人民元が完全変動相場制に移行していけば、そのとき人民元は大暴落となります。すでに食料の輸入大国となっている中国では、食料品をはじめとするインフレは避けられません。それは中国共産党がもっとも恐れる事態であるはずです。
中国が13億もの人口をなんとか束ねられたのは、「党・政・軍」の三位一体でカネ、モノ、ヒトを牛耳ってきたからです。しかし、すでに共産主義の理念は失われており、現在の中国共産党には政権政党としての正統性もないのです。
唯一、経済成長こそが共産党が「人民を指導する」立場でいられる正当性であり、そのために市場操作までして、表向きだけでも成長を維持してきたわけですが、人民元を国際化すれば、そうした恣意的な操作はできなくなるでしょう。
インフレで人民が飢え、経済はガタガタ、社会には腐敗が蔓延し、公害被害で生存すら脅かされるということになれば、もはや共産党一党独裁の正当性は根底から覆されることになります。
共産党一党独裁を守るために残された手段としては、文革のような政治闘争を煽るか、軍による恐怖政治しかありませんが、そのような国の通貨が国際通貨として通用するのでしょうか。
今回の人民元の国際化は、もしかすると中国が「パンドラの箱」を開いてしまったということなのかもしれません。
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『黄文雄の「日本人に教えたい本当の歴史、中国・韓国の真実」』より一部抜粋
著者/黄文雄
台湾出身の評論家・黄文雄が、歪められた日本の歴史を正し、中国・韓国・台湾などアジアの最新情報を解説。歴史を見る目が変われば、いま日本周辺で何が起きているかがわかる!
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