原発差し止めの重い意味。司法は「原発と政権」にストップをかけられるか?

 

原発をストップさせるには、われわれ国民としては司法の頑張りに期待するしかない。裁判官とて、日本の国民であり、電力会社の手先ではないはずだ。良識を働かせさえすればよい。

問題は政治権力が裁判所という組織をコントロールしていることだ。

最高裁長官は内閣の指名で天皇が任命することになっている。自民党政権は法廷の最高権力者の人事を実質的に握ることで、裁判所の官僚的ヒエラルキー組織に介入し、気に入らない裁判官をパージしてきた。司法省内で検察官が裁判官の上位にいた戦前と同様、裁判所は今も独立していないのだ。国会の形骸化も著しい。はっきり言って、この国における三権分立は絵に描いた餅にすぎない。

安倍政権は原発再稼働の姿勢を貫く構えだ。大津地裁では美浜、大飯、高浜の3原発を対象にした本訴訟が同じ山本裁判長の担当で進行中だが、本訴でも住民側が勝てるとは限らない。

われわれ国民はもっと裁判官の評価に熱心でありたい。社会の司法に対する無関心が、司法の閉鎖性を形成し、ヒラメ判事を増殖させている。上役の顔色をうかがうヒラメではなく、市井の人々にやさしいまなざしを向ける裁判官を国民が育てるためには、良識ある判決を下した裁判官を正当に評価しネット上の記録などにとどめておく必要がありそうだ。

今回は、大いに山本裁判長を讃えたい。

image by: 首相官邸

 

国家権力&メディア一刀両断』 より一部抜粋

著者/新 恭(あらた きょう)
記者クラブを通した官とメディアの共同体がこの国の情報空間を歪めている。その実態を抉り出し、新聞記事の細部に宿る官製情報のウソを暴くとともに、官とメディアの構造改革を提言したい。
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