世界は今、「人民元」をドル円に並ぶ主要通貨にしようとしている

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現在、ドルと円、ユーロ、英ポンドで構成されるIMF・国際通貨基金の「特別引き出し権(SDR)」に、中国が人民元の組み入れを要求しています。11月30日に開催されるIMF理事会で正式に採用が決まる見込みで、人民元が名実ともに「メジャー通貨」になろうとしています。これは一体何を意味するのでしょうか?『グローバル時代、こんな見方も…』の著者・スティーブ・オーさんは、「世界における中国の政治力、影響力の強大さを物語る」と伝えています。 

新SDRを前に自由化される人民元

2015年はSDRの内容を再確認する年にあたる。IMFは5年毎にその構成通貨と比率を見直していて、今回は2010年には見送られた人民元のSDR入りが言われている。

AIIBや一帯一路構想に見られる通り、この先も人民元の影響力は増す方向にある。人民元のSDR入りは、先進各国が中国との不毛な対立を避けるのと同時に、SDR基盤強化への貢献が期待される。

次世代SDRが発効されるのは2016年1月。それに向けた取り決めが今秋予定されているが、そのIMF会合に先駆け、人民元の自由化があるだろうか。

国内外のロビーを抑え、何かを犠牲にしてでも、中国現政権が自由化の道を進むのか見ものである。仮に自由化なくSDR入りを果たせば、それは世界における中国の政治力、影響力の強大さを物語る。

今秋以降、この一連の動きを見て、世界における中国の政治力を次のように測ることができる。

政治力・影響力  SDR入り  自由化

強大        ○     ×
強         ○     ○
やや低       ×     ×
低         ×     ○

IMFのアプローチ

一方、中国側が、SDR入りをどこまで望んでいるかという見方もできる。長期ビジョンを掲げる中国が、ここで準備通貨入りを焦る必要はないのかもしれない。「深入り」することで責任が増し、政策の自由を奪れかねない。日米メディアは中国による「切望論」を掲げるが、そうとばかりではなさそうである。

言われているように中国経済がいずれ米国を上回るのなら、米ドルがそうであったように、準備通貨としての旨味を後からでも「総取り」できる可能性が残されている。自ら進んで後の果実を分かち合い、今から政策の自由を奪われに行くこともない。

よって今回のSDR入りは、上表の最上段のケースでのみ実現する見ることができる。それには、準備通貨としての信頼性を高めたいIMF側からのアプローチがあり、それに対し、中国が協調することで成立する。日米英等の島国家では、「協調」が政策の中心に据えられることはないが、大陸各国にとっては国家存亡を左右する重要な国家理念である。

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