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脱ハンコで公文書偽造が容易に?菅総理「デジタル化推進」の黒い思惑=原彰宏

内閣官房の組織図を見ると、すでに縦割り行政を打破する仕組みはできているように見えます。それでも「縦割り行政打破」「デジタル化」を掲げる背景には何があるのでしょうか?(『らぽーる・マガジン』原彰宏)

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※本記事は、『らぽーる・マガジン』 2020年10月12日号の一部抜粋です。ご興味を持たれた方はぜひこの機会に今月すべて無料のお試し購読をどうぞ。

内閣官房長官のお仕事は?

内閣官房のトップである官房長官は内閣のスポークスマンと言われ、内閣を代表して記者会見を担当するイメージが強いです。しかし、内閣官房とはどういう組織なのか、いまいちわかりません。そこで改めて調べてみました。

内閣官房の「官房」とは、内閣・府・省・庁などのこと。その長に直属して、機密事項、人事、官印の保管、文書、会計、統計などの総括的事務を分担する機関という位置づけとなっています。

強力な組織ですよ。ある意味、すべての中枢を仕切る場所とも言えます。

内閣官房長官の下に副長官を置き、その下に3つの組織があります。

・国家安全保障局
・内閣危機管理監
・内閣情報通信政策監

そのネーミングで、ほぼ何をするところかはイメージできそうです。

内閣官房が抱える組織たち

この3つの組織と並列して、官房副長官直下に、以下の組織が羅列されています。

・情報通信技術(IT)総合戦略室
・新型インフルエンザ等対策室
・アイヌ総合政策室
・郵政民営化推進室
・沖縄連絡室
・社会保障改革担当室
・原子力発電所事故による経済被害対応室
・日本経済再生総合事務局
・教育再生実行会議担当室
・国土強靱化推進室
・拉致問題対策本部事務局
・行政改革推進本部事務局
・領土・主権対策企画調整室
・健康・医療戦略室
・TPP(環太平洋パートナーシップ)等政府対策本部
・消費税価格転嫁等対策推進室
・水循環政策本部事務局
・まち・ひと・しごと創生本部事務局
・産業遺産の世界遺産登録推進室
・東京オリンピック競技大会・東京パラリンピック競技大会推進本部事務局
・国際感染症対策調整室
・一億総活躍推進室
・観光戦略実行推進室
・働き方改革実現推進室
・番号制度推進室
・統計改革推進室
・特定複合観光施設区域整備推進室
・地理空間情報活用推進室
・人生100年時代構想推進室
・イノベーション推進室
・ギャンブル等依存症対策推進本部事務局
・小型無人機等対策推進室
・プレミアム付商品券施策推進室
・オリンピック・パラリンピックレガシー推進室
・就職氷河期世代支援推進室
・全世代型社会保障検討室
・デジタル市場競争本部事務局
・新型コロナウイルス感染症対策推進室
・新型コロナウイルス感染症対策本部事務局
・国際博覧会推進本部設立準備室
※参考:組織図・事務概要 – 内閣官房ホームページ

すごい量ですね。かつて耳にした懐かしいものもあります。

・まち・ひと・しごと創生本部事務局
・一億総活躍推進室
・働き方改革実現推進室

それぞれに担当大臣がついています。順番に羅列しますと、まち・ひと・しごと創生本部事務局、一億総活躍推進室の2つの担当は、少子化対策・地方創生を担う坂本哲志内閣府特命担当大臣が兼務。働き方改革実現推進室の担当は、田村憲久厚生労働大臣が兼務します。

女性活躍については、東京オリ・パラと一緒に、男女共同参画の橋本聖子内閣府特命担当大臣が兼務します。さすがに北海道・沖縄開発に関する独立省はなくなりましたが、未だに男女共同参画を特別視しなければならない社会も、どうかと思いますね。

縦割り行政「打破」の仕組みはもうできている?

