中国外相、エゴ丸出し。それでも日本が冷静に考えるべき2つのこと

 

たとえば冒頭に紹介した王毅の「逆なで発言」ですが、これによってわれわれが冷静に考えなければならないことが2つあります。

1つは、王毅がこれを国内向けに言っており、日本国民よりも中国人民や共産党幹部向けにプロパガンダとして発言している、という事実です。これは中国という不安定で独裁的な体制の国家としては当然であり、外交部の人々にとって、非常に帝国的で大国意識(中華思想)の強い国内の聴衆に向けて、「日本に対してズバッと言ってやりましたよとアピールすることは必須なのです。

そして、もう1つ。日本の戦略担当者たちが考えなければならないのはこの「王毅逆なで発言」にムカッときた(=激情)日本国民やメディアを、いかに利用して日本の国益にかなう方向に仕向けるか、ということなのです。マキャベリズムです。

リアリズムをベースとした戦略家に求められるのは、このような激情に安易に同調するのではなく、むしろ、その波をチャンスとして捉え、いかに利用すべきか? を考えることです。

戦略思考」という言葉を最近よく耳にするようになりました。この言葉を見聞きして「戦略は権力者のものだから、自分とは関係ない」と感じるかたがいるかもしれません。しかし、「戦略を考える」というのは、あくまでも自分がそれを動かす立場であればどうするのか? つまり「当事者」として物事を考える。自らを「庶民」ではなく「為政者」、「フォロワー」ではなく「リーダー」として冷静・冷徹に状況を判断するということです。これは特定の立場の人間ということではなく、誰にとっても必要なことではないでしょうか?

さて、冒頭の話題にもう一度戻りますが、中国の王毅の要求はたしかにけしからんです。しかし、そこから生じたエネルギーをいかに利用するのか? ということを、第三者的な目で冷静に考える。これこそが「戦略家」の真骨頂です。

われわれが戦略思考を磨くためにここで一番求められるのは、この「けしからん!」という「激情」から一歩引いてみて、どのように自分の利益につなげていくのか、という冷血かつ冷酷な視点なのです。

以前、「尖閣での漁船の体当たり映像」の流出の件などありましたが、日本側がこのような事案を扱う場合、すぐにガス抜きされてフラット化されてしまいますが、こういったいくつかの映像、例えば、反日運動のデモ映像などを集積しておいて、さらなる国民の反中国気運が溜まった時に、これまでの日本の中国への貢献などと合わせて、報道するのも1つの手段です。

このような冷酷なプロパガンダ視点で外交を考えることも、これからの日本人には求められてくるのではないでしょうか。

image by: 外務省

 

日本の情報・戦略を考えるアメリカ通信
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