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トランプに二度目の奇跡はあるか?死亡率20%から生還もバイデン優勢に=吉田繁治

トランプのコロナ感染という珍事が起きました。レムデシビル投与ということは軽症ではなかったのでしょう。それでも、選挙戦を勝ち抜くためには「軽症アピール」しか道はありません。トランプの「奇跡的によくなった」発言の真偽を検証し、米大統領選の今後の展開を考えます。(『ビジネス知識源プレミアム』吉田繁治)

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※本記事は有料メルマガ『ビジネス知識源プレミアム』2020年10月7日号の一部抜粋です。興味を持たれた方は、ぜひこの機会にバックナンバー含め今月すべて無料のお試し購読をどうぞ。

「トランプ陽性」のウラを読む

小説にしたら、嘘に見える展開です。11月からのワクチン利用とコロナ収束を声高に言ったその日の、トランプ大統領の陽性でした。9月30日の第1回討論の直後の感染のようです。

報を受けて、大統領選挙でも米国民のもっとも強い関心が「コロナ対策」として浮上しています。問題は、トランプ大統領の病状ですが、医師からは、依然、症状をはっきりさせない発表しかありません。トランプ大統領は10月6日には、ホワイトハウスに戻りました。軽症なら医師が発表するはずですから、重かったのでしょう。

ヘリコプターで軍の病院(ウォルター・リード)に入院したとき、大統領はツイッターの動画で、「すぐによくなって復帰する」というメッセージを出していました(9月4日)。

顔は白く、視線は曇っていましたが、歩く姿は正常に見えました。しかし入院した日は「良好ではなかった」とリポートされていたのです(民主党寄りのCNN)。トランプ本人は、「奇跡的によくなった」という。

レムデシビル投与が示唆する真の病状

ウイルスの増殖を抑えるためレムデシビルを投与された(公式発表)ということは、酸素吸入を行っているはずだ(医師)との報道も出ました。

レムデシビルは、「SARS-CoV-2による感染症の選択肢として、米国での緊急の使用許可(EUA)を受けて、医薬品医療機器等法で特例に承認された治療医薬」(日経バイオテク誌)です。

重症患者に用いるものとして、以下の注意書きがついています。

「SARS-CoV-2による感染症に対する主な投与経験は、酸素飽和度94%以下、(または)酸素吸入を要する、(または)体外式膜型人工肺(ECMO)導入または侵襲的人工呼吸器管理を要する重症患者に対してであることから、現時点では原則として、重症患者を対象に投与を行うこと」(同誌)。

血中の酸素濃度が低下し、酸素吸入または人工呼吸器が必要な患者に投与されます。重い症状です。

病院前での記者会見では、メドウズ大統領首席補佐官は「24時間、心配な状況があり、これから48時間(4日、5日)が、決定的に(Critical)に重要」という表現を使っていました(10月4日)。

反トランプのCNNに出た医師は、「これから7日間が肝心(予断を許さない)」という。医師団が施した検査と治療の内容は明らかではなく、熱と肺の状況が数値では示されていません。

入院した金曜日には、酸素吸入を受けたことは明らかになっています。

「レムデシビルは、日本で重症とされる、集中治療室(ICU)に入っている患者、気管挿管されている患者、ECMOを導入している患者に使われる」(医薬・生活衛生局医薬品審査管理課)という。

ホワイトハウスは「(重症化を防ぐ)予防的な使用」といっていますが…。

Next: 死亡率20%から生還?トランプの選択肢は「軽症アピール」のみ



死亡率20%を生き抜いた?

トランプ大統領の血中酸素濃度が、(息苦しさを感じる)94%以下に低下していたことは間違いないようです。正常値は96%以上です。90%未満が「呼吸不全」とされます。

レムデシベルの53例の「(5月の実験的な)人道的使用」では、36例(68%)に、呼吸の改善がみられた。人工呼吸器をつけていた30例のうち17例は、呼吸気を抜くまでに至った。27例(47%)は退院した。しかし7例(18%)は死亡したという(国立国際医療研究センター)。

レムデシベルを投与しても、死亡率は20%に近いのです。トランプは、呼吸が改善した68%(3分の2)のグループに入ったのでしょうか。

10月3日の米国の、コロナ起因の死亡者は、906人です。累積の死者数は20.9万人、感染者総数739万人(発見感染率2.2%)に対して、死亡数は2.8%です。

日本の感染者は8.5万人、人口に対する感染率は0.067%(1,500人に対して1人)の感染発見ですから、100人のうち2.2人の米国とは比較になりません。
※参考:https://vdata.nikkei.com/newsgraphics/coronavirus-world-map/

