進撃のロシア、IS空爆は「迷走オバマ」を救うためだった?

 

オバマを救い出そうとしているプーチン

(4) 米国の過激派が「アサド政権は4カ月で倒せる」と豪語し、それを欧州なども支持して(ためらいながらも)米国に追随したのは(イラクの場合と同様)シリアの国柄を全く理解していないことによる判断ミスでしかなかった。

(5) とりわけ、ISが台頭してそれが中東のみならず全世界のテロとの戦いにとっての重大な脅威となってからは、米欧は、主要な敵がアサド政権でなくISとなったという局面変化を機敏に捉えて、アサド政権とは一時「休戦」しても対IS作戦に全力を集中しなければならなかったはずだが、それをためらい、相変わらず反体制派を支援してアサド政権と戦いつつISにも立ち向かわせるという両面作戦を維持しようとして失敗し、泥沼化した。

(6) およそ戦争にせよ国際政治にせよ、この局面で主要な敵はどこか、毛沢東「矛盾論」の思考方法に従えば「主要な矛盾」は奈辺にあるかを正しく認識して、敵を最小限に狭め味方を最大限に増やすことが戦略論の肝心要で、それが巧くできずにオロオロしているのがオバマであり、その間違いからオバマを救い出そうとしているのがプーチンである。

繰り返すが「敵を最小限に狭め味方を最大限に増やす」のが戦略の初歩である。その当たり前のことをプーチンが言っているのに、「シリアの権益確保が狙いでは」とか「ウクライナの苦境から目を逸らせようとしている」とか、分かったような解説をしているのがマスコミだ。じゃあ、あなたの対IS戦略の提案は? と問えば、たぶん彼らは答えを持たない。私は決してプーチンを好きではないし、その言動すべてを支持するわけでもないが、この点に関する限り一貫した戦略的理性を保って世界をリードしようとしているのは彼である。

image by: Oleg Pchelov / Shutterstock.com

 

 『高野孟のTHE JOURNAL』より一部抜粋

著者/高野孟(ジャーナリスト)
早稲田大学文学部卒。通信社、広告会社勤務の後、1975年からフリー・ジャーナリストに。現在は半農半ジャーナリストとしてとして活動中。メルマガを読めば日本の置かれている立場が一目瞭然、今なすべきことが見えてくる。
≪無料サンプルはこちら≫

print
いま読まれてます

  • 進撃のロシア、IS空爆は「迷走オバマ」を救うためだった?
    この記事が気に入ったら
    いいね!しよう
    MAG2 NEWSの最新情報をお届け