さて、官房組織に戻りますが、この中には、いわゆる省庁をまたぐようなものが多く含まれています。

その1つが、「情報通信技術(IT)総合戦略室」です。この部署とデジタル庁と、なにがどう違うのかよくわかりませんが、この分野を強く進めることを強調する意味で、特別に特命大臣を置いたということになるのでしょうかね。

デジタル庁が、菅政権肝いりの縦割り行政打破を、技術面から進めることになるのだと思われます。

この他、監督省庁が異なりそうなものをピックアップしてみますと
・新型インフルエンザ等対策室
・郵政民営化推進室
・社会保障改革担当室
・教育再生実行会議担当室
・国土強靱化推進室
などなど。

もうピックアップするのも面倒になってしまうくらい、官房長というところは、省庁をまたぐような事案を扱うところだということが理解できます。

すでに縦割り行政を打破できる仕組みは作られているのではないでしょうか?

これらの機能がきちんと回れば、あえて「縦割り打破」を打ち上げなくても良いように思えてきました。

Next: 「デジタル化」真の狙いは?内閣官房はブラックボックス



内閣官房はブラックボックスか

よくよく「縦割り」行政の中身を聞くと、またデジタル化推進の中身を聞くと、行政機関側のメリットばかりのような気がしてなりません。

行政の効率化が国民の手続きの利便性につながるというのでしょうが、マイナンバーカード普及のメリットが、医療情報共有による医療機関側の業務効率化にあるのと、同じような感じがしてきました。

健康保険証とマイナンバーカード、運転免許証とマイナンバーカードの一体化は、行政側のメリットについては山程に語れますが、私たち国民側のメリットはどれだけあるのでしょうか。

さて、官房組織は、このように省庁をまたいだ、とても縦割り行政ではできないことばかりが並べられています。

あくまでも印象の話ですが、打ち上げた花火の“片付け場所”のような感じもします。もう使わなくなったものを、今度いつ使うかわからないものをしまっておく倉庫のような感じもするのですが、それは言いすぎでしょうかね…。

本当は、ひとつひとつを丁寧に、どんな仕事をしていてどのような成果を出しているのかをチェックすべきなのでしょうが、なにせマスコミが、内閣官房に関しては一切取材も報道もしないので、そのあたりが不透明となっています。

ある意味「ブラックボックス」となっているようです。たくさん私たちの税金を注ぎ込んだようですけどね…。

誰のための「デジタル化」なのか

デジタル化というのはあくまでも手段のはずが、なぜ「デジタル庁」という目的になっているのか。一体デジタル化で何がしたいのか。その先に何があるのか…。あるジャーナリストの問いかけです。

「手段が目的化している」…このあたりに、デジタル化のポイントがあるように思えますね。

日本におけるコロナ感染の発端ともなった横浜港沖停泊の豪華客船「ダイヤモンド・プリンセス号」の乗客たちは、感染による接触困難状況において、日本ではなぜリモート診断ができないのかが不思議だったそうです。

リモート授業を推進しているにもかかわらず、生徒はプリントを学校に取りに行かなければならないそうです。

菅政権になっていち早くハンコを廃止する動きを見せましたが、このことについて早速、自民党ハンコ議連が噛み付いてきました。加藤官房長官は「実印は残す」という発言をしていましたね。この“脱ハンコ”に関する政権と自民党とのやり取りは、河野太郎行革担当大臣が自民党内で人気がないことの表れだと揶揄する声もあるようです。

まったく別の問題になりますが、菅政権で表面化した「二世・三世議員 vs 叩き上げ議員」という構図もあるようです。なんだかなぁ…です。

東京都では小池都知事が、今年度内に脱ハンコの動きをすすめることを発表しました。また上川法務大臣は、結婚・離婚手続きをハンコ不要にすると述べています。脱ハンコの動きが早いですね。

Next: 脱ハンコで公文書偽造が容易になる?誰のためのデジタル化なのか



脱ハンコで公文書偽造が容易になる?