米大統領選に勝つには「軽症アピール」しかない

NY市では、感染率が3%以上のホットスポットは、再び閉鎖になっています(筆者注;感染率=陽性者数 ÷ PCR検査数)。

当方は、トランプ支持でもバイデン支持でもありません。しかし、近い周囲に感染させる恐れがある時期に、ホワイトハウスに復帰するのは無謀でしょう。自分のためではあっても、周囲が被害を受けるからです。

トランプは新型コロナに感染したことを選挙に不利な条件と考えているため、退院を急いだのでしょう。こうした無謀さは、他の場面でもトランプに内在的な行動様式です(筆者注:実際は、ホワイトハウスの部屋を高度医療を施せる医師団とともに隔離した病院にし、時々メディアやツイッターに顔を出しているだけと推計します)。

軽症での回復は、選挙に不利にはならないと考えます。逆に、「同情を集めて」有利かもしれません。

しかし重症なら、国民に「大統領を続けるのは難しい」と思う人が増え、不利になります。このため、「病状にかかわらず、軽症としなければならならない」と考え、スタッフでもある医師に命令したのでしょう。

ホワイトハウスには、大統領専用の医師がいます。担当の医師の、矛盾を追及されても「もごもご」としか言わない記者会見から、これが伺えます。

安倍首相の「潰瘍性大腸炎」では、慶応病院の医師は、「嘘を述べねばならない会見」は拒否しています。前回の辞任のときは医師団が会見に控えていましたが、今回はいなかったのです。

Next: 世界人口の10%がコロナ感染。トランプは「嘘」をついている



再び猛威を振るうコロナウイルス

米国と欧州では感染数が再び増加しているので、パリでは全部のバーが、英国では全部の映画館が閉鎖されました。日本では、9月・10月のGoToキャンペーン参加の増加(今までで1,600万人)から、11月が感染拡大の月でしょうか。

WHOは、現在の世界の感染者は、7.8億人(全人口の10%)と推計しています。確認感染者は3,580万人ですから(10月6日)、その22倍。日本では8万5,739人(10月6日)なので、WHO推計を延長すれば188万人になります。

なぜか感染率が低いアジア圏

それにしても、インドを除くアジアで共通して、人口に対する感染率が欧米よりも1ケタ以上低いのはなぜか?

米国の確認感染数は人口3.2億人のうち745万人、確認感染率は2.3%です(1万人に対して230人)。

日本は、1.26億人の人口で、確認感染者数は8.6万人、感染率は0.07%と、米国の33分の1です(1万人に7人)。

小児が、結核のワクチンBCGの接種を行っているためだという推計がありましたが、医学的な理由は今もって明らかではありません。BCGは小児の結核を52%~74%は減らすとされています(厚労省)。

湿度が高くてカビが多く、発酵した食品(乳酸菌)の摂取が多い地域に、何らかの抗体をもって生活しているアジア人の体質が関係しているのかもしれません。

検証のない仮説は考えることができますが、科学や医学では「実験後」にしか原因を確定しません。しかし医学では人間が相手なので、実験が行いにくいのです。

ワクチン完成には5年かかる?

医薬でも、偽薬と試験薬を与えた患者グループの経過(短期、長期)を統計的に処理し、「一定率以上の効果があるものを有効」と認定します。

トランプが11月にはできると勝手に述べている、ワクチンの治験は、効果と副作用(ワクチンでは副反応)の検証には、多くの治験が必要なため、5年から7年はかかるとされています。

ワクチンは、医薬よりはるかに多数に投与するので、副反応と1%の罹患が問題になるからです。

Next: コロナ陽性でバイデン優勢に。トランプ逆転、奇跡の条件は?



米大統領選は「バイデン優勢」

トランプは週替わりで、「大きなニュースネタ」を作る大統領です。来週の10月15日の討論会(マイアミ)には、本人は出るつもりでしょうか。あるいは延期されるか。

討論とトランプのコロナの後、バイデンの支持が上がり、トランプは下がっています。

メディアは16%くらいの差に拡大したと報じています。反トランプが多いメディアの世論調査では6ポイントから7ポイントのへ偏向があるので、実際は、9%から10%の差でしょう。

5%くらいの差(メディアでは10%)なら、「郵便投票の不正の訴訟(保守派6人:リベラル3人の最高裁判決)」により、拮抗する結果になるでしょうか。

不正票の1枚ずつの検証はできないので、結果がどうなるか不明です。米国大統領選挙では、いつも、微妙な票の差です。

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image by:Evan El-Amin / Shutterstock.com

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