくなるのかもしれません。

退職所得とは、まさに退職金のこと。控除範囲(税金がかからない部分)は、「(40万円 × 20年)+(70万円 × 20年を超える勤務年数)」となっていて、さらに税金は残りの半分にしかかかりません。

変更案として、以下などが言われています。

・20年を超える勤務年数にかける70万円を40万円にする
・控除計算の勤務年数、あるいは金額そのものを変更する
・2分の1課税(残額の半分に課税)を廃止する

法人税には手を付けずに、所得税を増税するという方向ではないでしょうかね。

消費税率の引き下げに関しては、野党が主張し、自民党内の若手グループからも消費税率引き下げを要求する動きがあるので、場合によっては、秋の解散に対して自民党側から、消費税率引き下げを旗印に掲げて、その是非を国民に問うかたちで解散をするのではとも言われています。

増税ムードは、徐々に醸し出さなければならないので、自民党内で、増税論議があるよというアナウンスは、すでに出始めました。

選挙前は増税はタブーなので、消費税減税で選挙は戦うのでしょうが、おそらく選挙では言われない「消費減税とセットで増税がある」ということは、覚悟しておいたほうが良いと思いますね…。

Next: 意外とすぐ来る!2052年には年金破綻が現実に



年金破綻が現実になる

経済状況悪化は、年金財政を逼迫することは必至で、昨年の財政検証から見れば最悪のシナリオが待っているではとも言われています。

年金財政は、経済成長や労働参加の程度に大きく左右されるということを、財政検証では報告しています。

経済成長や労働参加が高い水準で進めば、所得代替率は50%以上を維持できますが、経済成長や労働参加がある程度の水準にとどまれば、2040年代半ばには所得代替率は50%に達し、その後もマクロ経済スライドを続けると所得代替率は40%台半ばにまで低下してしまうと表現しています。

今問われているのはその次のシナリオとなる、さらに経済成長や労働参加が進まない場合が危惧されます。

その場合は、2052年度には国民年金の積立金が枯渇して完全賦課方式に移行することになりますが、その場合の所得代替率は36〜38%程度にまで低下することになるとの結果となっています。

要は、年金支給額はぐーんと減るということです。

日本経済の見通しは、今の状況では、決して明るいものは見えないようです。ここに来て、財政検証で語られている楽観バージョンは、完全に消えたでしょう。

このままでは(今までも言われてはいましたが)社会保障制度は存続できないと誰もが思っていることでしょう。

なぜ先が見えない年金制度が維持されている?

では、なぜ今まで、少子化が改善されず高齢者は増えるばかりなのに、制度が維持されてきたのでしょう。

日銀が国債を発行して、必死で支えていたからだと唱える専門家もいます。財務省発表の諸表では、日銀が一生懸命お金を流している先として、社会保障を維持するための費用として使われているのではとも言われています。日銀が、高齢者の年金を給付しているような構図です。

これはすでに、社会保障制度は破綻しているということにも繋がります。社会保障制度は、年金だけでなく医療も介護もあります。

今後、社会保障制度そのものを見直す議論は活発化し、そもそも保険制度で社会保障を維持することから税による制度維持、つまりはベーシックインカムの導入があるのではとも言われています。

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ベーシックインカムに関しては、この情報誌でも取り上げましたが、国民全員に一定額を支給して、今の2階建てと言われる年金制度を廃止するものです。職業による年金制度の違いをなくし、生活保護などの給付も含めて一律、ベーシックインカムに統一するというものです。たしかに保険制度だと、保険料を支払えない人は、健康保険証を貰うことはできませんからね。ベーシックインカムに関しては、具体的に議論が始まっているわけではありません。

社会保障制度維持のために増税を主張しているようですが、もうすでに破綻状態であることは、疑ってかかったほうが良さそうですね…。。

Next: コロナ危機を言い訳にした増税に気をつけろ



増税の理由は政府が作る

コロナを理由に、ポストコロナ、ウイズコロナを大義名分として、様々な社会構造や制度改革が進められることは、国民がチェックする必要がありますね。

「ショック・ドクトリン」という言葉があります。惨事を利用して儲けに走る資本主義を表す言葉です。

東京五輪のためと言って、予算を膨らませたのも「ショック・ドクトリン」ですかね、ちょっと意味合いが違いますかね。

日本はこれから「増税」が待っているのですね。

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  • 株価だけは異様に強い状態/倒産ニッポン・増税ニッポンプラス社会保障見直しの話(8/24)
  • ワクチン開発を待つマーケット/野党結集の舞台裏と国会が軽視されている現状(8/17)
  • 金価格が高騰/与党内で囁かれている“3前解散”(8/10)
  • 日本の景気はかなり厳しい/米中双方の総領事館閉鎖からYikTok利用規制強化までの流れ(8/3)

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※本記事は、らぽーる・マガジン 2020年8月24日号の一部抜粋です。ご興味を持たれた方はぜひこの機会に今月分すべて無料のお試し購読をどうぞ。

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らぽーる・マガジン』(2020年8月24日号)より一部抜粋
※タイトル、本文見出しはMONEY VOICE編集部による

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