それにしても、本作を観てわたしはあらためて思った。タカとユージは名コンビ、名バディだと。お互いを「ダンディ」「セクシー」とホメ合うのは、なかばジョークではあっても、常に相手を認め、信頼を伝え合う事はバディにとって大切だ。ふたりともいい年齢の重ね方をしたからこそ、素直に愛情表現ができる。それが観ていて気持ちが良いし、すごくセクシーだ。
えてして日本男子は、男同士の愛情表現がうまくなく、正統派バディものが生まれにくい。近年はちょっとした「バディもの」ブームが起きてはいるが、どれもどうもビリッとしない。思うにその原因は、「バディとは何か」という命題をとことん考えず、流行だからと安易に企画を立てているためではなかろうか? 最近のバディものってバディアピールがクドすぎて、逆にこっちがこっぱずかしくなっちゃうのよね。
では、バディとは、何なのか。それはふたりが死をわかちあうこと。相棒の危機にすべてを捨てて駆けつけ、運命を共にすることである。『さらば~』では、ある悲劇に見舞われ落ち込むタカのもとへ、ユージがやってくる。タカの背中に声をかけようとして、言葉が見つからず、ユージはそのまま立ち去る。その無音の十数秒が、ユージの思いをどんなに雄弁に語ることか。タカを思いやってユージはひとりで敵地に赴くが、最後にはタカが現れ、満身創痍で闘いに挑む。軽いジョークをたたきながら。
このクールな渋み、一朝一夕で出るもんじゃないけど、若い人にはぜひお手本にしてほしいものだ。ハマで繰り広げられる大人のファンタジーアクションを、ぜひスクリーンで堪能してほしい。
いいをじゅんこ(フリーライター)
【作品データ】
・全国ロードショー中!
・配給:東映
【スタッフ】
監督:村川透/脚本:柏原寛司
【キャスト】
舘ひろし、柴田恭兵、浅野温子、仲村トオル、木の実ナナ、伊藤洋三郎、山西道広、長谷部香苗、ベンガル、小林稔侍、菜々緒、夕輝壽太、吉沢亮、入江甚儀、片桐竜次、吉川晃司、他
・公式HP:http://www.abu-deka.com/
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