南シナ海裁定で完敗した中国、世界の「判決を支持」反応に逆ギレ

 

判断の影響は?

既述のように、仲裁裁判所の判断には、「拘束力はあるが執行を強制する仕組みがない」状態。ですから、中国は、判断を無視して、いままでどおりの行動をつづけることでしょう。表面上、「まったく何も変わらない」ことになります。

しかし、何も影響がないかというと、そんなことはありません。『クレムリンメソッド』に詳述していますが、戦争は、撃ち合いをする「戦闘」だけではありません。実際の戦闘よりも大事なのは、その前段階、あるいは戦闘中も行われている、「情報戦」です。

中国は情報戦の重要性をとてもよく理解している。それで、「安倍は、軍国主義者」「安倍は右翼」「安倍は歴史修正主義者」と、大金を使って「情報戦」をやっている。情報戦の目標は、「敵国は悪魔のような国」と信じさせることにあります。そして、敵国を孤立させ、実際の戦争が起こったとき、「同盟国が誰もいない状態」をつくりだす。日本も1930年代、情報戦に負け、見事に孤立させられていきました。

私はいつも書いていますが、「孤立したら負け」です。中国は今回、仲裁裁判所の判断を、「完全に無視」するどころか、「仲裁裁判所が悪い!」「アメリカが悪い!」「日本が悪い!」と批判することで、自ら孤立の道を選択しています。

00年代、「平和的台頭」を標榜し、大成功をおさめた中国。しかし現在、国際法を無視他国の領海を侵略している、「世界のモンスター」に変貌しつつあります。大衆はいつも、指導者が「より強気」に「国益」を守ることを求め、それがますます国を孤立させる原因になる。

今回の仲裁裁判所の判断。一見、何の影響もないようですが、長期的には中国共産党の政体を破滅に導く第一歩になることでしょう。

image by: Wikimedia Commons

 

ロシア政治経済ジャーナル
著者/北野幸伯
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