安倍GDPがまたも民主党に惨敗…アベノミクスとは何だったのか?

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有効求人倍率のトリック

安倍がアベノミクスが巧く行っていることの理由の筆頭に挙げるのは雇用と賃金である。6月1日の記者会見で彼はこう言った。

有効求人倍率は24年ぶりの高い水準となっています。それも、都会だけの現象ではありません。就業地別で見れば、北海道から沖縄まで47の都道府県全て1倍を超えました。これは史上初めての出来事であります。1人の求職者に対して1つ以上の仕事があるという状況を創り出すことができたのです。

リーマンショック以来、減少の一途をたどっていた正規雇用は昨年、8年ぶりに増加に転じ、26万人増えました。この春の高校生の就職率は、24年ぶりの高さであります。大学生の就職率は、過去最高となりました。政権交代前から中小企業の倒産も3割減少しています。ここまで倒産が減ったのは、25年ぶりのことであります。

所得アップについても、連合の調査によれば、中小企業も含めて、一昨年、昨年に続き、今年の春も3年連続で、今世紀に入って最も高い水準の賃上げを実現することができました。今世紀に入って最も高い水準であります。それを実現することができたのです。そして、パートの皆さんの賃金も過去最高を記録しています。一部の大企業で働いている方の給料が上がっただけでは、決してありません。パートで働いている皆さんの時給も過去最高となっているのです。どうかここも見ていただきたいと思います。

雇用を創り、そして所得を増やす。まだまだ道半ばではありますが、アベノミクスは順調にその結果を出しています。……

有効求人倍率は、ハローワークで職探しをする人1人当たりに何件の求人があるかを示す数字で、それで結果的にどれだけの人が職を得ることが出来たかの実績とは関係がない。日本はすでに「人口減少社会」に突入し、総人口の減少より速いスピードで生産年齢人口が減少しつつあるので、中長期的・構造的に人手不足になるのは当たり前で、この率の上昇自体はアベノミクスの成果でも何でもない。しかも、近年は正社員の求人が減っているので、正社員の求人だけをみれば0.85倍にとどまっている(16年4月)。

安倍は正社員が増えていると盛んに言うが、2009年以降の各12月末の正規雇用、非正規雇用の変化は次のとおり(総務省「労働力調査」、万人)。

  正規雇用   非正規雇用
09 3360      1766
10 3375(+15) 1806(+ 40)
11 3325(-50) 1843(+ 37)
12 3330(+ 5) 1843(+ 0)
13 3283(-47) 1965(+122)
14 3281(- 2) 2003(+ 38)
15 3307(+26) 2015(+ 12)

14年末に比べて15年末に正規雇用が26万人増えているのは事実だが、そこだけ切り取ってアベノミクス成功の証にしようとするのは統計操作の幼稚なトリックで、13年末には47万人、14年末には2万人の減で、アベノミクスが始まる前の12年末と比べれば15年末は23万人の減である。それに対して非正規雇用は一貫して増え続け、12年末と比べて15年末は172万人の増である。

正規と非正規の割合は、80年代にはおおむね80:20、90年代後半から70:30、00年代には60台:30台と傾向的に差が縮まって、15年末には史上最小差の62.1:37.6であるから、そこだけを切り取って「非正規の比率は今世紀始まって以来の最高に達した」と表現することもできるのだが、安倍はそれについては触れないようにしている。

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