なぜ菅政権はハンコ廃止にいち早く動き出したのか?ということに関して、「公文書偽造を絡めた裏があるのではないか」という問いかけがありました。

それで調べてみましたら、こんな記事がありました。

※参考:廃棄のバックアップデータ「行政文書ではない」 菅長官 [桜を見る会]:朝日新聞デジタル(2019年12月4日配信)

桜を見る会の招待者名簿を記録した電子データについての、菅官房長官(当時)と記者とのやり取り記事で、2019年5月に国会で、桜を見る会の招待名簿に関する資料請求で、バックアップデータが残っていたことを認めた一方で、「(バックアップデータは)公文書でなかった」とし、国会議員の資料要求に応じる必要はなかったとの認識を示したものです。

ジャパンライフが、安倍首相からの招待状を信用格付けで利用して、被害者を拡大させたことは明白です。そのことに対して、安倍総理本人はおろか、政権が寄ってたかって総理をかばうことに対する憤りは、このまま有耶無耶にしてはいけないという思いをあらためて強くしますね。

バックアップデータが公文書でないという見解と、ハンコをなくすということ。なにか恐ろしさを感じてきました。

“脱ハンコ”を急ぐ背景と関係があるのでしょうかね…。

政府共通プラットフォーム「AWS(アマゾン)」で決定

アマゾン ウェブ サービス ジャパンは10月8日、総務省による第二期政府共通プラットフォームがアマゾン ウェブ サービス(AWS)上で運用開始されたと発表しました。

政府は、業界をけん引するクラウドサービスの活用を通じて、情報システムを新技術へ対応させると同時に、各府省が独自に整備・運用する情報システムとデータのさらなる統合・集約によりITガバナンスを強化し、管理の一元化、セキュリティの強化、運用コストの削減を実現すると、説明しています。

ポイントはそこではありません。

日本純正プラットフォームではなく、米国アマゾン社のプラットフォームに、日本の重要機密のオペレートを委ねるということです。米国では、絶対に考えられないことです。

総務省ホームページには、政府共通プラットフォームが説明されています。

政府共通プラットフォーム(PF)は、2013年3月から、府省共通システムや中小規模の情報システムを中心に、各府省が整備・運用するシステムの稼働に必要なITリソースを共通化して提供しています。

2020年10月からは、クラウドサービスを活用した「第二期政府共通プラットフォーム」の運用を開始しています。

政府共通ネットワークは、全府省、国会、裁判所等を接続する政府内部の専用通信ネットワークです。利用機関間のメール送受信や府省共通システムの利用等は当ネットワークを介して行われており、総合行政ネットワーク(LGWAN)を通じて地方公共団体とも接続しています…。

それを、アマゾン「AWS」で行うというのです。

各省庁ごとの縦割りとなっているシステムに横串を入れるものが、アマゾンの「AWS」だということです。

Next: Amazonの「AWS」を採用。国家機密を海外企業に任せて大丈夫か?



国家機密を海外企業に任せて大丈夫か?

アマゾン「AWS」導入を決めた高市早苗総務大臣(当時)は、「本当は純国産Webサ-ビスを導入したかったが、比較検討して日本システムよりも、アマゾンの『AWS』のほうが、セキュリティ等で優れていると判断した」と答えています。

この純国産というのが、本当はNTTではなかったのでしょうか。「第二期」とありますが、「第一期」があり、そのときにNTTのシステムを採用したのですが、会計検査院から「お金を使って作ってもほとんど活用されていない」との指摘を受けて、その延長線上で、アマゾン「AWS」採用に至っているのです。

「日本はデジタル化に遅れている」これは菅総理の発言です。総務大臣だった菅総理は、今回のアマゾン「AWS」採用の経緯は理解しているはずです。

NTTと言えば、Docomoを完全子会社します。これは、携帯電話料金引き下げに対応するためと言うよりも、上場して配当でDocomo収益を社外に出すよりも、社内に溜め込みたいという意図があるようで、それは世界でのNTTの地位を「5G」システム、その先の「6G」システムで取り戻したいということの表れではないかとも言われています。i-modeサービスもなくなることですしね…。民営化の象徴が元の鞘に戻るという、実に皮肉な結果となっているようです。

