ざわつく北朝鮮。「ハリボテ」ミサイルを侮れないこれだけの理由

 

「国際的に核保有国として扱われるということは、つまり核抑止力を備えたということですね。そうなると、巨大な軍隊を持って抑止力を維持する必要はなくなります。そこで金正恩は軍部に働きかけ、軍縮に踏み切ることもできます。軍が持っている既得権益は、新たな経済建設のなかでよりよいものを提供していけば、軍部の反発も抑えることができるでしょう」

「こうして軍事的な負担を軽くし、経済建設を進めようというのが北朝鮮の戦略であり目標で、このことははっきりしています。そのなかで水爆の開発は、小型化した起爆装置としての原爆が必須ですから、水爆実験は実用化された段階の原爆を保有していることの証明にもなり得るのです。このように、水爆実験は使うことができる核兵器(原爆)を手に入れるうえでも通らなければならないステップの一つ、という位置づけなのです。むろん、原爆と比べて破壊力が格段に大きい水爆は、使用を前提とした原爆と同じ破壊力を求める場合にも、はるかに小型軽量にすることができますから、弾道ミサイルに搭載するうえでも望ましいことは言うまでもありません。技術的な困難さはありますが、その面からも水爆の開発を進めていることも忘れてはなりません」

「北朝鮮は、経済建設のモデルとして、第二次大戦後のアメリカや中国を見据えています。核を持つことで通常軍備の負担を軽くし、経済建設を成功させたアイゼンハワー大統領のアメリカ、そして、それをマネした中国に向けて、歩みを進めているのです。これについては、おなじみ西恭之氏(静岡県立大学特任助教)がメルマガで触れてきたとおりです」

金正恩という指導者は、一般的には、いつブチ切れるかわからない世間知らずな若造で、身内や側近を残酷な方法で処刑している、と見られています。実際、2013年12月12日には叔父(金日成の娘で金正日の実妹である金敬姫の夫)で後見人的な存在だった張成沢を国家転覆陰謀行為で、2015年4月30日には玄永哲・人民武力部長(国防相)を反逆罪で処刑しました」

「しかし、金正恩の立場で考えてみれば、軍幹部や身内の長老などからナメられたり軽んじられたりすることは、彼にとっては命すらも失いかねない脅威なのです。そこで、たまには一罰百戒ということで、見せしめに処刑して権力基盤を固める必要があるわけです」

「一方で金正恩体制は、祖父・金日成や父・金正日の体制と比べると、きわめて西欧的、合理的といえます。北朝鮮の国づくりは、年間1000人と言われる欧米研修組のテクノクラートが進めていると考えられます。研修先の大部分はアメリカですが、そのアメリカの立場で眺めると、かつて研修生として受け入れてITなり先端技術なりを教えたことのあるテクノクラートの動きを通じて、北朝鮮の戦略的動向を把握することができるのです」

「また、アメリカの同盟国のイギリスやオーストラリアは北朝鮮と国交がありますから、その外交ルートを使ったシグナルの交換や情報収集も可能なのです。アメリカは、これらの情報をトータルとして眺めながら対北朝鮮戦略を考えているのです。分野によっては、アメリカは中国よりも情報を持っているフシすらあると考えてよいでしょう」

「こうした北朝鮮の国家戦略を踏まえれば、水爆実験に成功したという彼らの主張を前にしても、いまにも戦争が始まるかのように浮き足立ったり、バタバタ大騒ぎする必要はないでしょう。日本は、防衛力と法制度の整備や同盟関係の強化など、自国の安全のために必要なことを着実に実行していけばよいのです」

(聞き手と構成・坂本 衛)

 

 

NEWSを疑え!』より一部抜粋

著者/小川和久
地方新聞記者、週刊誌記者などを経て、日本初の軍事アナリストとして独立。国家安全保障に関する官邸機能強化会議議員、、内閣官房危機管理研究会主査などを歴任。一流ビジネスマンとして世界を相手に勝とうとすれば、メルマガが扱っている分野は外せない。
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