進撃のロシア、IS空爆は「迷走オバマ」を救うためだった?

shutterstock_129093587
 

批判的な報道が目立つロシアによるシリアへの空爆。しかしジャーナリストの高野孟さんはメルマガ『高野孟のTHE JOURNAL』で米国発の情報操作に屈する日本のマスコミを批判するとともに、プーチンはアメリカが犯した過ちからオバマを救い出そうとしていると述べています。

ロシアのIS空爆

プーチンは、28日にオバマと会談した翌日に、シリアで対ISの爆撃作戦を開始した。会談ではシリアのアサド政権の扱いについて意見の対立が解けなかったと報じられているが、オバマの少なくとも暗黙の了解がなければプーチンはこんな行動をとるはずがない。この問題でのロシアの姿勢についてのマスコミの解説はほとんど見当外れで、「弾圧と内戦で自国民25万人を死に追いやった極悪非道のアサド大統領と妥協の余地があるわけないだろうに」という大前提で「ロシアが長年の盟友を守り自国の権益を保つために国際社会に逆らって横車を押している」という調子の「米国発」の情報操作に屈している。いずれ本格的に論じようと思うが、要点は、

(1) アサドが市民に対して抑圧的な独裁体制を敷いてきたのは事実だが、それは(イラクのフセインやイランの宗教者たちと同様)戦乱の中東で国家破綻を防ぐにはそうするしかなかったからで、彼の人品骨柄が「極悪非道」であるかどうかというようなレベルの話とは次元が違う。

(2) アラブの春の波がシリアにも押し寄せて市民の民主化要求デモが始まったこと自体は正当なことで、シリア市民が内から独裁を跳ね返して体制変革に挑む可能性を示したものであるし、それに対してアサドが力で圧し潰そうと弾圧したことは不当極まりなく、非難されてしかるべきである。

(3) しかしその時に米国のネオコン過激派が手を突っ込んで、反体制派に資金や武器を提供して、これをアサド政権打倒の内乱に持ち込んで行くよう促したのは(ウクライナの場合と同様)致命的な間違いで、それが多数の市民の殺傷とISの台頭、数百万人の難民を生み出した決定的な要因である。

print
いま読まれてます

  • 進撃のロシア、IS空爆は「迷走オバマ」を救うためだった?
    この記事が気に入ったら
    いいね!しよう
    MAG2 NEWSの最新情報をお届け