ここ数年、子供のいじめに関して探偵に相談を持ちかける事例が増えているという。先日、MAG2 NEWSでもいじめ問題を見て見ぬふりをする教師たちの記事を紹介しましたが、その背景には学校側への不信があるのではないでしょうか? しかし、一方でいじめが起きるのは学校だけではないというのも事実。今回は、いじめ調査の第一人者と言われる本物の探偵さんが、いじめの現場とその解決までの道程を生々しくレポート。実はいじめをしている子供たちにも加害者意識がないために、問題が発覚しにくいという実情もあるようです。
あの日、少女に起きた事
その子が居なくなったと連絡を受けたのは、つい最近のことである。
連日、変質者による子供の被害事件のケアに当たっていた私は、背筋に寒気が走った。
いじめに関する調査界の第一人者と言われるようになってからというもの関連するような家庭問題や体罰や非行、引きこもり問題等、様々な問題の相談が寄せられるようになった。
最も多いのは、親子間のコミュニケーションに関する相談である・・・。
(なんで、探偵の私に相談するのか・・・。)
素朴な疑問が生じるが、可能な限り応えるのが身上である。
この日、相談をしてきた母親は、電話の先で震えながら、何かを堪えるような声であった。
探偵・阿部(以下、阿部)「警察には行きましたか?」
母親「もちろんです。」
警察には捜索願を出し、家族全員で心当たりは探しているという。
この日は、この娘さんの誕生日であった。中学生になり、新たな友達も増え、はじめての誕生日。彼女の友人らがパーティーを開いてくれるということになり、友人のみに祝ってもらうのは、生れてはじめての彼女は、1週間前から、緊張していたそうだ。
ところが、誕生日会に向かった後、彼女は姿を消してしまった。
誕生会の会場となった友人宅は、両親が不在であり、友人のみであった。その友人らは不審な点は何も無かったと答えたそうだ。
しかし、家を出たのは、だいたい15時頃。徒歩での所要時間は、およそ10分。
この電話は20時頃であるから、帰宅予定は17時前であろう。パーティーは1時間ほどだと考えられる。
その時間の問題を確認すると、電話口の母親は、若干違うが、ほとんど合致すると言っていた。
場所を聞くと、事務所から車で15分ほどの近場であった。
サザビー「行ってこいよ。気になって仕方ねぇーんだろ?」
電話の応対を、横のデスクで聞いていた代表代理のサザビーとは、もう10年以上パートナーとして、苦楽を共にしてきた仲である。
阿部「わかりました。電話では厳しい内容なので、私がそちらに伺います。駐車場はありますか?」
およそ20分後。私は彼女らの自宅に到着していた。
そして、母親に当日の娘さんの服装を聞き、顔写真をもらった。自転車で急いで戻ってきた高校生の兄を車に乗せ、すぐに会場になったという友人の家に向かった。
徒歩で10分の距離、車で飛ばせば、3分も掛からない。
玄関で名乗り、家に上げてもらい、私は室内を観察した。そして、不自然さを感じた。
例えば、誕生会といえばケーキやろうそくがあるはずだが、そうしたゴミも無かったし、特徴のあるケーキの箱もなかった。友達が失踪しているというのに、その子の誕生会を開くほど、仲の良い友人らは、淡々としている。
普通なら、主役の居なくなったケーキは、居場所を失い、冷蔵庫にでもあるだろうし、誕生会をしてケーキを食べたなら、残骸として、ケーキを覆うプラスティック製の型やロウソクのゴミ、厚紙で作られた箱があるであろう。
心配でおかしくなる子もいるであろうし、連れ去りの可能性があるのなら、これだけの時間が経てば、親が迎えに来ても不思議はないのに、誕生会に参加した子どもらは、この場にほとんど居るということであった。
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