苦境ユニクロは、柳井イズムの「3本の矢」で生き残れるのか?

 

セール合戦から抜け出すファーストリテイリングの次の一手

そんな中、ファ-ストリテイリングは、次々と新しい方針を打ち出している。

まずは、顧客の利便性の追求。「デジタルユニクロ」と呼ばれるネット通販の拡大がそれにあたる。日経MJによると、ネットでの販売比率を、30%以上にするという目標を掲げているとのこと。

ユニクロは、インターネットの自社サイト上で、顧客に「個別対応できる仕組み」を入れていくということらしい。セミ・オーダーに近い感覚で、服を選ぶことができるとのことだ。これまで、ネットで服を販売する企業が、「面倒だということであまりやってこなかったことである。

ファーストリテイリング傘下のGUでは、リアル店舗に「おしゃリスタ」と呼ばれる店員さんがいて、お客様と会話をしながら、お客様に合ったコーディネートを提案する、といったサービスを提供しているが、このネット版といったところかと思われる。

こうなると、今注目されている、ショールーミングの逆の、「ウェブルーミング」~お客様がネットで情報を仕入れて、リアル店舗に行く、という流れを作ることができてくる。

ユニクロ最大の強みは、「充実したリアル店舗」にある。立地条件や、流通網、そして銀座店においては、多言語に対応できるスタッフなどなど、他社がマネできない資産を持っている。ここに、デジタル戦略が付加されれば、さらに強固なエントリーバリアを築くことができそうだ。

ユニクロのネット通販において、「顧客が欲しいカスタマイズされたサービス」と、「欲しいときに翌日には手に入るという便利さ」が、付加されるのだ。

ITの進化が、便利さを加速させている中で、消費者が「当たり前だと思っていること」もどんどん変わっていく。この市場と消費者の気持ちの進化に、ファーストリテイリングは、乗っていくことができれば、それは大きな勝機になる。

前述したように、「自社側での手間が多少かかってもいいから、顧客の利便性を追求する」という方針を、競合はなかなか真似できない。特に、ネットを中心としている企業にとっては、大きな脅威になりそうだ。

第2は、デジタルユニクロに伴い、流通網も再整備するとのことである。

2016年秋をめどに、インターネット通販で受注した商品を、「翌日まで」に配達する体制を全国で整える。

 

物流システムを刷新して発送業務を大幅に効率化し、従来は2~5日かかっていた配送期間を短縮する。

(日本経済新聞より)

即日配送は、本やCDでは当たり前になってきたが、服ではまだこれからだ。ネットで服を買うことは、かなり浸透してきてはいる中で、こういった消費行動の変化に対応できれば、ネット通販の利便性が高まり、ユニクロとしては、新しい顧客の獲得につながるだろう。

3つ目は、「ファッション性を高めていくこと。ユニクロは、ニューヨークを拠点に活躍する英国生まれのファッションデザイナー、ハナ・タジマ氏とのコラボレーションライン「HANA TAJIMA FOR UNIQLO (ハナ タジマ フォー ユニクロ)」を、6月30日(木)から東京・大阪の4店舗と、ユニクロオンラインストアで発売する。

私も早速サイトを見てみたが、これまでのユニクロにはなかった、ゆったりとしたシルエットの、「着心地」を重視したデザイン。アラビアンナイトに出てきそうな、涼しげでゆったりとした、スタイルのラインアップを新しく展開していく。

ユニクロのブランド・ラインアップに、新しいテイストが加わったことで、新しい顧客層を取り込むことができそうだ。

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