この「第一期」に関しては、以下のようなことになっています。

2013年3月に、運用コストの削減やセキュリティ強化などを目的に、「第一期政府共通プラットフォーム」の運用を開始、府省共通システムや中小規模の情報システムを中心に、各府省が整備、運用するシステムの稼働に必要なITリソースを共通化して提供しています。

2018年には、効率性や可用性向上を目的に、政府情報システムの整備にクラウドサービスの利用を第一候補とする原則を定めた「政府情報システムにおけるクラウドサービスの利用に係る基本方針(クラウド・バイ・デフォルト原則)」が発表されたことを受け、クラウドサービスを活用した第二期政府共通プラットフォームの整備を進めてきた経緯があります。

この結果がアマゾン「AWS」採用に繋がり、ここまでの経緯は、デジタル庁設置構想前の、前述の官房内、官房副長官直下の「情報通信技術(IT)総合戦略室」が担ってきたものです。

縦割りではない横串の内閣官房庁が動いていたものです。何をしていたのか、大きなお金が動いた結果がこれです。

たしか、IT担当大臣というのが置かれて、平井デジタル担当大臣が就任していたのではなかったでしょうか。「電子政府からデジタル・ガバメントへ」こういうスローガンもあるようですが…。

マイナンバー「銀行口座紐付け」はあるか?

結局、残るものはマイナンバーカードに国民の個人情報を紐付けるという業務になりますかね。

個人情報をマイナンバーカードに紐付けることについて、多くの国民が抵抗気味なのが「銀行口座の紐付け」です。個人資産が、すべて国に管理されるのではないかという懸念があるようです。

このことをよく考えると、個人資産が把握されるのを一番嫌がっているのは、実は政治家自身ではないでしょうか。

自民党を支持している経済界の人たち、富裕層、さらには中小企業オーナーたちではないでしょうか。

この話の試金石として、彼らがどう動くか、自民党がマイナンバーカードに紐付ける情報として、資産や税金等をどう扱うかは注目しておきましょう。

そこからマイナンバーカード活用の未来像が見えてくるかもしれません。

Next: すべてはマイナンバーカードのため?いつも裏側ではカネが動いている



すべてはマイナンバーカードのため?

余談ですが、マイナンバー制度導入のシンポジウムに、西村経済再生担当大臣(当時は確か官房長官つきの内閣総理大臣補佐官だったかと)などに加え、ぐるなびの会長がその場にいたことに、当時わたしは違和感を覚えていました。

ぐるなび会長が「マイナンバー制度がなければ政府には協力しない」と言っていたのを覚えています。今回、「GoToイートキャンペーン」は、ぐるなびからの予約が前提となっていて、ここで、私の当時の違和感が溶けたような気がします。

週刊文春が「ぐるなびの創業者で現会長の滝久雄氏は菅氏と昵懇の間柄だ」と報じ、菅総理が初当選を果たした1996年から2012年にかけて、滝氏が会長を務める広告代理店「NKB」などが、菅総理の政治団体に寄付をしている事実を報じています。

「GoToトラベル」でも二階自民幹事長が、観光関連団体から献金を受けていることを報じていました。

政府がなにかしようとする裏には、いつもこういうお金が動いているという構図は、いつの時代もなくならないものなのでしょうかね。

要は、マイナンバーカードがすべての中心にあるようですね…。

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2020年10月配信分
  • 縦割り行政打破とデジタル化って、結局は…(10/12)
  • ワクチン無料接種って、賠償金肩代わりってなによ…(10/5)

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※本記事は、らぽーる・マガジン 2020年10月12日号の一部抜粋です。ご興味を持たれた方はぜひこの機会に今月分すべて無料のお試し購読をどうぞ。

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らぽーる・マガジン』(2020年10月12日号)より一部抜粋
※タイトル、本文見出しはMONEY VOICE編集部による

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