ソニーのロボット復活の裏で起きていた、「人類の歴史的転換」

 

人間の感情を理解するAIを開発する前に・・・

AI関連情報への注目が高いという背景や、ソニーは、アメリカでも有名で、今回の発表前にCogitaiというアメリカのAIベンチャー企業に出資も行っているということもあって、ソニーが「ロボット×AI」開発にカムバックしてくるというニュースは、アメリカの各種メディアでも、様々な角度から大きく報じられており、一応、うちのブログの方でも、ごく基本的な情報を取り上げた。

〔ご参考〕
ソニーがAI技術による高性能ロボットの実用化を目指し再参入

で、ソニーが「ロボット×AI」開発に帰ってくるというニュースは、いろいろな関連報道を読んでいくと、1つの素朴な疑問が沸いてくる。

それは、「なんでアイボやめちゃったの?」という疑問だ。

かつてソニーは、他社よりも大きく先行して「ロボット×AI」の研究開発を進めていて、だからこそ1999年にアイボを販売できた。

しかし、その後、今から10年ほど前の2006年にアイボの生産や開発を一旦やめちゃったのだ。それに伴い、すでに販売済みのアイボに対する修理などのサポート窓口も閉鎖してしまった。

一目見たら誰でもお分かり頂けるとおり、これまでに作られたアイボは、「ペット」として作られたAIロボットだ。ペット以外の使い道はない、と言ってもいい。その点、スマホやパソコンなどの他のハイテク電子機器とはかなり違う。

なので、ソニーが修理などのサポートを辞めてしまえば、ペットとしてアイボをずっと可愛がってきた飼い主の方々は、とても困ることになる。

スマホやパソコンなどが故障してもショックはショックだが、ペットを失うということは、スマホやパソコンなどが故障するのとは比べ物にならないほど、ショックだろう。

だから、ソニーを定年退社した元社員のエンジニアの方々などが中心になって、ジャンク品などから部品をかき集め、自分たちでアイボの修理を請け負うようになり、そのことがニュースになったりもしていた。

素晴らしい。でも、それが人情ってものだろう。

可愛がってきたペットが動かなくなったら、どんなに悲しいことなのか、人間だったら、誰だって分かると思う。

ところが、ソニーの経営層の方々は、そんなアイボの飼い主の方々の気持ちにちゃんと向き合うことなく、この状況を10年もほったらかしにしてきた。

で、最近になって、アメリカで、AI関連技術に、まるでカンブリア紀のような劇的な進化・発展が起こった。

〔ご参考〕
今、アメリカの人工知能業界はまるで「カンブリア紀」?

そして、ソニーは、とってつけたかのように、今後「ロボット×AI」を経営の柱の1つととらえ、「AI技術による高性能ロボットの実用化を目指し再参入する」などと、今回、発表したのだ。

もし、ソニー内部に、

「アイボをかわいがってきた飼い主の方々の思いに応えよう・・・」

といったような気持ちを持つ人々がいて、つまり、他の人々の気持ちに対して「共感力」のある人々がいて、自社内でアイボの
修理などのサポート窓口を作ったら、もっと早く、何年も前に、彼らは「ロボット×AI」の重要性に気づけていたかもしれない。

そもそも、アイボを一旦辞めずに、そのまま続けていれば、ソニーの「ロボット×AI」開発は、他社よりもずっと先に進んでいたかもしれない。

今回の「ロボット×AI」へのカムバックの発表だって、もし、ソニーに共感力のある人々が大勢いれば、何よりもまず、ソニーがサポート窓口をやめてしまった後も、アイボを可愛がり続けている飼い主の方々へ向けたメッセージからこの発表をはじめていたかもしれない。

ソニー内部の人々は、人間の感情を理解するAIを開発する前に、自分たち自身が、もっと人間の感情を理解する必要があるのかもしれない。

これは、先ほど紹介したマイクロソフトのナデラさんが指摘した人間側に必要となるAIのルールの1つ、「共感力」そのものだ。

もし、ソニー内部の人々に、共感力が乏しいというのであれば、「ロボット×AI」の開発に戻ってきても、たぶん、うまくはいかない。

というか、こんなことすら分からないのでは、AI抜きにして、普通のビジネスとして考えても、いずれ重要な判断を間違え、確実に失敗するだろう。

ソニーが、かつてのような輝きを失ってしまった原因も、ここに起因する気もする。

あと、大企業病の本当の問題点も、そこで働く人々から、人間らしい共感力を奪っていくことにあるのかもしれない。

とにかく、AIが普及・発展していくと、もっと人間の感情を理解する必要がある。

人間らしさを取り戻す必要が出てくると言ってもいいのかもしれない。

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