最古の兵法書を読んでわかった、日本が中国・韓国と相容れない理由

 

「手足の自由を失っても、気を失わず」

武人の一途な志を支えるのが「」である。武人は志を遂げるために「気張って」いなければならない。気について「闘戦経」はこう説く。

気は形があるものから生まれるが、形がなくなっても残る。薬草は枯れた後もその気が宿り、体を癒やしてくれる。肉体が壊れていないのに、心が衰おとろえてしまうのは、天地の法則に則っていないということだ。

 

気なるものは容(かたち)を得て生じ、容を亡って存す。草枯るるも猶(なほ)疾(やまい)を癒(いや)す。四体未だ破れずして心まず衰ふるは、天地の則に非ざるなり。
p54

肉体は壊れても気力を失わなかった生き方として、斎藤孝氏は以下の例を挙げる。

例えば星野富弘(とみひろ)さんという画家がいます。もとは中学の体育の先生でしたが、クラブ活動の指導中に脊椎を損傷し手足の自由を失ってしまいます。しかし、そこで気力まで失ってしまうことはなく、口に筆をくわえて絵や文字を書き始め、今や自らの名前がついた美術館までできています。
p55

たとえ手足の自由を失っても、気力を失わず志を遂げようとするのが、日本の武人の生き方である。

数千年も続いてきた「日本武人の生き方」を説いた書

「闘戦経」の説く武人の生き方を見ると、その理想は中世以降に武士が登場してからも、そのまま受け継がれていったことが判る。

後に武士の理想像とされたのは楠木正成だが、人々が仰いだのは戦いでの卓抜な機略もさることながら、あくまでも後醍醐天皇の理想に殉じ、最後は弟と「七生報国(七たび生まれ変わっても国に報じよう」と言い交わし、高笑いした後に差し違えて自刃した一途さだった。

身の栄達も、謀略による勝利も願わず、ひたすらに志を遂げんとする一途さは、幕末に多くの志士を振るい立たせた吉田松陰、明治時代の軍人としてもっとも敬愛された乃木希典将軍、さらには先の大戦の特攻兵にも受け継がれていく。

こうして見ると、我が国を創り護ってきたのは、まさにこうした武人たちの精神であることが判る。その「武」の精神は2,000年以上にわたって、日本人の心の奥底を流れてきたのである。

現代においても、黒田博樹投手や星野富弘氏のような生き方に我々が感銘を受けること自体が、我々の心の奥底に武人の精神が流れていることを示している。

「闘戦経」は「日本最古の兵書」というより、数千年も続いてきた「日本武人の生き方」を説いた書というべきであろう。それは現代社会においても、そのまま立派に通ずる生き方である。

文責:伊勢雅臣

image by: Shutterstock

 

Japan on the Globe-国際派日本人養成講座
著者/伊勢雅臣
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