愛猫の「抗ガン剤」治療に悩む飼い主。猫好き医学博士からの回答は?

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日本人の死亡原因の第1位といえば「癌」。発見が遅れたり、外科手術での摘出が困難な場合に行われる抗ガン剤治療は、大変な苦痛を伴うことでも知られていますが、どうやら癌の苦しさは猫の場合も同じのようです。ニューヨーク在住の医学博士・しんコロさんは『しんコロメールマガジン「しゃべるねこを飼う男」』の中で、あまり知られていない「猫の抗ガン剤治療」について詳しく解説しています。

猫の抗ガン剤治療も人間と同じく苦しみを伴うの?

Question

shitumon (1)友人の猫(8 歳)が 秋に癌を発症し、抗ガン剤治療を始め、だいぶ数値が良くなってきたということです。抗ガン剤治療と聞くと人間にとってはかなり辛く苦しいものと認識しておりますが、猫にとってはどうなのでしょう。

ペットの延命治療など、医学者としての意見と飼い主としてのしんコロさんの考えをお聞かせいただけたらと思います。

 

しんコロさんの回答

がんができた場合、可能な場合にはまず外科的に切除することが獣医では検討されると思います。しかし外科的に切除できない組織に腫瘍があったり、切除後の再発で複数の臓器に転移が認められたり、もしくは悪性リンパ腫などの場合は抗がん剤の使用が治療の選択肢になってきます。

医学的には、末期のがんや悪性リンパ腫は抗がん剤で一時的に腫瘍が寛解(消えたように見える)しても、ほぼまた再発するということが知られています。その意味で、抗がん剤はがんを治癒することではなく、寛解をさせて延命をするという目的で使われます。

そして質問者さんがおっしゃるとおり、抗がん剤には強い副作用があります。従って、治療にばかり目がいってしまい、ねこの限界を超えてしまうような抗がん剤の使用はあるべきではないと思います。飼い主は獣医師のアドバイスを元に、ねこの体調変化を常に観察して治療方針を定めてゆくべきだと思います。

がんの末期治療に直面した時、抗がん剤を使うのか、それとも延命はできなくても痛みを抑える治療に切り替えるのか、その選択は飼い主にも獣医にも難しい問題です。そういった段階では何が正しくて、何が間違っているということはありません。結局のところ、飼い主ができる選択が一番正しいと信じるしかありません。

獣医はそれぞれの治療がどのような結果をもたらす可能性があるかを、分かりやすく飼い主に伝えてサポートすることが最も重要な
役目だと思います。

さて、飼い主としての意見は僕にとっても一番むずかしいところです。飼い主は誰しも自分の愛するペットが苦しんでいるところは見たくないと思います。その一方で、少しの望みでも諦めたくないという気持ちもあります。

自分がそういった場面に直面した時に、どのように感じるかははっきりいって分かりません。治療可能な段階では理論的・科学的にアプローチできても、最期の段階ではそういったアプローチが意味を失ってくるからです。

その時がやってきたら、愛ねこの心の声と自分の心の声に耳を傾けるしかないと思っています

 image by: Shutterstock

 

しんコロメールマガジン「しゃべるねこを飼う男」

著者:しんコロ
ねこブロガー/ダンスインストラクター/起業家/医学博士。免疫学の博士号(Ph.D.)をワシントン大学にて取得。言葉をしゃべる超有名ねこ「しおちゃん」の飼い主の『しんコロメールマガジン「しゃべるねこを飼う男」』ではブログには書かないしおちゃんのエピソードやペットの健康を守るための最新情報を配信。
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